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第272話 ダンスパートナー争奪

コンテストが終わり、今年もダンスタイムがやってきた。

夕也と踊ろうと思った亜美だが……?

 ☆亜美視点☆


 ミスコンが終了して、これから最後のダンスタイムが始まる。

 ミス月ノ木はミスター月ノ木と舞台の上で踊るのが通例だけど、麻美ちゃんが優勝を辞退するという波乱が巻き起こった結果、2位の女子が繰り上がり優勝となり舞台で踊る事になった。

 麻美ちゃんの狙いは、夕ちゃんとのダンスである事は容易に想像がつく。

 他にも、希望ちゃん、紗希ちゃん、そして何故か奈々ちゃんや宮下さん、弥生ちゃんまでが夕ちゃんと踊らせろと言ってきた。

 一体どうなっているのだろう?


「夕ちゃん、何でそんなモテるの?」

「知らんがな……」

「両手に花っちゅうより、周りが花畑やな」

「上手い!」


 弥生ちゃんの上手い例えに、宮下さんが拍手を始める。

 それは置いといて、さてこの状況どうすればいいだろうか。

 いやどうもこうも、夕ちゃんは私の彼氏だから私と踊れば良いんだよね。


「じゃ皆はテキトーにパートナー見つけてねぇ。 いこ、夕ちゃん」

「お、おう」

「こら待たんかい!」

「抜け駆けは良くないわよー」

「そうよー」


 何故か非難を浴びる私。

 何も間違ってないのに理不尽である。

 終いには周りを囲まれてしまい逃げ場を失ってしまった。


「何でぇ……希望ちゃんと奈々ちゃんは約束したからまあ良いけど、他の皆はどうして夕ちゃんとダンスしたいの? 紗希ちゃんは? 彼氏いるでしょ?」

「今日は来てないんだもん。 相手いなくて寂しい」


 たしかに、今日は柏原君が来ていないようだ。

 でも、だからって夕ちゃんと踊らなくても良いような……。


「不合格!」

「えーっ! 亜美ちゃんの意地悪ー!」


 紗希ちゃんが横でギャーギャーと騒いでいるけど、とりあえず置いておく。

 次は──。


「弥生ちゃんは?」

「ウチか? まあええ機会やしな。 夕ちゃんとダンスする機会なんて、今後二度とあらへんかもしれんやん」


 た、たしかにそれはそうなんだろうけど、それならそれで別に良いんじゃ?

 弥生ちゃんは「どないや。 合格やろ」と、やたら自信満々にこちらを見ている。


「ふ、不合格!」

「何でや!?」


 紗希ちゃんと一緒になって、私に文句を垂れ始める弥生ちゃん。

 何でそんなに夕ちゃんと踊りたいのよ……。


「亜美ちゃんのケチ! アホ!」

「ひどい言われようだよ……で、宮下さんは?」

「え? 流れ的に?」


 うん、問題外。


「不合格!」

「あ、やっぱり? まあ私は別に良いけど」


 と、宮下さんは特に文句も言わずに、あっさりと引き下がった。

 本当に流れで言ってただけのようだ。


「亜美ちゃんのおたんこなす!」

「まだやってるよこの2人……」


 紗希ちゃんも弥生ちゃんも、そんなに夕ちゃんと踊りたいんだろうか?

 紗希ちゃんはまぁ、夕ちゃんがお気に入りだからわからなくもないけど……。


「別に良いんじゃないか?」


 黙ってその様子を見ていた夕ちゃんが、ぼそっとそう言う。


「えぇ……」

「ちょいと踊るくらい良いだろ」


 夕ちゃんはまた余計な事を……。

 夕ちゃんは私と踊る時間が短くなってもいいのだろうか?


