第2254話 くぅもおめでた
紗希と双子ちゃんが帰って来る日に。
☆麻美視点☆
11月8日の月曜日です。 今日は神崎先輩が退院する日。 私は神崎先輩を迎えに行く為、車を出す準備をしている。
「やっぱり車の持ち主は行くべきなんだよ」
「私、何かジャンケンに勝ったんですが良かったんですかね?」
「良いじゃないですか」
「ですわよー」
一目、真希ちゃんと美希ちゃんを見ようと勃発した、お迎え同行者争奪戦。 勝ち取ったのは亜美姉、天堂さん、マリア、西條先輩の4人である。 妊婦組が二人も居るー。 安静にしてなくて良いのだろうか?
「安全運転で行きますー」
「お願いですわよー」
というわけで、いざいざ病院へー!
◆◇◆◇◆◇
ブロロロ……
「到着ー」
「おお! 紗希ちゃんと柏原君は何処かな?」
「多分待合室じゃないかしら? 着いた事を連絡するわよー」
西條先輩がスマホで神崎先輩と柏原先輩を呼び出すと、程なくして病院の出入り口から赤ちゃんを抱いた神崎先輩と柏原先輩が姿を現した。
「おお! 赤ちゃん抱っこしてるよ!」
「それはそうでしょう……」
「なはは」
「小さいですねー」
「可愛いです」
車に近付いて来たので後方ドアを開ける。 ゆっくりと歩いてくる神崎先輩達の為に、席を空けて待つ天堂さんとマリア。
「ふぅ。 麻美、お迎えありがとうね。 にしても一杯来たわね」
「ははは……定員ギリギリだ」
「そりゃあいち早く双子ちゃんに会いたいからねぇ」
「ですわよー」
「二人は『皆の家』で安静にしてなさいよ……もうすぐ入院でしょ?」
「まあね。 明後日にはここで入院だよ」
「尚更安静にしてないとダメじゃーん」
「うっ……えーん!」
「おりょりょ。 美希が泣き出しちゃった。 お腹空いたのかしら」
「車出して大丈夫ですかー?」
「良いわよー。 よしよし。 ちょっと我慢しててねー」
「おお! 紗希ちゃんがお母さんになってるよ!」
「きゃはは。 やっぱり子供産まれると自覚が芽生えるわよ」
「やっぱりそうなのね」
ブロロロ……
「えっと、先にどちらの実家へ行きますかー?」
「まずは柏原家に寄ってちょ。 道案内は裕樹、よろしく」
「わかった」
先に柏原先輩の実家へ行くようですー。 私達はしばらく車の中で待機する事になりそうだ。
◆◇◆◇◆◇
柏原先輩の実家まで送り終えた私達は、邪魔にならない場所に車を止めて待機する事にー。
「なはは。 このあとは、くぅの様子を見に行かないとー」
「くぅちゃん、妊娠確認まだ出来ないの?」
「宏太兄ぃが言うにはそろそろわかる頃だってー」
我が家で飼っているミニチュアダックスフントのくぅは、10月の頭に友達の林リッキー君とお見合いを開始。10月10日のカメラ映像により、交尾は確認が取れており、後は妊娠しているかどうかを確認するだけ。
ピロリロリン!
「のわわ。 スマホが鳴ったー」
「今は運転してないし、通話しても大丈夫だよ」
「あ、噂をすればペットショップからー」
もしかしたら、くぅも妊娠かー?
「はい、もしもし。 藍沢です」
ちなみに、知らない人と電話する時はちゃんと素に戻るぞー。
「はい。 はい。 そうですか! はい! わかりました! 今ちょっと出先に居まして。 はい、後ほど迎えに行きます。 はい、ありがとうございました。 それでは」
ピッ!
