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第32話 織姫と彦星

亜美と夕也は、助っ人の紗希とその彼氏と一緒に、ボケねこというキャラのグッズ専門店へやってきたが?

 ☆亜美視点☆


 私達は希望ちゃんへの誕生日プレゼントを選ぶために、強力な助っ人である紗希ちゃんとその彼氏さんと一緒に、都市部に先月オープンしたというボケねこグッズ専門店へ来ている。

 

「はわぁぁぁ」


 紗希ちゃんは目をキラキラさせながらボケーッっとしたバカ面の2頭身ネコのぬいぐるみを抱いている。

 なるほど、最近人気が出てきただけあって、それなりにお客さんもいるようだ。

 

「紗希、何か買ってあげようか?」

「いいの?!」


 あー、彼氏さんも夕ちゃんと同じで甘やかしちゃうタイプだ。

 さて、私と夕ちゃんは、希望ちゃんへのプレゼントを選ぶとしますか。


「希望ちゃんにもなんかぬいぐるみ買ってあげる?」

「んー、そうだなぁ……」


 夕ちゃんは色々なグッズを見ている。

 真剣な表情だ。

 このネックレス選ぶときもこんな風に真剣に選んでくれたのかな?

 私は、首に付けているハートのネックレスを手に持って眺める。


「そういえば、亜美は何かプレゼント買わないのか?」

「あぁ……うん……希望ちゃんにはもう謝ってあるんだけど、ほら、先週のデート奮発しちゃったからさ」


 手持ちの小遣いはもちろんのこと、貯金まで使っちゃったから、しばらくは節約しないといけない。

 だからプレゼントを買ってあげることはできない……。

 お金のかからない物を上げよう、肩たたき券とかそういう系。


「そうか。 んじゃ、今日買うのは俺とお前からってことにしよう」

「え、でも私お金ないよ? 1円も出せないけど?」

「別にいいぞ。 いつか返してくれれば」

「でも……」

「キス1回で2000円分な」

「もう、そういうことはしませーん!」

「冗談だって」


 いや、絶対本気で言ってたよこの人は。

 夕ちゃん、まだ私の事引き摺ってるんだね。


「本当にごめんね、私バカで」

「過ぎたことはもういいよ。 お前だって辛いんだろうし」


 頭をぽんぽんとしてくれる。


「それに、恋人以上の幼馴染なんだろ?」

「うん」


 私はそれで構わない。

 思い出だって一杯作ったし、もうこれ以上は何も望まないよ。


「お、これいいな」

「んん?」


 夕ちゃんはボケねこさんのプレート状の飾りを手に取った。

 結構なサイズだ。 壁掛けプレートみたいだ?

 プレートにはボケねこと空欄になっているフキダシが描いてあり、そのフキダシに好きな言葉を彫ってくれるサービスをしているらしい。

 なるほどいいかも。


「それにする?」

「そうだなー」


 夕ちゃんはそれを手に取って会計へ向かう。

 しばらく時間がかかるそうなので、その間店内を見て回る。

 途中で、凄く大きいぬいぐるみを背負った紗希ちゃんと合流した。

 紗希ちゃんの頭の上から、大きいボケねこさんのバカ面が見える構図はシュールだった。


 サービスカウンターから呼び出され、預けていた商品を受け取ってから私達は店を出た。


「亜美ちゃんは何も買わないの? ボケねこ信者になりなよぉ」

「わ、私は別にいらないよ」


 信者って何……?

 紗希ちゃんと彼氏さんはこれから引き続きデートを楽しむらしい。

 私達は2人と別れて駅へ向かう。

 紗希ちゃんの背中のボケねこがやっぱりシュールだ。


「帰ろっか」

「あぁ、緑風寄って帰るか? パフェ奢るって約束だったし」

「うん、それじゃお言葉に甘えようかなぁ」


 ◆◇◆◇◆◇


 私達の街へ帰ってきて、緑風へやってきた。

 当然のようにフルーツパフェを注文する私に、夕ちゃんは苦笑いしている。

 

「はぁー、美味しい。 毎日食べても良いね」

「太るぞぉ」

「うぐっ……」


 だ、大丈夫、カロリー計算はちゃんとしてる。

 今日も一杯歩いたし、実質カロリー0だ!


