第2253話 双子の姉妹
紗希の陣痛が始まったらしい。
☆夕也視点☆
紗希ちゃんが入院してから一週間経った10月31日の昼過ぎに、お見舞いに行っていた青砥さん、麻美ちゃん、希望から連絡が入った。
「紗希ちゃん、陣痛始まったって」
「らしいですわね」
「うー。 私も行ってあげたいけど、このお腹で動き回るのはねぇ」
「ここで無事に出産が終わるのを祈るしかないですわね」
「初産が双子とか、時間かかりそうね」
「それがそうでも無いんだって。 むしろ一人より早くなる事もあるみたいだよ」
「へぇ」
「それに、双子は普通より早産になる確率が高かったらしいけど、紗希ちゃんは通常と変わらなかったね」
「そうなのね」
難しい事はわからないのだがそういう事らしい。 亜美曰く、出産は15時間程かかるらしい。 とんでもない長時間痛みに耐えないといけないという事に俺は少々ビビってしまった。 女性って強いんだな……。
「何はともあれ、出産が終わるのは夜中から朝方にかけてです。 私達はいつも通りでいる事しか出来ませんね」
と、前田さん。 皆も「うん」と、小さく頷くのだった。 ちなみに現在病院で付き添っている希望、麻美ちゃん、青砥さんは、心配ではあるが帰ってくるらしい。 まあ、今から半日かかるわけだからな。 希望と青砥さんに関しては明日仕事だし仕方ない。
「旦那は産まれるまで病院に居るつもりなんだろうか?」
「明日は休むんじゃないかな?」
「なるほどな」
「宏太は私の出産の時、休んで付き添ってくれるわけ?」
「お、おう。 当たり前だ」
「ふむ。 よろしい」
何か凄い圧を感じたが……。 俺も今から、長時間付き添う覚悟をしておかないとな。
◆◇◆◇◆◇
翌日11月1日の月曜日。 6時頃に目を覚ました俺は、スマホを見ながらリビングへ向かった。
「まだ報告が無い……のか?」
グループチャットを見ると、まだ祝福ムードという感じではなさそうだ。 亜美や希望の祈るような発言が残っている。
リビングに入ると、既に結構な人数が起きてきており、ソファーに座ってスマホを凝視していた。
「ど、どうなってる?」
「あ、夕ちゃんおはよう」
「一人目の出産がちょっと時間かかってるみたいですわ……」
「そ、そうなのか」
まだ一人目も産まれていないらしい。
「はぅ……神様ー……」
「大丈夫さ。 紗希は体力あるし、赤ちゃんだって長時間の出産に耐えるさ」
「うんうん」
それから更に1時間程が経過した頃。 ようやく柏原君からの一報が入った。
「今、一人目が産まれたって!」
「元気に泣いてるみたいね」
「良かったよぅ……あと一人だよね?」
「ああ」
「双子の二人目は割と早く出てくるって話だよ」
「そうなのー?」
「うん」
という亜美の言う通り、二人目は更にその一時間後には産まれたという報告が来たのであった。
◆◇◆◇◆◇
「母子共に健康なんだって!」
「さすが紗希と紗希の子供だぜ!」
「一安心ですわね」
出産が無事に終わった事がわかると、俺達は一気に脱力した。 先に仕事へ向かった希望、青砥さん、宏太に前田さん、神山さんも、グループチャットに反応を残している。 更に、東京組のメンバーからも祝福のメッセージが届いているようだ。
「どんな子かな?」
「早く見てみたいですわね」
「柏原君は言うには、紗希ちゃんに似た切れ長な目の双子ちゃんらしいが」
「だとしたら二人とも美人になりますね」
「なはは!」
柏原君と紗希ちゃんの双子ちゃん。 俺も早く見てみたいな。 早ければ来週には退院可能という事らしいが、それまでに機会があればビデオ通話で見られるかもしれないとの事だ。
「今、紗希ちゃんはぐっすり寝ちゃってるみたいだねぇ」
「長時間の出産に耐えて疲れたんでしょ」
「よく頑張った! 感動した!」
遥ちゃんはどっかで聞いたようなセリフを言いながら涙を流していた。 そして、そんな妊婦組の皆は「次は私達だ」と、気を引き締めるのだった。
◆◇◆◇◆◇
更に翌日の火曜日。 紗希ちゃんから皆に対してビデオ通話がかかってきた。 どうやら今、双子ちゃんに母乳を上げ終えたところで、赤ちゃんが病室に来ているとの事だ。 俺達はリビングのモニターに視線を移す。
「きゃほほ。 皆、お待たせー」
「おお、紗希ちゃん!」
「元気そうね」
「ぐっすり寝たからね。 さて、ではでは」
「ちょっと待ちなさい紗希。 今から録画するから。 希望ちゃんとかの仕事組が見られないの、可哀想だし」
奈央ちゃんが慌てて録画ボタンを押す。 そんな機能あるのかよ……。
「良いわよ」
「ではでは。 まずはこの子が長女の真希。 可愛いっしょ」
「きゃー!」
「可愛いー!」
「本当に神崎先輩の目に似てますね」
「なはは! 将来は美人さんだー!」
「きゃはは。 でしょー? それで、この子が次女の美希よ」
真希ちゃんの後に映し出された次女の美希ちゃんを見た俺達だが。
「ん……?」
「えっと……」
「いや、まあそうでしょうけど……」
皆、先程のように「きゃーきゃー」と騒ぐというよりは、困惑したような声を上げた。 その理由は?
「真希ちゃんと美希ちゃん、同時に映してもらえるかな?」
「ん? ほい」
「……」
「ん……んん……」
皆して目を細めて二人の赤ちゃんを見る。 そして一斉に声を上げるのだった。
「同じ顔!」
一卵性の双子なのだから多分そうなんだろうとは思っていたが、本当に見分けがつかないぐらい同じ顔が並んでいる。
「さ、紗希ちゃんは見分けつくの?」
「え? つくわよ?」
母親である紗希ちゃんには見分けがついているらしい。 さすがだなあ。
「親にはわかるもんなんだねぇ」
「わ、私達は間違えそうね……」
「きゃはは。 あんた達も早く見分けられるようになりたまえ。 ちなみに、裕樹もまだよくわからないって」
「なはは! 親なのにー」
「そうそう。 8日に退院するから、麻美、お迎えお願い出来るかしら?」
「任せて下さいー! 超安全運転をしますー!」
「8日にはその子達に会えるんだね」
「ええ。 まあ先にお互いの両親に会わせるから後回しになるけど」
「仕方ないですわね」
「さすがにね」
「なはは。 私は一足先に会えるー! やったー!」
「ズルいで麻美!」
「なははー」
車を出す麻美ちゃんは、俺達より先に双子に会えるようだ。 こうなると巻き起こるのが「私も連れて行け」争いである。 妊婦組まで名乗りを上げる始末。 希望や青砥さんが帰って来てからジャンケン大会を行い、勝者2名が同行出来るらしい。
「ちょっと待っただよ! 麻美ちゃんの車だと6人乗りだけど、私の車を貸せば8人乗りだよ。 つまり、あと2人乗れるよ」
ちなみに柏原君は当確だ。
「そして! 車を貸し出す私も当然……」
「亜美ちゃんはジャンケン大会に参加してもらいますわよー」
「そ、そんなあ……」
亜美の作戦は上手くいかなかったらしい。 哀れな。
紗希が双子を無事に出産!
「希望です! 良かったよぅ!」
「早く会いたいねぇ!」