「くぅも妊婦になったー!」
「おお、良かったねぇ!」
「でも、今は迎えに行けませんね……」
「うむ。 迎えに行くまでちゃんと預かってくれるらしいー」
「まずは紗希達の送り迎え優先ですわね」
「はいー」
閉店までは大丈夫との事なので、時間的には十分余裕があるー。 慌てずにまずは神崎先輩達の送迎を完遂するぞー。
20分後には神崎先輩達が車に戻って来て、次は神崎先輩の実家へ向かう。 真希ちゃんと美希ちゃんは今のところ疲れて眠っているようだー。
「へえ。 くぅが妊娠? 良かったわね!」
「ごめんね。 すぐに迎えに行って上げたいよね?」
「なはは……まあ、もうちょっとしたら行けますからー」
「きゃはは。 うちの実家は軽くこの子達見せるだけで帰ってくるわ。 どうせ父さんは仕事で居ないし」
「何かすいませんー」
ブロロロ……
神崎先輩の家は柏原先輩の家から少し離れた場所にあるが、車ならすぐに到着するー。
神崎先輩と柏原先輩は「すぐ戻る」と言って家の中に入っていき、10分程度で家から出てきたー。
「お互いの実家には、また今度ゆっくり帰ってくるとして、とりあえず『皆の家』に行きましょ」
「りょーかーい!」
ブロロロ……
あとは神崎先輩と柏原先輩を「皆の家」に送れば任務完了ですー。 真希ちゃんと美希ちゃんは相変わらず寝ているようだー。 亜美姉と天堂さんは「可愛いねぇ」「ですねー」と、双子ちゃんを眺めながらニコニコしている。
「なはは。 私もあとでゆっくり見ようっとー」
とりあえずまずはくぅを迎えに行ってからだー。
◆◇◆◇◆◇
神崎先輩、柏原先輩に双子ちゃんを「皆の家」まで送り、私はそのまま車に乗ったままペットショップへ移動を開始ー!
「くぅ、待っていろー! 今、迎えにイクゾー!」
ブロロロ……
「まあ、安全運転でゆっくりとー」
ちなみに、同行していた皆も「皆の家」で降りたので、現在は私一人になっているー。 今頃リビングでは、同行出来なかった皆が「きゃーきゃー」騒いで盛り上がっている事だろー。
「私も早く戻って来て双子ちゃんを眺めたいー」
ブロロロ……
「でも、安全運転でゆっくりとー」
◆◇◆◇◆◇
ペットショップに到着すると、やはり出入り口には前田さんが陣取っていたー。
「あ、前田さんー」
「いりゃあせー。 くぅちゃんを迎えに来たんですか?」
「うむー」
「柏原夫妻さんと双子ちゃんの送り迎えは終わったんですね。 早く帰りたいです」
「なはは。 可愛かったよー。 それじゃあまた後でー」
「はい。 仕事もう少し頑張りましょー」
と、言いながら、出入り口付近に突っ立っている前田さんであったー。 一体何の仕事をしているのかー。
お見合いコーナーへやって来た私は、そこで林さんとばったり遭遇ー。 どうやらリッキー君を迎えに来たようですー。
「あら、麻美ちゃん。 くぅちゃんのお迎え?」
「はいー。 くぅとリッキー君の子、楽しみですねー」
「ですね」
「何匹産まれるか判明したら、引き取る数を相談させて下さいー」
「そうですね。 また連絡お願いします」
「ちょっと待ってて下さいー。 車で来てるので送って行きますー」
「ありがとうございます。 では、出入り口の前田さんの前で待ってますね」
「はいー」
出入り口の前田さんはハチ公並みに有名な待ち合わせ場所なのかー?
急いでくぅを引き取り、すぐに出入り口の前田さんの所へ戻る。
「林さん、お待たせしましたー。 前田さんも待ち合わせシンボルのお仕事ご苦労様ですー」
「ま、待ち合わせシンボル? 何の事でしょう?」
「なはは。 気にしない気にしないー。 じゃあ、私は先に帰ってるー」
「はい」
「林さん、リッキー君、行きますぞー」
「お願いします」
「わん!」
「わふっ」
くぅとリッキー君、また一段と仲良くなったかー?
車を走らせて、まずは林さんとリッキー君を家まで送り、その後で「皆の家」へ戻った。
「ただいまー」
「わふっ!」
「あ、麻美ちゃんにくぅちゃんお帰りだよ」
「美希ちゃんと真希ちゃんはー?」
「わふー?」
「ベッドで寝てるわよ」
リビングの一箇所に人が集まっているのが見える。 多分、あの中心に双子ちゃんが居るのだろう。 私もくぅを抱っこしながら双子ちゃんを覗き込む。
「わふ?」
「なはは。 くぅがペットショップに居る間に、神崎先輩が産んだ子供だぞー」
「わふ」
「仲良くしてあげてちょ」
「わふ!」
真希ちゃんと美希ちゃんはそれぞれベッドの上でボーっと寝転がっている。 たまにグズったりするのが全く同じタイミングなのが、実に双子っぽいー。 明後日には他の妊婦組さんも出産前の入院を始め、来月には赤ちゃんが一杯増える事だろう。 更に賑やかになるなー。
くぅもおめでた!
「奈々美よ。 くぅも妊婦仲間ね」
「ベビーラッシュだね」




