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第257話 限界まで

イタリアチーム相手に1セットを先取した日本チーム。

2セット連取なるか?



 ☆亜美視点☆


 イタリアとの試合も2セット目に入った。

 まだ、アンジェラさんのタイミングの違う2種類のジャンプに対応できてはいない。

 なんとか私と希望ちゃんで拾うことで対応してはいるけど、クイックも混ぜてきてかなり大変。


 ピッ!


「ごめんー!」

「どんまいどんまい」


 2セット目は最初からやられている。

 いきなり3連続得点をされて3-0スタートとなってしまった。

 アンジェラさん、ここに来て動きが良くなってきた。

 スロースターターなのかもしれない。


「亜美ちゃん。 どんどん上げますわよ……跳べるだけ跳んでください」

「う、うん」


 つまり、私の最大ジャンプで勝負するという事らしい。

 まだブロックに捕まってはいないから、その作戦には賛成だ。

 それにプラスして同時高速連携もあるので攻撃力では負けてはいない。


「亜美ちゃん!」

「任せてー!」


 トスに合わせて最大ジャンプ。

 天使さんの遥か上からスパイクを叩きつける。

 世界に通用する私のジャンプ。


 ピッ!


「OKOK!」

「亜美のジャンプとキレてるわね」

「ほんま、ええ感じやん」

「うん。 天使さんに負けてられないからね」


 アンジェラさんの方を見ると、こちらをみて少し微笑んだいるように見えた。

 どうやら向こうも私を強敵と認めたようだ。

 さて、私のサーブ。

 もうライン上狙いのサーブは通用しないと思って間違いない。

 大人しく拾いにくい場所を狙って……。


「はっ!」


 リベロとセッターの間を狙ってサーブ。

 当然リベロが拾う。

 さて、セッターの動きを見て……。

 今回は高いトス。

 アンジェラさんに合わせたトスだ。

 さらにアンジェラさんのジャンプにも注意……。


「どっち……」


 アンジェラさんが跳ぶ。 ふんわりジャンプだ。

 そのジャンプに釣られて奈々ちゃんは飛ぶ。

 やられたね。

 冷静に見ていた曽木さんが1枚ブロックで跳ぶも、簡単に躱される。


 パァンッ!


「はぅー!」


 希望ちゃん決死のダイビングレシーブ。

 なんとかボールを拾うが、かなりトスしにくいボールになった。


「走ってください!」


 でも、私達は奈央ちゃんの力を信じている。

 言われなくてもゆっくり助走に入ると、奈央ちゃんはアンダーでボールを上げた。


「さすが西條さんや! オーバーハンドトスと変わらんやん!」


 パァンッ!


 ピッ!