「それにしても、そんなに美味いのかそれ?」

「うん、美味しいよ。 ちょっといる?」

「おう、一口くれ」


 私はスプーンに掬って……。


「はい、あ~ん」

「……」

「あれ? いらない?」

「あ、いるけどだな」

「あ、もしかして照れてる? 今更?」


 夕ちゃんにしては可愛いとこあるなぁ

 よーし!


「あ~ん!」

「……あー」


 私は夕ちゃんの口にパフェを運んだ。

 これじゃまるでデートだね。

 あ、でもデートじゃないんだった!

 危ない危ない。


「うむ……確かに美味い」

「でしょ?」


 その後も、適当な話題で盛り上がって、私はしっかりとパフェを平らげて、店を出た。


 ◆◇◆◇◆◇


 2人で並んで、家までの道をゆっくり歩く。

 先週のデートを思い出すなぁ。

 やがて、お互いの家の前に着いて別れる。

 とは、言ってもしばしの別れだけど。


「じゃあね、夕ちゃん。 あとで夕飯作りに行くからね」

「ああ、じゃあまた」


 お互い手を振って家に入る。


 家に入ると、例のごとく希望ちゃんがリビングから飛び出してくる。


「ね、ねぇ! 紗希ちゃんからメール来たんだけど、ボケねこショップ行ったの?!」

「あー、うん」


 誕生日プレゼントの事は言ってないよね、紗希ちゃん。


「えー! いいなぁ! やっぱり私も行きたかったよぅ!」

「ご、ごめん。 今度一緒にいこ?」

「うん、約束だよ!」


 ほ、本当にハマってるんだ。

 紗希ちゃんに助っ人頼んで大正解だったね。


「そだ、紗希ちゃんの彼氏さんにも会ったよ」

「おぉ? 私、写真しか見た事ないけど、優しそうなイケメンさんだよね?」

「うんうん、実際そんな感じだったよ」

「ほうほう、じゃあWデートだったわけだね!」

「私と夕ちゃんは別にデートじゃないよ?」

「認めなよー」

「嫌だよぅ、私にとっては先週のお泊まりデートが最後のデートなんだから」

「むぅ、まだそんなことを」


 希望ちゃんは、私と夕ちゃんをどうしたいんだろう? 

 誕生日に告白するつもりのくせに、私と夕也ちゃんを仲良くさせようとする理由がわからない。

 


 ◆◇◆◇◆◇

 


 夜、夕飯を夕ちゃんの家で食べ終えて、家に戻る時に、ふと空を見上げる。

 天の川銀河かぁ。

 見えるもんだねぇ。


「天の川だね」

「うん」


 希望ちゃんと空を眺める。

 夕ちゃんが彦星のアルタイルで、希望ちゃんが織姫星のベガかな?

 私はそれを見守るはくちょう座のデネブってとこだね。


 私は部屋に戻って、ベランダに出て星を見る。

 すると、隣の家……夕ちゃんの家のベランダから夕ちゃんも出て来た。

 

「そういや、七夕だったな」

「そうだね」


 しばらく無言で見上げる私達。

 私はふと、口を開いた。


「織姫と彦星は会えたかなぁ?」

「ベガとアルタイルなんて、七夕じゃなくても見えるだろ。 それに2つの星の距離だって変わったりはしない」


 むぅ、ロマンがわかってないな、夕ちゃんは!

 そりゃ、アルタイルとベガの距離約15光年ってのは変わらないけど。

 

「なあ」


 空を見上げながら、夕ちゃんが呼び掛けてくる。


「何?」

「俺と亜美の距離も、アルタイルとベガみたいに変わる事は無いのかね?」

「夕ちゃん……」


 少し無言になる。

 どうなんだろう?


