第50話 誘惑
亜美からの急な告白に戸惑う宏太だが?
☆宏太視点☆
亜美ちゃんが部屋に戻った後も少し考えてみる。
さっきの話の中で、亜美ちゃんは特に嘘は言ってなかっただろう。
亜美ちゃんは亜美ちゃんで不安なのは間違いない。
おそらく、相当焦ってるであろうことも見て取れた。
「夕也を忘れさせてくれればってか」
多分俺には無理だということはわかる。
俺が出来ることは、壊れそうになった亜美ちゃんを支えてあげることぐらいだろう。
ただ何より気に入らなかったのは、さっきの話の中で1つも「俺の事が好きな気持ち」というものが感じられなかったことだ。
亜美ちゃんは「夕也の事を忘れるために俺が必要だ」と、言っていたのだ。
「俺は確かに亜美ちゃんが好きだ。 でも亜美ちゃんはどうなんだ?」
その場にいない初恋の相手に問いかけるが当然返事は無い。
◆◇◆◇◆◇
翌朝。
「ねみぃ……」
結局まともに寝れなかった。
こんなんでマリンスポーツとかできんのかよ。
頭くらくらする。
「まあ、とりあえず起きるか……」
俺は、重い頭を振って部屋を後にした。
朝食はと昨日と同じで小宴会場。
すでにみんなが集まっていた。
「佐々木、遅い!」
「わ、わりぃ……」
蒼井に怒鳴られてしまった。 頭痛いんだから静かにしてほしい。
俺は、空いてる席に座る。
何故か、亜美ちゃんと奈々美の真ん中が空いていた。
おいおい、拷問かよ。
「宏ちゃん、おはよ」
「おはよう、お寝坊ね」
「おう……」
うー、いかん……頭ボーッとする。
何とか朝食を腹に入れてエネルギー補充してはみたがあんまり意味は無さそうだ。
勿体ないが今日はマリンスポーツとやらはパスして寝かせてもらおうか……。
「宏太、今日はなにする?」
「えぇ……いや」
「やっぱサーフィンかしら?」
こんな体調でサーフィンなんか出来ねぇよ!
三途の川をサーフィンさせる気か、おい!
「宏ちゃん? もしかして体調悪いの?」
「あ、あぁ、今日は無理せず休むぜ……」
「そうなの? 看病に付き添った方が良い?」
「いや、お前は楽しんで来いよ……じゃあな」
俺はそれだけ言い残して部屋に戻った。
「……あぁもうだめだ。 何も考えられね」
ベッドに倒れ込むと同時に意識は途絶えてしまった。
☆希望視点☆
朝食の後、私達は海へ出てきていた。
奈央ちゃんのおかげで、どうやら色んなマリンスポーツが楽しめるらしい。
「夕也くん、サーフィ……」
「今井君! サーフィン出来るって亜美ちゃんから聞いたんだけど!」
紗希ちゃんがすごい勢いで割り込んできた。
ち、近いよぅ!
「お、おう」
「おせーて!!」
「こ、こほんっ」
私はわざとらしく咳払いをして紗希ちゃんを牽制する。
彼氏持ちなのに夕也くんに色目使っちゃって!
「あ、希望ちゃんごめん! お邪魔しちゃって」
「そ、それは良いんだけど、ちょっと近いんじゃないかなぁと……」
胸とか腕に当たってるんだけどぉ。 夕也くんちょっと嬉しそうだし。
「サーフィンか? まあ、今日はそんなに波も出てないし練習にはいいか。 紗希ちゃんも一緒にやろうぜ」
「やった!」
「夕也くん先生お願いします!」
「言いにくくないかそれ?」
ということで、私と紗希ちゃんは夕也くんにサーフィンを教えてもらうことにした。
亜美ちゃんと奈々美ちゃんはすでにサーフィンを始めているし、遥ちゃんと奈央ちゃんはというと、ウェイクボードで遊んでいる。
なんで皆そんなことできるの?!。
「よしじゃあ、まずは陸でトレーニングな」
「陸? 波乗りは?」
いきなり文句を言い放つ紗希ちゃん。
「紗希ちゃん、気持ちはわかるが何事も基本は大事だぞ。 ケガとかしてほしくないからな」
「んーそっか、はぁい」
「素直だなぁ、紗希ちゃん」
ということで、パドリングやテイクオフの練習やコツみたいなものを色々教えてもらった。
夕也くんもなんだかんだ、色んな事に手を出してるなぁ。
色んな女の子に手を出さないように見張ってなきゃ!
「ふむ、2人とも運動神経は良いし、そろそろ海に入って小さい波に乗ってみるか」
「おお! 波乗り!」
「どきどきだよ!」
「同時は危ないから順番にな、先どっち行く?」
「はい!」
紗希ちゃんは元気良く手を上げてアピールしている。
私もこれぐらい出来ればなぁ。
「んじゃ、紗希ちゃん行くか」
紗希ちゃんはボードを持って海へ入って行った。
少ししたところでボードに乗ってじーっとしている。
ちょうど良い波を待ってるのかな?
しばらくすると夕也くんがゴーサインを出したのかパドリングを始めた。
「おおー、紗希ちゃんすごい! 波に乗ってるぅ!」
初心者なのにすごいな。
私にもできるかな?
あ、紗希ちゃん落ちちゃった!
夕也くんが手を掴んで立ち上がらせる。
むむ! 浮気だ!