「しゃい!」


 弥生ちゃんが完璧な一撃を決めて1点差に詰める。

 いいよいいよ。


「希望ちゃんもナイスレシーブ」

「うん。 だいぶ慣れてきたよ。 まだまだ拾うから、バックは任せて」

「頼もしいわね」

「悪いわね。 好き放題打たせちゃって。 ブロック出来ればいいんだけど……」


 曽木さんも少し申し訳なさそうにしている。

 でも、あのタイミングと高さの違うジャンプは見た目以上に対処が難しい。

 見てから跳ぶんじゃ、速い方のジャンプに対応できない。

 かといって同時に跳んでも、先の奈々ちゃんのようにふんわりジャンプにやられる。

 完全に2択である。


「天使ちゅうか悪魔やな」

「天使で良いんじゃないかな……」


 見た目は凄く可愛い女の子だし悪魔は失礼だ。

 あれ? じゃあ私に対して小さな怪物とかいうネーミングも……。


「ほら集中」

「あぅ」


 集中集中。

 私のサーブはまだ続いている。

 今度はカーブサーブで、ボールを曲げつつ、リベロとミドルブロッカーの間に落とす。

 あわよくばサービスエースを狙う。

 しかし、これはリベロが拾う。

 でも、大きく曲がったボールに手を伸ばして上げた為、レシーブが乱れている。

 セッターが必死に走って、アンダーで上げてくる。

 これはアンジェラさんではなく、他の人が返してくるも、曽木さんと奈々ちゃんのブロックで阻む。


「よしよし追いついたわね」

「こんなもんよ」


 最初に取られた3得点を、そっくり取り返してふりだしに戻し尚も私のサーブ。

 もう1度カーブサーブで際どい間を狙う。

 リベロもかなり嫌そうな顔をしている。

 今度は綺麗に上げて来たので、攻撃が繋がる。


「クイック!」

「わかってるわよっ!」


 セッターの癖を見て即座に反応した奈々ちゃんと曽木さん。

 コミットブロックでアンジェラさんのクイックをシャットアウト。


「ナイスブロック!」

「……wao」


 ここでクイックを止められたのは大きい。

 4連続得点で逆転。

 勢いに乗ってきた。

 さらに私のサーブは続くも、次はアンジェラさんにやられてしまう。

 4連続得点で途切れてしまったけど、まあ追いつけただけOK。


「大味な試合になって来たわね」

「うん。 でも、クイックを止められたのは大きいよ」

「そうですわね。 クイックもちゃんとケアしてるって言うのを見せられたましたしね」


 さて、イタリアサーブをなんとか1本で切りたい。


「さー来るよー!」

「あいよー」


 サーブを上手く処理する希望ちゃん。

 ここで奈央ちゃんが同時連携のサイン。

 前衛の3人が同時に助走を開始。

 私はブロックされた時のフォローだ。

 ここは奈々ちゃんが決めて、1本で切った。


「ナイス」

「さすがやな月学エース」

「まぁね」


 奈々ちゃんもここに来て動きが良い。

 なんだかレベルもアップしてる気がする。



 ◆◇◆◇◆◇



 試合は2セット目中盤。


「返ってくるよ。 せーの!」

「ワンタッチ!」


 ここに来てだいぶアンジェラさんの攻撃にも慣れてきたのか、ブロックも触れるようになってきている。

 結果、ラリーが続くようになってはいるけど。


「亜美ちゃん!」

「はっ!」


 最大ジャンプのスパイクでブロックを越える。


 ピッ!


「はぁはぁ……」

「亜美、大丈夫?」

「う、うん……」


 とは言ってみたものの、2セット目は最大ジャンプを連続してるせいでだいぶスタミナが消耗している。

 少し足にも来てるね。


「後5点……」

「亜美ちゃん、ここまでよく頑張ってくれましたわ。 ここからは同時高速連携で、奈々美と月島さん主体でいきますわ」

「OKやで」

「はぁ……ごめんね。 私も跳べるときは跳ぶから」

「無理しなくていいわよ」

「あぅ」


 現在20-18

 優勝候補相手に勝利目前まで来た。

 私のスタミナも限界だし、このまま勝ってしまいたいところである。


「このセットで決めるわよ!」

「了解!」


 皆一丸となって勝利に向かっていく。

 普段は敵同士の私達だけど、今は日本ユースとして同じユニフォームを着た仲間。

 こんなに心強い事は無い。

 私も、頑張るよ。


「あと5本! ブレイクだけはさせないように!」


 そこからもラリーが続いて……。


「HA!」

「うわわ……」


 足が追い付かないぃ。


「ごめーん」

「しゃーない。 足に来てるんやろ」

「うん」

「安心しぃや。 ウチらがあと5点取ったるさかい」

「うん……」


 私は足を引っ張らないように、出来るだけ疲れを見せないように振る舞う。

 弱点になりたくはないからね。


「いきますわよ」


 奈央ちゃんは、先ほど言った通りに同時高速連携にシフト。


「うらぁ!」


 ピッ!


「HAI!」


 ピッ!


 激しい攻防が続く中、ついにマッチポイント。


「はぁ……ふぅ……」

「きつそうね」

「うん……でもあと1点だし頑張る」

「そやな」


 サーブをはリベロに拾われている。

 セッターは……高いトスだ。


「アンジェラさんは……」


 迷ってちゃだめだ。 どっちも止める気で、今日最後の最大ジャンプでブロックだよ。


「たぁぁっ!」


 限界まで来ている足に鞭を入れて、力を振り絞って跳ぶ。


「アンジェラさんっ!」

「Ami!」


 お互いの最大ジャンプが最高点に到達する。


「HA!」

「っ!」


 パァンッ!


 私の高さが勝り、ボールを下に落とす。

 フォローも間に合わず、ボールはイタリアコートでバウンドした。


 ピッー!


 ドサッ……


 私は、力の入らない足で着地したが踏ん張れず、そのままへたり込む。


「亜美ちゃん、大丈夫?」

「う、うん……勝ったんだよね」

「そうよ。 優勝候補の一角イタリアにね」


 皆が私の周りに集まって、抱き付いてくる。

 まるで優勝したかのような騒ぎっぷりだ。


「Ami」

「あ、アンジェラさん」

「Auguri」(おめでとう)

「Grazie」(ありがとうございます)


 私達の勝利を祝ってくれたアンジェラさん。

 私達は握手を交わして別れた。

 これで、私達は上位8チームの順位決定戦に進むことになった。

 残りのチームには当然のようにアメリカとロシアも残ってきている。

 あと3つ勝てば世界一だよ。





何とかイタリアに勝利するも、亜美はもう限界のようだ。


「遥だよ。 今日はブロックについてだ。 リードブロックとコミットブロックってのがあるけど、ようするにはタイミングの違いだよ。 リードはトスやアタッカーの動きを見てからある程度予測して跳ぶブロック。

 コミットは、相手のトスに合わせて、ある程度ヤマを張って跳ぶブロックだ。

 クイックなんかを読んだ時に使うよ」

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