第2208話 親子チーム
何やら退屈そうな紗希だが?
☆紗希視点☆
別荘生活にも慣れてきた私達。 まあ、私達妊婦組はそもそも何もしてないけどさ。 台所に行っても基本は見てるだけで、たまにアドバイスするくらいなもの。 ちょっと退屈してるのよね。 そんな時である。
「おりょ。 風花ちゃんからダイレクトメッセージが」
「風花ちゃんって紗希がママやってるVドルでしたわよね?」
「ええ。 コラボのお誘いですって。 急ですが今夜20時からの配信でコラボお願いしますだって」
「ふーん。 いいじゃない」
「部屋のパソコンで参加しようかしら」
「あら、別にここで良くない?」
「あんた達が騒いで大変でしょうが……」
「おほほ。 それもそうですわね」
皆が静かに出来るわけないんだから。
◆◇◆◇◆◇
てなわけで、夕飯を食べた後でコラボ配信に参加する準備をして待機。 開始10分前に風花ちゃんから呼ばれでチャットに入る。
「ママ久しぶり!」
「久しぶりね風花ちゃん。 って言っても、アーカイブや切り抜きを全部見てる私からしたら毎日見てる顔だけど」
「全部見てるの?!」
「もちろん」
「あ、ありがとうー!」
「いやいや。 で、今日のコラボって祭火つづみちゃんと一緒だっけ?」
「はい。 それともう一人……あ、今ちょうど二人共来ました」
「うん?」
一人はつづみちゃんでもう一人は葵みそら……って。
「つづみちゃんのママ?」
「はい」
「こんばんは、初めまして紗希ママさん」
「は、初めまして!」
びっくりしたー。 またVドルの誰かかと思ってたらイラストレーターでつづみちゃんの絵師さんを担当してるみそらママさんだとは。
「今日はこの四人でコラボします」
「りょ!」
「では配信始めるので一旦ミュートで」
風花ちゃんが配信を始めたので、私達は声が配信に乗らないようにマイクをミュートに。 風花ちゃんから今日の配信の流れが説明された後、順番にコラボ相手を呼んでいく。
「まずは紗希ママ! 久しぶりの登場ですね」
「きゃはは! こんばんはー! マイク音どう?」
「良さそうかな? 紗希ママ、妊娠中なのにコラボに来てくれてありがとう」
「いやいや。 実は今暇しててさー。 家事とかやらせてもらえないのよ」
「あ、そうなんだ? 今日はよろしく! 次はつづみちゃん!」
「おーっす! ちぢみじゃないよつづみだよのつづみっス!」
「何その変な挨拶」
「変?!」
いきなり風花ちゃんに刺されてショックのつづみちゃん。
「そして最後のコラボ相手は、葵みそらママ!」
「ドレミじゃないよミソラだよのみそらです」
「ノリ良っ!?」
「きゃはは」
「みそらママも久しぶりっス」
「久しぶりつづみ」
「というわけで、今日はこの四人でやっていきます」
「そういえば何するか全然聞いてないっス」
「私もよん?」
「今日はあえて教えてません! 予習とかされたら面白くないので」
「予習?」
「はい。 今日の配信内容は! 親子タッグ企画! 謎解き脱出ゲーム!」
「謎解き?」
「脱出ゲーム?」
脱出ゲームって、密室に閉じ込められてるのを、部屋に散りばめられた謎を解いて鍵を開けて脱出するあれよね?