しばらくして戻ってきた夕也くんを睨む。
「な、なんだ希望ちゃん?」
「別にぃ」
「あはは、妬いちゃって、かわゆいねー」
「はぅ……」
「でも、今井君かっこいいよねぇ。 さっきちょっとキュンてしちゃった。 裕樹から乗り換えても良いわね」
「がるるー」
「きゃはは、嘘よ嘘ー」
「なにやってんだ? 次、希望ちゃん行くぞー?」
「ほれほれ、愛しの夕也くんが呼んでるぞぉ?」
「はぅ」
紗希ちゃんに良いよう遊ばれてしまった……。
でも、紗希ちゃんちょっと顔赤かったなぁ。
満更でもない?
亜美ちゃんの次は紗希ちゃんが恋敵になったり……はしないよね、彼氏さんいるんだもん。
「……」
一応、夕也くんに釘刺しておこう。
「どうした希望ちゃん? 怖い?」
「ううん。 ねぇ、紗希ちゃんは彼氏さんいるんだからダメだよ?」
「はい? はー、さては妬いてるんだな?」
「はぅぅっ……」
そりゃ、紗希ちゃんは綺麗だしスタイルいいし可愛くてえちえちだし。
私に無い物一杯持ってるしぃ。
「大丈夫だって。 俺が希望ちゃん以外で揺れるとしたら、あいつぐらいだよ」
亜美ちゃんの方を見てそう言う。
それはそれでちょっと妬けるなぁ。
「ほら、良い波来たぞ」
「はわっ!」
教えてもらった通りにやってみる。
えっと、パドリングしながら、来た波を待って…ボード後方が波に押された様な感じがしたら、両足で一気に立ち上がる!
足は出来るだけ前方に着地して、半身になってバランスを……。
「おー、出来たよ夕也くん!?」
波に乗ってるー!
「おう、初めてにしちゃ上出来だ。 希望ちゃんも紗希ちゃんもさすがだな」
夕也くんに褒められた。
その後も、私達はサーフィンを教えてもらった。
途中で、亜美ちゃんと奈々美ちゃんに誘われて、5人でシュノーケリングを楽しんだ。
のんびりとしながら覗く海中には色んな生き物がいて楽しかったよ。
亜美ちゃんも、幾分落ち着いたのか知らないけど、今はいつもの亜美ちゃんだった。
そういえば、佐々木くんの事はどうするのかな?
☆夕也視点☆
紗希ちゃんに、サーフィンを教えていた時、何やら意味深な事を言っていた。
「今井君ってさ、浮気とかどう思う?」
「浮気?」
「そそ、やっぱりいけない事だとか思う?」
「人によるんじゃないか? まあ、褒められた事では無いだろうけど……」
「うーん、そかー。 今井君はどうなの? してみたい派? しない派?」
何でこんな事聞くんだ? 希望ちゃんの差し金か?
「それも、相手による……かな?」
「そかそか、亜美ちゃんとならしてみたい感じだ?」
鋭いとこ突いてくるな。
「なぁ、柏原君と何かあったか?」
「んー? 今井君にしては中々良い読みしてるねー」
どうも、浮気されてるのではという事らしい。
7月に会った彼は、そんなタイプには見えなかったが?
「まあ、浮気されてたとしても、その相手に本気にさえならなきゃ許すんだけど。 でもやっぱなんかモヤモヤするのよね」
そう言えばそんな事を昨日言ってたような。
ピンポイントな話題だったのか……。
「私も、浮気しちゃおっかなー?」
何でだか知らないが、俺の方を見てそんな事を言う紗希ちゃん。
ま、まあ、正直こんなえちえちな子と、そういうこと出来たらそりゃなぁ?
「ひ、人をからかうんじゃないぞー。 彼を大事にしな。 お、ちょうど良い波来たぞ」
とりあえず、はぐらかす。
「別にからかってないんだけどなぁ」
そう言ってパドリングを開始する紗希ちゃん。
何を言ってるんだこの子は。
まさか俺を誘惑してるのか?
ふっ、モテる男はつらいってやつだな。
「私さ、今井君の事は結構気に入ってるのよね……っと」
そんな事を言いながらボードの上に立った。
初心者ならこれだけ出来れば十分だ。
「わっ?!」
おっと、落ちたか。
俺は紗希ちゃんの手を引っ張って立ち上がらせる。
「ありがと。 ねね、希望ちゃんに内緒で一回浮気してみない? 今夜あたりどぉ?」
「なーに言ってんだよ」
「ふぁー、やっぱり、私は候補にならないかぁ」
「はぁ……彼氏の浮気が心配なら相談には乗るぜ? 男視点からの考えで良けりゃアドバイスぐらいは出来るかもしれないし」
「おー、ありがと! んーとそれじゃあ、早速今日お風呂入った後にでも相談乗ってもらおっかなー? 私の部屋番号わかる?」
「お、おう」
「あと、不安なら希望ちゃん連れてきても良いよん?」
1人で行ったら、「相談乗ってくれてありがと。 じゃあ、お礼に私が今井君の上に乗って上げよっかぁ?」とか言って襲ってきそうだな。 うむ、希望ちゃんを連れて行こう。
そんな話をしながら、希望ちゃんの元へ戻ってきた。
希望ちゃん凄い睨んでるけど、話し聞こえてなかったよな?
紗希の彼氏が浮気?
相談に乗ると約束した夕也に先の毒牙が?!
「何やってんのかしらね夕也は。 希望みたいな彼女がいて浮気とかしたらバチ当たるわよ? まぁ紗希は魅惑のエロボディだけどさぁ。 それより宏太が亜美にどう返事するかが気になるわ!」




