第247話 夏休み最後の計画
夏休みも残り3日。
最後に何かやりたい亜美は?
☆亜美視点☆
今日は8月29日。
明後日には春人くんがアメリカへ戻るので、遊べるのもあと1日……今日だけである。
プールに夏祭り、バーベキューとやってきたけど、もう1回ぐらい何かやりたいと思い考えたのが……。
「クアドラプルデート?」
「うん」
「何それ?」
「私のとこと、奈々ちゃんのとこと、奈央ちゃんのとこと紗希ちゃんのとこの4カップルでデートするの」
「また変な事考えたわね」
「変かな?」
今、件の女子4人で話し合っている最中。
私の考えに、他3人は首を傾げている。
明日は遥ちゃんはジムの日だそうだ。
希望ちゃんには悪いけど、我慢してもらうことになるんだけど、埋め合わせは今度するという事で許してもらっている。
「まぁ、いいんじゃない?
「私も良いよー」
「私も、最後に春人君とデートしておきたかったしOKだけど」
「問題は男性陣だねぇ」
夕ちゃんは問題無いって言ってたし、あとの3人だ。
皆は早速、それぞれのパートナーに連絡を入れる。
一番の問題はやっぱり柏原君。
名門進学校に進んだ柏原君は、成績第一だということで、ご両親から色々言われているようだ。
遊びに行くのも相当大変らしい。
ただでさえ、夏祭りにバーベキューと連日遊んでいたのだ。
明日OKが出るかは難しいところだが。
「宏太はOKみたい」
「春人君も大丈夫よ」
と、2人は大丈夫。
問題は。
「うん、明日。 行けそう? ご両親から何か言われそう?」
今、行けるかどうかの確認中。
「行ける? 本当に大丈夫? うん……うん、わかった」
紗希ちゃんは空いた方の手でOKを作って伝えて来てくれた。
これで4組でのデートが可能となった。
「うん。 じゃあ、詳しい時間とか行き先は後で連絡するわ。 それじゃ、勉強頑張ってね。 ちゅっ」
そう言って紗希ちゃんは電話を切った。
「OKだって。 その代り今日は缶詰らしいけど」
「あはは……そっか」
「大変ね、彼も」
「私の親より厳しいわね」
「奈央のご両親は大して厳しくないでしょ」
たしかに、奈央ちゃんのご両親は結構放任だ。
以前お見合い話を持ってきたことがあったけど、それ以外の事は自由にやっているように見える。
「まぁ、そうね。 私は自由にやらせてもらってるし。 その代り、将来はお父様の跡を継ぐ約束をしているけど」
「それも大変ね。 天下の西條グループの時期総帥なんて」
「やっぱプレッシャーとか凄いんじゃない?」
「うーん……そうねぇ。 プレッシャーは確かにあるわね。 西條グループの全てが自分の手に委ねられる……それほど怖い事は無いわね」
「そうよねー」
やっぱり、奈央ちゃんでも怖いと思うものなんだね。
それもそうだよね……日本有数の巨大グループ。 自分の手腕でさらに繁栄することあれば、傾いてしまう可能性だってある。
大勢の人の生活が、自分の手に掛かってくるのだ。
その責任は重大である。
「はぁ、まだ大学もあるし、先の事はまだまだ考えなくていいわよ」
奈央ちゃんはそう言って話を締めた。
「さて、じゃあ明日どうするか決めましょう」
「そうだね」
私達は、皆で翌日のクアドラプルデートの予定を詰めていく。
待ち合わせ時間や場所、行き先等をしっかりと計画していく。
私達の話し合いは夕方ぐらいまでかかった。
皆、何だかんだで楽しみにしてくれているのか、色々行きたいところがあるようだ。
それで決まった行き先が……。
「じゃあ、待ち合わせは朝10時に駅前広場の噴水ね」
「ええ。 んで行き先はアニマル牧場ね」
そう、行き先はアニマル牧場。
動物園と遊園地が合体したようなテーマパーク。
