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第271話 今年のミス月ノ木

ライブが終わったあとは、バレー部が出している焼うどん屋台の店番へ。

大繁盛しており、奈央、紗希、遥が忙しくしていた。

 ☆希望視点☆


 亜美ちゃんと奈々美ちゃんのライブが終わったあと、私達はバレー部のやっている焼きうどん屋台の店番を交代する為に移動してきたわけだけど、なんと大繁盛しているらしく、奈央ちゃん、紗希ちゃん、遥ちゃんは忙しそうにしていた。

 私達もすぐ屋台に入り、一緒に焼きうどんを作る。


「はい、焼きうどん2人前です!」

「すいませーん! 列になって並んで下さい!」


 これじゃ、奈央ちゃん達が自由行動できないよ。

 ちょっとでも落ち着いてくれれば……。


「奈央ちゃん達はもういいよ! 後は任せて」

「でもこの人数を3人で捌くのは無理ですわよ?」

「何とかなるよ。 ほら行って」


 亜美ちゃんが、奈央ちゃん達3人を自由行動させてあげる為にそう言うのだった。

 奈央ちゃん達も、少し悩んだようだけど「じゃあ、お言葉に甘えて」と、屋台をあとにした。


「で、亜美。 本当になんとかなるのかしら?」

「なるっ! てややー!」


 亜美ちゃんは変な声を出しながら、物凄い勢いで焼うどんを作っていく。

 どんなに手を早く動かしても、うどんや野菜に火が通る速度は変わらないと思うんだけど……。


「てややややー」

「速いのは口と手だけじゃないの……」


 奈々ちゃんも呆れていた。

 私と奈々ちゃんは完成した焼うどんを容器に入れて、順番に売って行く。

 まだまだお客さんはいる。

 むしろ完売する方が早いんじゃないだろうか。


「てややー」

「それ言わないと焼けないの?」

「焼けるよ」

「あはは……」

「はい、焼けたよー」


 

 ◆◇◆◇◆◇



 1時間近くお客さんを捌き最後のお客さんに売ったところで、きっちり完売した。

 皆に行き届いてよかった。


「ふぅ。 計算通りに行き渡ったねぇ」

「……え? もしかして、ちゃんと行き渡るように計算して量を調節してたとか?」

「そだよ?」

「どういう頭してんのよ……」


 亜美ちゃんコンピューターはどんなことでも出来てしまうようだ。

 亜美ちゃん恐るべし。


「ささ、屋台片付けて皆の所行こ」

「そうね」


 3人で屋台を急いで畳んで、完売の札を掛ける。

 これでバレー部の屋台終わり。


「んじゃ、夕ちゃん達に電話してどこにいるか訊いてみるね」

「お願い」


 亜美ちゃんが夕也くんに電話を掛けている間に、私と奈々美ちゃん少しお話をすることにした。


「今年はミスコン出ないの?」

「そうね。 今年はエントリーしてないわよ。 ただ、麻美がエントリーしてるとかなんとか言ってたわね」

「麻美ちゃんが? それは楽しみだね」

「優勝したら男子の部の優勝者とダンスでしょ? 良いのかしらねぇ? 知らない男子と踊るの」

「どうなんだろうね」

「夕ちゃん達、1-Cにいるんだって」

「麻美のクラスね。 行きましょ」


 今度は3人でミスコンについて話をすることになった。

 亜美ちゃんも今年は出ないようだ。

 亜美ちゃんが出たら優勝しちゃうしね。


「夕ちゃんも麻美ちゃんに誘われてたけど断ってたね」

「あの子、夕也独占を狙ってたのね……」


 麻美ちゃんもなんだかんだ言って侮れない。

 純粋に夕也くんの事が大好きで、とにかくどんどん前に出てくる。

 本人は恋人になる事は諦めてるって言ってたけど、好きでいることは諦めないようだ。

 それに比べてもう1人の1年生ちゃんはというと、完全に諦めモード。

 一切前に出ようとはしない。


「夕ちゃんは今年は自由に踊れるから、私が独占するよ」

「あら、私にも踊らせてよ」

「そうだよぅ。 亜美ちゃんだけずるいよ!」

「あははは」


 亜美ちゃんは「しょうがないなぁ」と言い、少しだけ夕也くんを貸してくれる約束をしてくれた。

 奈々美ちゃんはどうして夕也くんと?



 ◆◇◆◇◆◇



 1ーCの教室へ来ると、皆が勢揃いして待っていた。

 さすがにこの人数で動き回るのはどうなんだろう?

 しかし皆はお構いなしに移動を開始した。

 まずは何か軽く食べようという事になり、外の食べ物屋を見に行くことに。

 この時間でもまだ残っているだろうか?


