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第2219話 犬バレーボール

朝の散歩に来ている渚とその他一行。

 ☆渚視点☆


 8月21日の木曜日や。 朝早くにアテナとエリーの散歩に来とるんやけど、麻美とくぅ、今井先輩とマロン、メロンに佐々木先輩と前田先輩にリンとライまで来とる。


「朝から賑やかですね」

「天堂さんとハルトとカインも遅れて来るみたいー」

「まあ、この時間か夕方ぐらいしか、この季節は厳しいからなあ」

「ですね」

「ところで麻美ちゃん。 それは何だ?」

「フリスビーだぞ夕也兄ぃー。 咥えるかー?」

「咥えるわけないが……」

「なはは」

「くぅにフリスビー投げてキャッチするやつやらせるんか?」

「うむ。 昨日から教えてるー」


 どうやら麻美、くぅにフリスビーキャッチを覚えさせるつもりみたいやな。 まあ、犬て芸覚えたりするしな。 アテナはお座りとお手ぐらいしか覚えへんかったけど。


「エリーも何か覚えるか?」

「わん?」

「なはは! エリーもフリスビーキャッチするかー?」

「別に他のでもええやろ」

「ポメラニアンは口があまり大きく無いからなあ。 フリスビーキャッチは向かないかもしれん」

「そうなのー? 芸をするにも向き不向きがあるのかー」

「ま、そういうこった」


 ふむ。 それも踏まえて何を覚えさせるか考えてみよか。


「公園に到着ー。 さあくぅ、やるぞー」

「わふ!」

「お手並み拝見やな」


 麻美はフリスビーをくぅによく見せてから、ゆっくりと投げる。 距離にして5メートルくらいやろか。 くぅもゆっくりと走りながらフリスビーを追いかけ、器用に口でキャッチしよった。


「よしよしー! 良いぞくぅー! これぐらいの距離はもうよゆーかー」

「わふ! はっはっ」

「あれからかなり練習したんだな。 かなり上達したじゃないか」

「うむー。 これならもう少し遠くに投げても大丈夫ー?」

「だなあ。 ちょっと遠くまで投げてみたらどうだ?」

「うむ! やってみるー! くぅ、ちょっと遠くまで投げるぞー」

「わふ!」

  

 ふむ。 くぅのやつ中々やりよるな。 エリーにはさすがにこれは無理そうやな。 


「エリーにはどないな芸がええやろな」

「ポメラニアンだとやっぱり普通のお座りとかお手じゃないか?」

「やっぱりそないな感じになりますかね?」

「だなあ」

「わん! わん!」

「ん? 何やエリー?」

「わん!」

「なは、どうしたエリー? エリーも挑戦するかー?」

「わん!」


 どうやらエリーもフリスビーキャッチにチャレンジするつもりらしい。 佐々木先輩はポメラニアンには不向きや言うてはったけど、そやからって出来へんわけやない。


「麻美、投げたってくれるか?」

「りょーかーい。 3メートルくらいのとこにイクゾー」


 麻美がフリスビーを高めに投げる。 距離はそない出てへんな。 エリーはフリスビーを追いかけてジャンプし、フリスビーを口に咥えた。


「おう。 やるもんだな」

「なはは! エリーも出来るー」

「エリー凄いやん!」

「わん!」


 ちょっと胸を張って誇らしげに見せるエリー。 こら私もフリスビー買うて教えたらなあかんな。 打倒くぅや!


「くぅ、負けるなー」

「わふ!」

「なあ宏太。 ちなみに猫は出来ないのか?」

「猫こそ無理だろうな……いくらマロンが凄くてもなあ」

「みゃー……」


 さすがのマロンも「あれは無理」と言っとるみたいや。



 ◆◇◆◇◆◇



 しばらく公園でのんびりしとると、天堂さんがハルトとカインを連れてやって来たで。


「ふう。 やっと追いついた……。 って、何やら盛り上がってます?」

「おー、天堂さん来たかー」

「フリスビーキャッチをくぅとエリーに仕込んでるんや」

「フリスビーですか? ポメラニアンでも出来るんですか?」

「エリーは出来るみたいなんだよなあ」

「おお、じゃあハルトとカインにも出来たりするんでしょうか?」

「まあ、同種でしかも血縁のエリーに出来るなら出来るんじゃないか?」

「教えるかー?」

「うーん。 でも、まあ別に良いですね。 ハルトとカインは犬バレーが出来ますから」

「犬バレー……やと……?」

「なんだそれはー!?」


 まさか犬がバレーボールしよるんか? いやいやそれは無理やろ。


「バレーって言っても、本当にバレーボールをするわけじゃないですよ。 よし、ハルト、カイン! ボール遊びするよ」

「はふはふ」

「ふんふん」


 天堂さんが柔らかい大きめのゴムボール取り出し、それを見たハルトとカインは尻尾を振りながらボールをみつめている。


「いくよ! それ!」


 天堂さんがボールを高く投げ上げると、ハルトがボールを追いかけて……。


「はふっ!」


 トンッ……


「おお?!」

「なぬー?!」


 ハルトは器用に頭を使ってボールをトスし、カインの方にボールを上げる。 そしてカインも頭を使い、ヘディングの要領でハルトにボールを返す。

 バレーボールで言うところのトストスやな。


「やるなあ」

「いつの間にこんな芸をー?」

「ハルトは前から私とやってたんですけど、カインにも教えたら二匹でも出来るように」

「ほう。 いや大したもんだ」

「くぅより凄いー」

「やなあ」


 二匹は親子やし息もぴったりやな。


「これをくぅとエリーもマスター出来れば四匹で出来るー?」

「そら出来るやろけど」

「くぅー! まずはフリスビーを完璧にマスターするぞー!」

「わふ!」

「そやな。 エリーもまずはフリスビーや!」

「わん!」

「何か急に芸を覚える競争が始まったな……って、マロンとメロンがいねぇ」

「マロンちゃん達ならその……あっちです」


 前田さんが指差す方を見るとそこには……。


「みゃっ」

「なーっ」

「はふ!」

「ふん!」


 犬バレーに混じるマロンとメロンの姿があった。 一体どないなってんねん、あの猫達は。


「夕也兄ぃ! いつの間に教えたのかー!?」

「いや、教えてないが……多分、見ただけで出来るようになったんだろ」

「どんな天才猫だよこいつら」

「た、確かに」


 マロンの血筋は何やもうめちゃくちゃやな。 中でもマロンの賢さは昔から異常やね。 もう猫やないやろあれは。


 朝からとんでもないもん見たなあ……。



 ◆◇◆◇◆◇



「おお、猫バスケの次は犬猫バレー? 凄いねぇマロン、メロン。 今度私にも見せてねぇ」

「みゃ!」

「なー!」


 散歩から帰ってきた私達は、早速皆にも公園で見た事を話した。 清水先輩は特に驚いた様子も無く二匹を褒めとった。 もうマロン達の異常な賢さを受け入れとるな。


「マロンとか、もう何でも出来るんじゃないの?」

「いやいや。 さすがにマロンにも限界はあるよ。 猫は猫でしかないからね」

「まあ、そうだなあ。 猫としての限界はあるだろうが、猫に出来る事は大抵出来るだろうよ」


 佐々木先輩もそれに関してはそう思うらしい。 マロンはほんまに飼い主の清水先輩みたいなスペックしとるんやな。 猫版清水先輩って感じや。 ペットは飼い主に似るんやろか? アテナとエリーはどうなんやろなあ?

新しい目標が出来たようだ。


「遥だ。 器用な犬猫だよなあ……」

「人間の子供でも難しいよね、あれ」

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