行きたいと言ったのは紗希ちゃんである。
可愛い動物たちとのふれあいは楽しみだ。
希望ちゃんが聞いたら、きっと羨ましがるね。
「ということで、今日のところは解散!」
「明日遅れないようにね」
「また明日ねー」
「はーい」
色々と決まったところで今日は解散。
夕ちゃんの家に行かないと、希望ちゃんが夕飯の準備を1人で進めてくれている筈である。
◆◇◆◇◆◇
夕飯中──
「ええー、アニマル牧場ー!? いいなぁ」
明日の行き先を希望ちゃんに話したら、案の定羨ましがった。
「アニマル牧場かー。 初めて行くよな」
「うん」
「ねぇねぇ、お土産に何かぬいぐるみお願い!」
「あはは。 うんうん、買ってくるよ。 写メで送るからどれが良いか教えてね」
「うん」
希望ちゃんのお願いは聞いてあげよう。
明日はお留守番することを了承してくれたのだから、それぐらいの見返りはあって然るべきだ。
「来月は私も夕也くんとデートさせてもらえるし、我慢しますよぅ」
とのことらしい。
希望ちゃんと夕ちゃんの月1デート。
これは私が許可したこと。
少し甘いかと思ったけど、これで良かったんだと思う。
夕ちゃんは私が一番だと言ってくれているし、今はそれを信じる余裕もある。
「んー。 来月と言えば世界選手権だね」
「うん。 開催地はアメリカだね」
そう、海外なのだ。
当然、大会中は学校も休む事になる。 出席日数や単位は免除してもらえるとの事なので、大会に集中する事が出来るよ。
「すげぇよな、お前ら」
「いやいや……」
「私なんてまだまだ……」
何て言うと、レギュラー選考に漏れたライバル達に申し訳ないね。
行くからにはユース世界一を目指すよ。
「他の国ってどうなんだ?」
「今年の強豪は開催国のアメリカとイタリアだって」
「ふうん」
春人君にアメリカの選手の事を訊いてみたけど、詳しくは知らないとの事。
試合動画も無いし、情報不足だね。
「大会5日前から合宿に入るから、夕ちゃんとはしばらく会えないね」
「まあ、仕方ないだろ」
「うん……」
きっと寂しいだろうなぁ。
夕ちゃんと会えない時間が続くと、私はダメダメになってしまいそうだよ。
合宿前日は熱い夜にしてもらおう。
◆◇◆◇◆◇
ということで翌日の8月30日。
朝の10時前。
待ち合わせ場所にやってきた、私と奈々ちゃんのカップル。
「奈央と紗希のところはまだ来てないわね」
「まだ10分前だしね」
「ふぁー……眠い」
と、欠伸を漏らしているのは宏ちゃん。
宏ちゃんらしいなぁと思う。
噴水の前で5分ぐらい待っていると、奈央ちゃん達4人がゆっくりと歩いてくるのが見えた。
「お待たせー」
「早いわね、貴女達」
「あはは、10分前に来てたから」
「楽しみだったんですね」
春人君の言う通り、楽しみにしていたのは間違いない。
今回はカップルだらけのデート。 これをデートと言うのかはわからないけど、楽しくなるはずである。
私達は早速電車に乗り込み、目的地のアニマル牧場へと向かう。
「春くんは明日何時に帰るの?」
「明日ですか? 昼13時の飛行機ですから、10時くらいには出ようかと思います」
「じゃあ、またお見送りに行くね」
「ありがとうございます」
「私はまた空港まで行くわ」
と、奈央ちゃん。
超遠距離恋愛の2人は上手くやっているようだ。
心配していたけど、これなら2人は大丈夫そうだ。
さぁ、クアドラプルデートの始まりだよ。
カップル4組でのデート開始。
「奈央よ。 亜美ちゃんたら変わった事考えたわね。 まあ、楽しけりゃ良いけど。 アニマル牧場はまだ行ってなかったわね。 乗馬とかは経験あるから、私に任せて」
「頼もしいよー」