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第232話 春人再訪

バスケ部の大会も終わった夏休みの真ん中。

本日は春人が日本に遊びに来ることになっている。

 ☆夕也視点☆


 俺達バスケ部のインターハイの最終結果は3位に終わった。

 準決勝で、佐田さんのいる兵庫青柳とぶつかり敗退。 3位決定戦に勝利した。

 もう少しだったのに、悔しいと思う。

 佐田さんとは、また冬に対戦したい。


 さて、今日は8月16日。

 春人がアメリカから遊びに来るらしい。

 8月一杯をこちらで過ごすとの事。

 今回は今井家ではなく、西條邸にお世話になるようだ。


 という事で……。

 久しぶりに西條邸へやって来ている。

 皆は何故か、水着等を持参している。

 というのも、この後は皆でプールへ行こうという話になっているからだ。

 今年の夏は、旅行には行かない代わりに、日帰りで色々と遊びに行こうという話になっている。

 今日はその、第1弾というわけだ。


「春くんは何時ぐらいにこっちに?」

「11時ぐらいには着くって連絡あったわよー」

「楽しみだね、夕也くん」

「そうだな。 またストバスで勝負したいぜ」

「バスケバカなんだから」


 と、奈々美に呆れられてしまった。


「あの、その春人さんって?」


 ここに約1名、春人とは初対面な子がいる。

 渚ちゃんだ。

 お姉さんの方は月ノ木祭に遊びに来た際に邂逅しているが、妹の渚ちゃんは今年の4月に月ノ木学園に入学してきたので、春人の事は知らない。


「去年の夏休みから今年の3月まで、月ノ木学園に留学してきてた男の子だよ」

「はぁー、そんな人がおったんですねぇ」

「私は1回会った事あるけど、中性的な儚げイケメンって感じだったよ」

「へぇ……」


 渚ちゃんは、あんまりその辺には興味は無いようだ。

 

 しばらく待っていると、奈央ちゃんの部屋の電話が鳴り、春人が到着したと報告が入った。

 俺達はこの後、昼食を頂くので一緒に部屋を出て、先にダイニングへ向かった。


「わかってはいたが……」

「ダイニングも広いね……」


 一体、何人で食事をするつもりなんだというぐらい広い部屋に、長いテーブルと高そうな椅子が置いてある。

 適当に座って、奈央ちゃんと春人を待つ。


「そうそう、春くんはねぇ、奈央ちゃんの彼氏なんだよ」

「おお、それは初耳!」


 と、麻美ちゃん。

 なんだ、知らなかったのか。

 渚ちゃんの方はというと、やはり興味が無いのか「そうなんですか」と言うに留まった。


 ガチャッ……


 扉が開く音に釣られてそちらを見ると、奈央ちゃんと、約半年ぶりに見る春人の姿があった。


「おお、春くん久しぶりー!」

「元気にしてた?」

「皆さん、お久しぶりです……と、初めましてもいらっしゃるようですね?」

「初めまして、月島渚です」


 ペコッと頭を下げる渚ちゃん。

 名前と顔を見て何か気付いたのか、春人が渚ちゃんに質問をする。


「違ったら失礼します。 京都にお姉さんか妹さんがいらっしゃいませんか?」

「あ、はい。 弥生という姉がいますけど」

「あーやはり……似てると思いました。 お姉さんとは一度会ったことがあるので」


 奈央ちゃんと春人が、席に着きながら話しを続ける。


「そういえば、姉は去年月ノ木祭に遊びに行ったって言ってましたね」

「そうですね。 しかし、何というか……お姉さんとは違うというか……」

「姉は何というか、遠慮知らずなところがありますからね……初対面でも失礼な事言ったりする事があるんです」


 やっぱりそうなんだな。


「さて、早速お昼にするわよー!」


 渚ちゃんと春人が話しているところに、奈央ちゃんが割り込み会話を切る。

 あー、妬いてんのか。

 周りの皆も気付いたらしく、くすくすと笑い声が聞こえてきた。


「そういえば奈央。 ゴールデンウィークにアメリカ行った時は、どこまで進んだの? っていうかぶっちゃけヤッたの?」

「ヤッてないわよ!」

「ははは……」


 紗希ちゃんのぶっ込みに、渚ちゃんは顔を赤らめていた。

 更に紗希ちゃんの攻めは続き──。


「んじゃ、この夏で大人にならなきゃダメよー?」

「こっちの自由でしょ?!」


 と、生々しいやり取りをしていた。

 

