第2282話 くぅの出産
くぅの様子がおかしいようだ。
☆麻美視点☆
12月5日の日曜日。
「くぅの様子がー」
「くん……」
「多分出産が始まるんだ」
最近はあまり動かずにじっとしていたくぅ。
時期的にもそろそろ子供を産む頃だったのでおかしくはないー。
「おお……くぅ、頑張れー」
「今日は宏ちゃんがいて良かったねぇ」
「うむー。 宏太兄ぃ、協力頼むー」
「おう」
という事で、本日は色々な予定をキャンセルして、くぅの出産を見守る事にするぞー!
「犬の出産か。 ええタイミングに居合わせたもんやで」
「ワハハ」
「頑張っテ!」
昨日の試合の後に「皆の家」に来た東京組三人は、興味津々で様子を見ているー。
「基本的には俺達が出来る事は無いんだ。 野性だと母犬一匹で全部するからな」
「それもそやんな」
「まあ、何かあった時にちょっと力を貸してやるくらいさ」
「ほーん」
「あー?」
「うー?」
亜美姉とお姉ちゃんは、美夕ちゃんと美夜ちゃんを抱っこしながら様子を見ているようだ。
さすがに赤ちゃんには何が何だかわからないだろうけどー。
「何匹産まれるの?」
「三匹ー」
くぅのお腹には三匹の仔犬がいるらしいー。
その内の一匹を父犬の飼い主である林さんにお譲りする事になっているー。
二匹が手元に残る事になるが、あと一匹の貰い手を探すつもりである。
「一応店には連絡しときましたわよ。 何かあればすぐに連れて行けますわ」
「おー、ありがとうございますー」
何か凄く大袈裟になってるー。 でも凄いサポート体制で安心ー。
「通常、第一子は陣痛から一時間程で産まれるんだ。 まあ、場合によっては早い場合もある。 逆にあまり時間がかかるようだと何か問題がある可能性もあるから、その時は獣医に相談だ」
「りょーかーい!」
「まあ、くぅはまだ若いし大丈夫だろう」
「くぅん……」
「頑張れー! 私がついてるぞー」
飼い主である私やお姉ちゃんは、こうやって声を掛けてあげる事しか出来ないのである。
◆◇◆◇◆◇
くぅの出産が始まって約三時間。
「おー! 三匹とも無事に産まれたー!」
「良く頑張ったわね」
「はふ……」
さすがに疲れたらしく、ちょっとぐったりしている。
仔犬達も問題無さそうだと宏太兄ぃが言ってくれている。
「一安心やな」
「ええもんみれタ」
「感動でス」
東京組の皆も、くぅの出産を祝福してくれている。 何だかんだ、くぅも皆から可愛がられているようだ。
「にしても、アテナの出産を思い出すで」
「サリーにエリー、カイン君もこないな感じやったなあ」
「まあ、仔犬は産まれてしばらくは皆似たようなもんさ」
「ここまで終わったらもう大丈夫だぞ。 あとはくぅに任せておこう」
「うむー。 くぅ、仔犬の事は任せたー」
「わふ」
あまり元気は無いけど、しっかりと返事を返している。
「みゃ」
「なー」
「マロン、メロン。 くぅちゃんの邪魔はしちゃダメだよ」
「みゃー」
「なー」
マロンとメロンはくぅの事を心配して見てくれているようだー。
とはいえ、猫であるマロンとメロンには仔犬の面倒は見れないと思われー。
「しかし、腹減った」
「死ぬ」
くぅの出産に立ち会っていた私達。
蒼井先輩と宏太兄ぃはお腹を空かせているのを忘れていたらしいー。
急にお腹が空いたと言い出したー。
「あんた達、赤ちゃんと変わらないわね」
「腹減った」
「死ぬ」
赤ちゃんより酷いと思われー。
◆◇◆◇◆◇
遅めのお昼ご飯を食べ終えた私達ー。
くぅもかなり元気が戻っている様子ー。
仔犬達はくぅのおっぱいに吸い付いているぞー。
「可愛いー」
「だねぇ」
「そういえば、林さんには連絡したの?」
と、お姉ちゃんから言われて、連絡していない事を思い出したー。
「まだだったー! すぐに連絡せねばー!」
「はあ……」
という事で、くぅのお見合い相手リッキー君の飼い主である林さんに、くぅが無事に出産した事を伝える。
林さんも喜んでくれていたー。
写メも送って上げたぞー。
「ふう……」
「にしてもあれやな。 あっちでは人間の赤ちゃんが6人寝とって、こっちでは犬の赤ちゃんが三匹てか」
「ベビーラッシュにも程があるな……」
「なはは!」
「これはまた騒がしくなるね」
「ですわね」
仔犬達は赤ちゃんのように大きな声で泣いたりはしないみたいだし、そこまで騒がしくはならないだろう。
「でも、赤ちゃんズと仔犬達はこれから一緒に成長していくのね」
神崎先輩は「皆仲良くしてくれると良いわねー」と、真希ちゃんを抱っこしながら言う。
美希ちゃんはベッドでまだ寝ているようだ。
「だねぇ。 マロンとメロンも、美夕達と仲良くするんだよ?」
「みゃ!」
「なー!」
「その子達……っていうか、他のペット達も大丈夫でしょ。 可憐ちゃんと遊んでる時の様子を見ても問題無さそうだし」
「確かに奈々ちゃんの言う通りだねぇ」
マロン達は、可憐ちゃんが遊びに来ると良く一緒に遊んだり面倒を見たりしているー。
ここまで出来た犬猫はそうは居ないだろうー。
特にマロンは天才猫と言っても過言ではないー。
実質、ペット達のリーダー的なポジションになっていると思われる。
「そや。 麻美はこの仔犬引き取るとしてや、二匹引き取るんか?」
私と同居している渚が訊いてくる。
まあ一緒に暮らしているし気にはなるかー。
「一匹は誰か貰ってくれる人を探すー」
「そうなんや」
「うむー」
「それやったら美智香に訊いてみたらどないや?」
私と渚の話に月島先輩が入ってくる。
「美智香姉ー?」
「そや。 あれも犬か猫飼いたい言うてたから、もしかしたら貰うてくれるかもしれへんよ」
「おー? 後でゲーム内で会ったら訊いてみるかー」
美智香姉が貰ってくれれば、割と頻繁に顔も見れそうだし良いと思われー。
「ちなみに、仔犬の名前は考えてんのか?」
「名前ー……むぅ、まだどの子をうちの子にするかも決めてないからー」
「名前ならお任せあれだよ! んーっ! んーっ!」
と、いつものように亜美姉が必死に名前を考えている。
多分また甘い物の名前が出てくるんだろうー。
「ショコラだよ!」
「やっぱり甘い物の名前になるのね」
「ブレねぇな、亜美ちゃんは」
「ショコラは良いよ。 素晴らしい名前だよ」
「コーヒーとかはどうだ?」
「ダメだよ、そんな苦そうな名前は」
亜美姉の感覚は私にはちょっとわからないー。
しかし名前かー。
何か良さそうな名前を考えておかねばー。
「カステラちゃんも捨てがたいねぇ!」
亜美姉はまだ甘い物の名前を考えているのだった。
はてさて、この仔犬達の内どの仔犬が我が家にやって来るのだろうかー?
宏太兄ぃが言うには二ヶ月ぐらいは母犬と一緒に育てて、その後親離れさせるのが普通だそうだー。
とりあえず二ヶ月は私が面倒を見るー!
くぅにも三匹の子供が産まれたのだった。
「希望です。 はぅ、可愛いよぅ」
「マロンの出産を思い出すね」