「今日は、親子チームで脱出ゲームに挑戦します。 実際にゲームをプレイするのは私とつづみちゃん。 ママ達は自分の娘と一緒に頭を使って謎解きをしてもらいます」
「なるほどね」
「わ、私バカなんス!」
「あはは……ママに任せて……って言える程私も賢いわけじゃないかな」
「きゃはは」
「つづみちゃんにはURLを送ったからページを開いてね」
「おっス」
「で、プレイ中はお互いのチームの声が聞こえないように、別々のチャットルームに入る。 鳩行為はOKなのと、煽る為に乱入チャットはあり」
なるほどなるほど。 面白いじゃない。
「先にクリアしたチームが勝利で、負けた方は罰ゲームあるからよろしく」
「無理っス! 絶対勝てないっス!」
「きゃはは」
「じゃあ、始めるよ! せーの! スタート!」
「うわーっス! ママ頼むっスー!」
という情けない叫びと共にチャットルームを後にしたつづみちゃん。 私は風花ちゃんに画面共有してもらい、ゲーム画面を見させてもらう。
「見える?」
「だいじょぶよ。 なるほど、この部屋から脱出すりゃ良いのね」
「だね。 一応扉を触ってみるけど……」
「当然開かないわね」
まあそれで出られたら苦労しないわよね。 さて、鍵を開ける為には謎を解かないといけないわけね。
「あからさまな宝箱があるよママ」
「調べてみましょ」
「うん」
風花ちゃんがゲームを操作して宝箱を調べる。 すると、画面が切り替わり宝箱のアップ画面が出てきた。
「当然のようにロックされてます」
「何か⬜︎が一杯並んでるわね? 調べられる?」
「はい。 あ、キーボード入力画面になりました」
「という事は、この⬜︎に何か文字を入れれば宝箱が開くって事か」
「その6文字ですね」
「なるほどなるほど。 部屋にある謎を解いたら何かわかるのかしら?」
「多分?」
「ほいじゃ謎解きしてこうか」
「了解です! まずはこれ」
机に置いてある紙を調べる風花ちゃん。 紙には何やら文字が書いてあるようね。
「『がががががががががが らららら』」ですかね? ⬜︎が5個あるので、これの答えは5文字かな?」
「『が』の主張激しいわね」
「うーん」
私と風花ちゃんで頭を捻る。 「が」が10に「ら」が4個かしら? がじゅう……がとー…しょこら? 何か違うわね……。 じゅうが……とうが……!?
「とうがらし!」
「おお? なるほど! 『が』が10個でとう(十)が! 『ら』が4個でらし(四)で『とうがらし』! ママ天才!」
「きゃはは! で、紙には他に何が書いてる?」
「問題番号4としか」
「それだけ?」
「えーと、「う」が入る⬜︎だけ赤枠になってます」
「じゃあ、宝箱の⬜︎の4番目に『う』が入るんじゃない?」
「なるほど! 天才過ぎて怖い!」
「いやいや」
たまたま解けただけなんだけど。
「よーし、次行っちゃお」
と、風花ちゃんと二人で謎解きを進めていき、宝箱を開ける為の文字を集めていく。 3文字目がわかった時点で風花ちゃんがつづみちゃんのチャットルームに乱入し、つづみちゃんを煽る。
「ぐぬぬ! みそらママやばい!」
「やばいわねー」
「ははは! まあ、ゆっくり謎解きしたまえ! では!」
煽りまくって帰ってくる風花ちゃん。 た、楽しそうね。
「3文字集まったけど、何かなんとなくわからない?」
「あとの3文字が何かですか?」
「うん」
「まあ、わかるかもだけどとりあえず全部謎解きしましょう」
「そうねー」
その後、残りの問題も何とかかんとか解いて6文字全てを揃えた。 ここでまたつづみちゃんを煽りにいく風花ちゃん。 あちらはまだ3文字だそうだ。 こりゃ圧勝ね。
「罰ゲーム回避!」
「じゃあ宝箱開けましょ」
「はい。 宝箱を開ける鍵は『ごくろうさん』と」
ガチャ
「開いたわね」
「本当に苦労したよー。 鍵をゲットしたので脱出!」
風花ちゃんがドアの鍵を開けて部屋を脱出したのでゲームクリアとなる。 いやいや、楽しかったわよ。
「ぐぬー。 負けました」
「わはは! じゃあつづみちゃんへの罰ゲームはー! ホラーゲーム配信!」
「うぎゃー!」
「もちろんみそらママの見守り付き」
「わ、私も?」
「きゃはは! 頑張ってください!」
か、勝てて良かった。 別にホラーゲーム自体は何ともないけど風花ちゃんはホラーダメみたいだし。
「はー楽しかった。 また集まって遊びましょう!」
「そうね。 その頃には赤ちゃん産まれてるかも」
「あ、そっか!」
「妊婦さんでしたっスもんね」
「そうなんですか? 頑張ってくださいね」
「はい!」
楽しいコラボ配信も終わり、しばらく皆で雑談チャットを楽しんだわ。 みそらママ、まさかの一児の母だったなんて……知らなかったわー。
次のコラボ配信、楽しみに待つ事にしましょ。
Vドルの娘とゲームを楽しんだ紗希であった。
「奈々美よ。 紗希は配信者としてもやってけそうね?」
「企業に属しちゃうと禁止用語連発してクビになるかもねぇ!」