「お、ホットドッグ屋はまだやってるな。 俺あれにするわ」

「私も」

「じゃあウチもや」

「わ、私も」


 夕也くん、亜美ちゃん、弥生ちゃんがホットドッグを買うと言うので、私も慌てて便乗した。

 他の皆は待っているという事なので、急いでホットドッグを買って戻ってくる。


「はむはむ。 美味しい」

「結構いけるな」

「そやな。 ええやんこれ」

「市販のパンとか使ってるだろうにねぇ」


 ケチャップとマスタードが良い感じに効いてて中々美味しい。

 ここまであんまり食べられてないから、これで少しはお腹も膨れるね。


「お待たせやで。 ほな次いこか」

「私、あそこのたこ焼き食べたい」

「お、たこ焼きか。 私も食べるで」

「たこ焼き食べるー」


 紗希ちゃん、渚ちゃん、麻美ちゃんがそちらへ向かう。


「そうだ。 佐々木くんはミスター月ノ木でないの?」

「出ないぞ」

「そうなんだ」


 佐々木くんが出れば優勝間違い無しなんだけどね。

 あんまり佐々木くんはこういうのに参加しないなぁ。


「雪村は……って出るわけないか」

「そうだね」


 あがり症の私があんな目立つ事出来るわけないない。


「亜美ちゃんや奈々美がいなきゃ優勝だって狙えるだろうに」

「そんな事ないよ」


 私が優勝なんて、それこそありえないよね。


「今年は私が優勝するからねー!」


 と、麻美ちゃん。

 これぐらい強気な性格になりたいものである。


「そのミスコンって、外部の人も参加できるの?」

「参加資格はと月ノ木学園の人間であることだから、無理だよ」


 宮下さんは「そっか。 残念」と、少しがっかりした様子を見せた。

 どうやら、参加可能なら参加するつもりでいたらしい。

 何というかアグレッシブだよ。



 ◆◇◆◇◆◇



 時間もそろそろ夕方17時。

 体育館では、ミスコンが始まろうとしていた。

 最初に女子の方から開始。


「去年はあそこに立ったのよね」

「そうだね。 私と奈々ちゃんで接戦だったよね」

「で、どっちが優勝したの?」


 その場にいなかった宮下さんが訊くと、月島さんが答えた。


「亜美ちゃんやで。 男子の部では夕ちゃんが優勝して、2人で踊ってたやんな?」

「ほぅー。 やっぱり清水さん強いんだ」

「つ、強いって……」


 なんて話をしていると、次は麻美ちゃんのアピールタイムである。

 一体何をやるのだろう?


「あ! あ! マイクテスト! よし! えっと、1年C組の藍沢麻美です! 今日は優勝を狙っています! ではアピールタイム行きます! 少々お待ちを」


 そう言うと一度舞台袖に引っ込み、すぐに何かを持って戻ってきた。

 あれは何?


「エアーガンです!」


 エ、エアーガン? 空気鉄砲だよね?

 そんなもので何をするんだろう?


「今からこのコインをトスして、エアーガンでリフティングします」


 ざわざわ……


「そんなこと出来るの?」

「さあ……」

「なんやおもろい子やな」

「変わった子よね、貴女の妹」

「まあ、そうね……」


 私達は、息を飲みながら麻美ちゃんを見る。

 観客皆が黙り込んでしまう。

 そんな中で、麻美ちゃんが高々とコインを投げた。


 パンッ! キンッ! パンッ! キンッ!


 遠くて良くは見えないけど、発射音の一瞬あとに金属音がする事から、弾はコインに当たっているのだろう。

 麻美ちゃんは小刻みに手を動かしながら、弾が無くなるまでコインを撃ち続け、最後は落ちてきたコインを制服のポケットでキャッチした。


「うおー! 何だかすげぇぞ!」

「マジパネェ!」

「天才ガンマン……いや! ガンレディだ!」


 アピールは成功。

 観客もあまりの凄さに湧き上がり、大歓声が上がる。

 

「以上! ありがとうございました!」


 大きくお辞儀をして舞台から捌ける麻美ちゃん。

 そのアピールのインパクト故か、はたまた可愛らしいからなのかはわからないが、今年のミス月ノ木に満場一致で選ばれたのであった。

 麻美ちゃんも大概規格外だよぅ。

 


今年のミス月ノ木は、インパクトのあるアピールで麻美が選ばれた。


「希望だよ。 麻美ちゃんって多才だよね。 色んな事を器用にこなせるの羨ましいなぁ。 まだ色々と特技ありそう」

「ふふふーっ」

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