「昼からはプールだと聞いていますが?」

「そうよー。 我が西條グループが経営する───」

「あー、はいはい。 毎度ありがとうございます」


 ノリノリで解説しようとする奈央ちゃんを、適当にあしらう紗希ちゃん。

 慣れてるな。

 俺達も慣れてしまったのか、西條グループが何をやっていても何とも思わなくなってきた。


「皆さんと久しぶり遊べるんですね。 楽しみです」


 相変わらず正直な奴だな。

 昼食後は、少し休みを入れる。

 その間、女子達は春人を囲んで、奈央ちゃんとの事を根掘り葉掘り聞いていた。


「女子って本当にああいうの好きだよな」


 と、退屈そうに宏太が言う。

 ただ、約1名は女子達の輪から外れて、遠目に眺めている子がいる。


「渚ちゃんは良いのか?」

「まぁ……よく知らん人やし遠慮しとこうと」

「興味はあるんだな」

「い、一応女子なんで……」

「好きな男子とかいるのか? あー、いても京都か」

「お、おらへんっ……です」


 何か取り乱したようだが、一体どうしたのだろうか?


「夕也、お前本当にアレだな」


 呆れたように宏太が何か言うが、アレってなんだ。


「まあ、別に良いけどよ」


 教えてはくれないらしい。

 何となく、渚ちゃんの方を見てみると、視線を逸らされてしまった。

 まさか、嫌われてる?

 前もちょっと近くに寄っただけで「近過ぎる」と言われた事があった。

 そうか……俺は嫌われてるのか。

 渚ちゃんとの距離感には気を付けよう。


「そういえば、夕也と亜美さん達はどうなっているんですか?」


 不意に名前を呼ばれたので、そちらに視線をやる。


「あー、亜美ちゃんと夕也くんが今はお付き合いしてるよ」

「えへへー」

「そうなんですね」

「話によると、ヤリまくりらしいわよー?」


 とは奈々美の言葉。

 そ、そんな言うほどは……。


「ヤリまくりなんですか、先輩?」

「ノ、ノーコメント」

「ふぅん……」



 何故か渚ちゃんからジト目で見られるのであった。



 ◆◇◆◇◆◇



 話が一段落したところで、プールへと出かける事にした。

 女子達は、この夏の新作水着とやらを用意してきたようで、楽しみである。


「で、奈央。 どんなプールなの?」


 と、紗希ちゃんが訊くと、奈央ちゃんは怒り出した。


「貴女ねー! それをさっき説明しようとしたら、あんたが勝手に話しを終わらせたんじゃないの!」

「きゃはは、そだっけ?」


 奈央ちゃんと紗希ちゃんは、小さな頃からの幼馴染らしく本当に仲が良い。


「遥も何か言ってやってよ」

「どんなプールなんだい?」

「……はぁ」


 と、溜め息をついた奈央ちゃんは、近くのベンチの上に飛び乗り、踏ん反り返りながら説明を始めた。


「普通の50mコースは勿論、超スリリングなウォータースライダー、激流に飲まれる体験が出来る流されるプール、普通の波の出るプールに、サーフィンなんかも楽しめる高波が出るプール、その他色々目白押しのラインナップよ」


 何か物騒な物も紛れ込んでいたようだが、相変わらず普通じゃなさそうなプールだな。


「今井君! またサーフィンおせーて!」

「わ、私も!」


 去年の夏休みに教えたが、今年も頼むと紗希ちゃん、希望に言われた。

 更に──。


「わ、私もお願いしてええですか?」


 と、渚ちゃん。

 嫌われてるんじゃないのか?

 とにかく、お願いされたらなら仕方ない。


「おう、任せておけ」


 引き受けるしかねぇな。


「夕ちゃん、私と遊ぶ時間もちゃんと作ってね?」


 亜美は何故か少し怒り気味にそう言うのだった。

 

プールへとやって来た夕也達。

サーフィンまで出来るというプールで、今年も教えることに。


「亜美だよー。 夕ちゃんってば盛大に誤解してるねー。 あれは嫌ってるから避けてるんじゃなくて好きだから避けてるのに。 渚ちゃんも言ってあげればいいのに」

「す、好きとかは言えません……ほんま堪忍して下さい」


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