「ほれ見てみぃ! 夕ちゃんはええ言うとるやんか」

「そうだそうだ!」

「あーもうーわかったよー! 好きにすれば良いよもう」


 私は何だか面倒くさくなって投げやりにそう言って、そのまま壁にもたれかかる。

 夕ちゃんも夕ちゃんだよ。 ちょっとは迷惑がれば良いのに。


「な、なんや亜美ちゃん、おこかいな」

「別にぃ」

「あんた達が意地悪するからでしょ……」

「意地悪じゃないんだけどなぁ」


 紗希ちゃんと弥生ちゃんが困ったように私を見ている。

 泣きたいのは私の方だ。


「やほー! 夕也兄ぃ一緒に踊ってー!」


 しーん……


「あれ? どうしたのこの空気?」


 状況が読めない麻美ちゃんは、頭に?を浮かべながら首を傾げる。

 奈々ちゃんが簡単に説明すると……。


「えー! 夕也兄ぃと踊るために優勝辞退したのにぃ」


 と、とても残念そうに肩を落とす。

 丁度そのタイミングでBGMが流れだして、ダンスタイムが始まった。

 夕ちゃんが、私の前にやってきて手を差し出してくる。

 ダンスに誘っているようだ。


「私は最後で良いよ……」


 途中で誰かに交代するより、最後に踊った方がたくさん踊れそうだし。

 夕ちゃんは困ったような顔で私の顔を見た後、「しょうがない奴だなぁ……」と言って、希望ちゃんの方へ歩いて行った。




 ☆夕也視点☆


 亜美が少々機嫌を損ねてしまったようで、困った。


「いいの夕也くん? 亜美ちゃんと踊らなくて?」

「最後で良いってよ……」

「はぅ……じゃあ私はちょっとでいいよ」

「悪いな。 じゃあちょいとだけ踊るか」

「うんっ」


 希望の手を取って、ダンスを始める。

 去年は俺の部屋で2人だけで踊ったんだっけな。

 あの頃とは関係が変わってしまったが、それでも側に居続けてくれた。


「まだ俺の事は諦めてないのか?」

「さあ、どうかな?」

「……」

「私ね、こうやって近くに居られればいいかなって思えるの」

「近くに?」

「うん。 恋人じゃなくても、こうやって近くに。 そこには亜美ちゃんもいて、それだけで十分だよ」

「そうか……」

「はい、私はもういいよぅ。 次の人どうぞ―」


 本当に少し踊っただけで、手を離した希望。

 そのまま亜美の隣に移動して、亜美の機嫌を取っているようである。

 さて、次は何故か奈々美か……。


「よろしく夕也」

「なぁ、宏太は良いのか?」

「あいつ、お手洗い行って戻ってこないのよ……ちょっとでいいから相手してよ」

「はぁ……ほれ」

「ありがと」


 手を出すと奈々美は、遠慮なく手を取ってきた。

 そのまま2人でゆっくりとステップを踏みながら、不意に奈々美が話しかけてきた。


「あ、あのさ……もしかしたらなんだけど、宏太と別れるかもしんない」

「はぁ? 何でだよ? 上手くいってるんだろ?」

「まあ、そうなんだけど……その、色々あってねぇ。 まだどうなるかは分かんないけど、あんたと亜美にも別れてもらうことになるかも?」

「意味わかんねぇな……」


 こいつは何を言ってるんだ……。

 奈々美と宏太が別れて、俺と亜美が別れる?


「何でそうなるんだ?」

「……もしかしたらよ。 もしそうなりそうになったら、その時に説明するわ」

「な、なんだよ……」

「踊ってくれてありがと。 後は宏太を待つわ」


 勝手に話を終わらせて勝手に手を離す奈々美。 わけがわからない……。

 奈々美は満足したのか、亜美の隣に移動して同じように壁にもたれかかる。

 何かを話してるようだが、さっきの内容と関係があるのだろうか?

 だとしたら、亜美は何か知っているのかもしれない。


「亜美姉ー! 次、私良いのかなー?」

「いいよー!」


 と、順番待ちをしていた麻美ちゃんが、亜美に許可を取ってから俺の前へ移動してきた。

 亜美も幾分冷静になったようでよかった。

 麻美ちゃんの手を取ってダンスを開始する。


「ミス月ノ木おめでとう」

「辞退しちゃったけどねー」

「優勝は優勝だろ」

「そだねー。 ありがとー」

「しかし、あんな特技あったんだなー」

「中学の頃サバゲーを少々……」


 と、恥ずかしそうに言う麻美ちゃん。

 変わったことして遊んでたんだな……。

 いや、でもサバゲーやってたからってあそこまでの精密射撃が出来るようになるもんなのか?

 この子も謎だ。 亜美と同じような人種ではなかろうか。

 しばらく踊ったあと「ありがとねー」と、手を離して俺から離れた。

 満足したらしい。

 そのまま奈々美の隣へ移動して、奈々美と会話を始めてしまった。

 次はどうすればいいだろうか……紗希ちゃんと弥生ちゃんが俺を見て何やら期待しているような顔を見せる。

 どうしたものか……。

 


順番にダンスパートナーを入れ替えて踊る夕也。

残るは紗希と弥生だが、先ほど亜美が不合格を出していた相手だ。


「奈々美よ。 宏太はこの後帰ってきて私と踊ったわよ。 弥生も躍らせろって来たからちょっとだけ代わったけど。 あの子、誰でもいいのかしらね? 」

「そんなことあらへんでー」

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