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第2214話 宏太とペット

休みの日朝はリンと散歩の宏太。

 ☆宏太視点☆


 日曜日という事で今日は一日休みなわけだ。 朝から愛犬リンの散歩に出て来ている。 何故か麻美や夕也、月島姉妹に前田さんもついて来ているが。 まあそれぞれペット達の散歩なのはわかるが、何もこんなにぞろぞろと来なくても良くないか?


「夏はやっぱりこの時間の散歩に限るー」

「昼は暑すぎるからな」

「そやねんな。 サリーも昼に散歩連れて行けて言いよるしけど、大概これくらいの時間か夕方以降にしとるわ」


 どうやら昼間は暑いからだそうだ。 まあ確かにそれは言えているのだが。 勿論、自分が暑いから嫌なわけじゃない。 こいつらペット達の為に、ちょっとでも涼しい時間帯を選ぶのだ。


「お前ら、ちゃんとわかってそんな事言ってんのか? おぉん?」

「何がだ?」

「わかってねぇのか。 確かに夏の昼間に散歩なんて、人間様も暑くて堪らないがな、犬にとってはもっとなんだ。 また、猫もだが」


 俺達のペットの中には、散歩が好きな猫までいる。 マロンとメロンだ。 最初は亜美ちゃんがマロンを抱っこしながら散歩していたらしいが、夕也が一度マロンを犬のように散歩させた事がきっかけでこうなったらしい。


「そらあ、まあ。 犬猫て夏でも毛皮着とるんやもんな。 そら暑かろうて」

「ふっ、月島もまだまだだな……」

「何やの……」

「宏太兄ぃは何が言いたいんだー!」

「お前ら、真夏の真っ昼間のアスファルトを裸足で歩けるかね?」

「そら、無茶苦茶足の裏には熱なるやん」

「こいつらは裸足だぞ? 真夏の太陽で熱されたアスファルトの上を裸足で歩かせられるか? 肉球をやけどさせる飼い主だって少なくない」

「な、なるほどー。 確かにそれは大変だー」

「そないな事、考えたこもありませんでしたね」

「ほんまやな」

「それにだ、犬猫は四足歩行でアスファルトと身体全体の距離も無茶苦茶に近い。 つまり、アスファルトから発せられる熱を全身で直に感じるんだ。 俺達が感じる暑さとは比にならんぞ」