「んーと、夕ちゃんの言葉を借りるとだけど『先の事はわからない』かな」

「?」

「確かに、今の私達はお互いの気持ちが変なすれ違い方をしちゃったけど、将来、何かがきっかけで近付いて、もしかしたら一緒になってるかもしれないよ?」


 私はベランダの手摺りに乗って夕ちゃんの家のベランダに飛び移る。


「おま、危ないな」

「あはは、大丈夫だよ」


 夕ちゃんの手を握る。


「ほら、私達はこうやって、いつだって会えるよ?」

「そうだな」


 そうだ、先の事はわからない。

 夕ちゃんと希望ちゃんが、上手くいってそのままゴールインするかもしれないし、途中でダメになって私が夕ちゃんの恋人になるかもしれない。

 それは、誰にもわからない。


「ま、今のところ私はデネブなんだけどね」

「そうかよ」


 夕ちゃんと2人で笑い合った。



 ◆◇◆◇◆◇



 そんなこんなで2週間が過ぎて、21日の日曜日。

 希望ちゃんの誕生日まで後6日となった日の夜。

 お風呂に入ろうとすると、希望ちゃんも一緒に入ると言い出した。

 後6日だもんね。


 ということで、私は希望ちゃんと向かい合って湯船に浸かっている。


「亜美ちゃん、あと6日だけど……」

「うん、そうだね。 希望ちゃんはどんな風に告白するか決めてるの?」

「うーん……パーティーの後、2人にしてもらっていい雰囲気になったとこで告白しようかと思ってる」


 当日は夏休みに入っているということもあって、希望ちゃんは昼から夕方まで、夕ちゃんとデートに出かける事になっている。

 てっきりデート中に告白するのかと思ったけど、その後のパーティーが微妙な空気になるのを嫌ったのかもしれない。

 パーティーは前の私の誕生日と同じく、夕ちゃんの家でやる事になっている。

 

「亜美ちゃん、最後に確認するよ?」

「うん」

「本当に良いの?」

「うん、良いよ」


 しばらく希望ちゃんと目線をぶつける。

 希望ちゃんは諦めたように溜め息を吐いてから言った。


「まあでも、私だってフラれるかもしれないよね?」

「んー。わかんないね」

「もし、私が夕也くんにフラれたら、亜美ちゃんどうするの?」


 考えてなかったなぁ、それは。

 可能性としてはあるけど……。


「それでも、しばらくは今のままかな?」

「そっかあ……私もすぐには諦められないかもね」


 希望ちゃんは希望ちゃんで、フラれるかもしれない不安と戦ってるんだ。

 夕ちゃん、お願いだから希望ちゃんの気持ちを受け止めて上げて。


「もし夕也くんと付き合う事になっても、私達3人は何も変わらないよね?」

「うん、変わんないよ」

「毎日、一緒にご飯作りに行って、一緒に登校して」

「うん、今までと同じだよ」

「……それで、亜美ちゃんは辛くないの? 大丈夫?」


 心配そうに私を見つめる希望ちゃん。

 はっきり言って「大丈夫」とは言い切れない。

 辛くなることも、後悔することも覚悟の上とは言え、実際そうなった時の辛さはそうなってみないとわからない。


「ほらー、言葉に詰まってる!」

「うぅ……」


 希望ちゃんに痛いとこを突かれてしまった。


「あと6日あるよ?」

「ううん、良いの。 辛いのは覚悟してるし」

「……はぁ、分かった! もう聞かない!」

「気にしてくれてありがとう希望ちゃん。 頑張ってね」

「うん、頑張る」


 希望ちゃんの幸せのために出来る事はやったつもりだ、後は夕ちゃん次第かな……。

 



 ☆希望視点☆


 本当に亜美ちゃんは頑固だ。

 夕也くんの事が好きなくせに。

 私が清水の家に来た後ぐらいから、亜美ちゃんは何でも私に譲るようになってしまった。

「希望ちゃんの悲しむ顔は見たくない」「希望ちゃんには幸せになって欲しい」

 いつもそうやって、自分の欲しい物を我慢している。

 私だって、亜美ちゃんには幸せでいて欲しいって思ってる。

 だから、亜美ちゃんが望むなら、夕也くんのことは私の方が諦めるつもりだった。

 でも、もう知らない。

 最後通告はしたし、チャンスもあげた。

 それでも、亜美ちゃんがその気にならないなら。

 夕也くんは私がもらう。


最終確認も決意は揺らがず・・・

もう止まれない希望が、遂に動く?!

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