「下手したら熱中症になるんですよ。 だから、夏はこうやって涼しい時間に散歩させるんです」


 と、前田さんが補足してくれた。 皆は「こいつらの事、そんな風に考えて一緒に散歩した事無かった」と、反省するのだった。


「飼い主は常にペットの健康に気を配ってやらなきゃならん。 それは勿論、人間に対してもだがな。 特に小さな子供」

「夕也兄ぃ、わかったかー!」

「お、おう」

「お前もだ麻美」

「なは」

「さすがはペットショップ店員やな」

「まあな」



 ◆◇◆◇◆◇



 散歩から帰ってきた俺は、リビングで昼飯までの間の時間を過ごす。 まあ、ただダラダラ過ごしているわけじゃないが。


「ふむ。 リクガメのリクも健康状態は良好だな」

「良かったです」

「大切にされてるんだなあ、お前。 それにマリアにかなり懐いてる」

「毎日話しかけながらご飯を上げたりしてます」

「そういう細かいとこが大事なんだ」


 現在はマリアの飼っているヘルマンリクガメの健康状態をチェックしているところだ。 こいつの健康状態を見れるのなんか、俺か前田さんだけだからな。


「良いご主人様に飼われて幸せ者だな、お前は」


 勿論、俺の話している言葉なんか理解しているわけもないので当然無視されるわけだが。


「西條先輩がくれたこの空調ケースが本当に助かります」

「だな。 リクガメは環境にうるさいから飼うのが難しいんだが、こいつのおかげでかなり飼育環境を整えやすい。 うちの店でも導入してるんだ」

「ワハハ。 ウチのピッピもたすかっとるデ」

「だな。 西條グループに感謝だ」

「おほほほ」

「ダイヤの健康状態はどうでしょう?」

「ダイヤの方も良好だ。 問題無し」

「ほっ」

「あんた、獣医にもなれるんじゃないの?」


 と、黙って見ていた奈々美が言い出す。 うちのペットショップはペット関係の総合施設になっており、獣医施設も入っている。


「なろうと思って簡単になれるもんじゃないんだよ、あれは」

「そうなの?」

「当たり前だ。 普通の医者になる事を考えれば想像つくだろ?」

「ああ、確かに」

「奈々ちゃん。 獣医師になるには獣医学科のある大学を卒業後に国家試験に合格しなきゃダメなんだよ。 獣医師になろうっていう人は、高校からそういう大学に進学して目指すんだよ。 今から宏ちゃんが獣医師になるのはかなり厳しいよ。 理系の成績ダメだし」

「最後わざわざ刺さなくて良いだろ……。 でもまあ、亜美ちゃんの言う通りだ」

「なるほど」

「結構大変なんですね……」

「宏ちゃん君は高校時代に獣医目指そうとは思わなかったの?」


 今度は三山夫人の宮下が質問してくる。


「漠然と動物に携われる仕事に就きたいってぐらいしか考えてなかったなぁ。 それに、俺の成績だと単純に進学は怪しかったしな」

「うわはは! 宏ちゃん君はバカだからねー!」

「美智香姉は人の事言えないってば……」


 新田には呆れられている。 話に聞くと、宮下も相当頭が悪いらしい。


「バスケ選手になる事は考えへんかったん?」


 更に月島も質問を被せてくる。 まあ、やっぱりその質問は来るよな。


「ふむ。 それに関しては考えてなかったな。 バスケは高校までに決めてたからよ。 バスケの方は夕也に全部任せたからな」

「勿体無いよなあ……今でもストバスで遊んだりしてんだろ?」

「ストバスはプロと違って、好きな時に好きなように楽しめるから良いんだよ」

「まあ、成績とか気にしなくて良いものね」


 神崎が「プロになると色々あるもんねー」と続ける。


「バスケが嫌いになったわけじゃないからな。 ボールとコートとメンツさえいれば、ストバスで十分だ」

「ちなみに、西條グランツは佐々木君のポストは常に空けてありますわよー」

「だからやらねーっつってんの!」


 全くこのお嬢様は話を聞いてないのか?


「おほほほ」

「ちなみに、西條グランツは去年の成績どうなんだ?」

「もぉちろんリーグトップですわよー! 神戸のチームが中々強敵みたいだけど」

「ああ……佐田さんか」


 それでもリーグトップになれてるのはさすがだなあ。


「西條先輩、本当に何にでも手を出しますよね」


 マリアが言うと西條は「面白そうだと思ったらすぐに行動。 それが私のモットー」とか意味のわからん事を言い出した。 まあ、西條ぐらいの財力や権力があれば、大抵の事は出来てしまうんだろうがな。


「今は何か変な事に手を出したりしてへんの?」

「無いですわね。 馬主になって競走馬を走らせてるぐらいかしら?」

「それも無茶苦茶やな……」

「おほほ。 そうだわ。 ミアさんの実家の仔馬とかも買い取ろうかしら」

「はわわ……」


 西條は自由で良いなあ。 とは思うが、こんなんでも世界有数の大手グループ、西條グループの次期総帥だ。 いずれは自由な時間も無くなったりするのかもしれないと考えると、今の内にやりたい事をやって楽しむってのはアリなのかもしれないな。


「羨ましい限りだぜまったく」


この道を選んで後悔は無い宏太であった。


「奈々美よ。 バスケ選手やったって、現役でいられる時間は限りあるしね」

「それは私達にも言えるよねぇ」

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