第2204話 別荘生活開始
別荘のリビングで過ごす夕也達。
☆夕也視点☆
散歩から帰ってきた俺達は、リビングで過ごす事に。 やたらに広いリビングだが、既に俺達以外に多くのメンバーが寛いでいた。
「皆ー! あっちに歩いて行くと××駅があったー! 歩いて10分くらいー」
「ほう」
「××駅ですか? 普段使わないから気付かなかったです」
「それなら通勤時間はあんまり変わらないな」
「ぅん」
「三山はどうだ?」
「さすがに遠くはなったが、まあ何とかなる」
「希望ちゃんは何日に行くの?」
「10日だよぅ」
「じゃあその日はお弁当だね」
「だ、大丈夫だよぅ! 自分で作るよぅ!」
「ええ……私のお弁当嫌なの? しょぼん」
「ち、違うよ?! 妊婦さんなんだから無理しないでって話だよぅ?!」
「そうなの? あぅ、良かった……」
本当に仲の良い義姉妹だなぁ。
「10日は私が車で送り迎えするー!」
「じゃあお願いします」
「うむ!」
麻美ちゃんは希望の為に車を出すとの事。 こちらも仲が良い。 麻美ちゃんは誰とでも仲良くなる子だが。
「さて。 皆集まってますわね」
「うん。 全員いるねぇ」
パッと見ただけでわかるとか、亜美も奈央ちゃんもすげぇな。 俺は把握出来ないぞ。
「今から色々と決めたいと思います。 まあ、主に家事の担当ですわね。 買出しは例によって買出しシステムを使えるようにしてあるので必要無いですわ」
「あのシステム便利ね」
「今日の夕飯分は今朝届いて冷蔵保管してあるみたいだよ。 明日の分ももう発注済みだよ」
「迅速ですわね。 さすが亜美ちゃん。 では役割分担ですけど……掃除洗濯係は麻美、渚、星野さん、天堂さん、キャミィさん、それと今井君」
「?!」
俺が掃除洗濯係に任命された?! 初ではないか? 遂に俺も皆の役に立てる日が来たようだ。
「夕也、皆の足を引っ張るなよ?」
「ふん。 誰に言ってるんだ? 洗濯はもちろん掃除も任せろ!」
「今井君、日頃の特訓の成果を期待してますわよ」
「ふむ」
「私が監督してるから大丈夫だよ」
と、亜美はやはり監督につくらしい。
「台所係は希望ちゃん、月島さん、宮下さん、前田さん、マリア、冴木さん、ミアさんにお願いしますわね。 監督は紗希」
「りょ!」
台所係もかなりの人数が割かれているな。 まあ、この人数の食事を毎日三食作るとなると仕方ないな。
「妊婦組は今回ゆっくりさせてもらいましょう」
「だねぇ」
「後、仕事がある組は暇だったら好きな係を手伝ってちょうだい。 基本的にはお仕事優先で良いですわ」
「おう」
「わかりました」
「分担は以上!」
「なはは! 夕也兄ぃ! 早速別荘の間取りを見て掃除のシミュレーションをするぞー」
「だな」
「そやな。 掃除する場所はしっかり確認しとかな」
「ワハハ!」
「では別荘内を見て回りますか」
「ですね」
掃除洗濯係の俺達は、リビングを出て別荘内を見て回る事にした。 各寝室には掃除用具が配備されており、寝室の掃除自体は部屋主がする事になるとの事。 俺達が掃除するのは共用スペースという事になる。
「ここが台所ー」
「広いな」
「ですね」
台所からして無茶苦茶に広い。 まあ収容人数70名の屋敷だ。 それだけの食事を作るとなると自然と台所も広くなるだろう。
「これは日々の掃除大変だな」
「『皆の家』に比べれば随分マシですよ」
「ですです」
「なはは! さすがはあの屋敷の住人ー」
天堂さんと星野さん。 何と頼もしい事か。
「次は脱衣所ですかね」
「やねー」
というわけで脱衣所へ向かう。 脱衣所の扉を開けるとやはりめちゃくちゃに広い部屋が姿を現す。 ここも大変そうだなあ。
「ふむふむ。 ここに洗濯機が8台ありますね」
「8台もあるのか?!」
「収容人数70人ですし」
「お、おう」
「でも、私達の人数的には半分ぐらいの台数で足りますよ」
「そうだな」
洗濯は任せろと言いたいが、さすがにこの数を回すとなると一人では大変そうである。
「浴場も見ておきましょう」
「数日に一度は清掃した方が良いでしょうし」
「なはは。 浴場オープンー!」
ガラガラ!
麻美ちゃんが勢いよく浴場への扉を開けると、もう当然と言わんばかりに広いのであった。
「ワハハ! ひろいナ!」
「ここも一人で掃除は大変だな」
「この分だと、二人一組に分かれてチームで掃除するのが良さそうですね」
「そうやな」
「夕也兄ぃは私が面倒見るー!」
「頼むぜ麻美先生」
「なはは!」
「じゃあ私と星野さん、月島先輩とキャミィさんで」
「了解や」
「ラジャ!」
掃除チーム内で更にチームに分けるのであった。
◆◇◆◇◆◇
リビングに戻ってくると、在宅ワークの紗希ちゃんと小説執筆中の亜美、色々な案件を抱えていそうな奈央ちゃんの三人がノートパソコンで作業していた。 妊婦とはいえ仕事は疎かに出来ないようだ。
「三人とも鬼気迫るわね」
「特に亜美ちゃんなんかめちゃくちゃやで」
何故かダサジャージに鉢巻とかいう格好でパソコンと対面している亜美。 昔からそうだが形から入るのがこいつのクセなのだ。 これも何かそれっぽい格好をして締切間近の作家気分で執筆しているんだろう。
「紗希は伸び伸びしてんな」
「きゃはは。 私は好きな事してるだけだしね。 仕事とは思わないわ。 まあ、先輩にとんでもなく多忙な人が居るけど」
「多忙ってどれくらいなわけ?」
奈々美が軽い気持ちで訊ねると。
「たまに3日くらいは会社に泊まって仕事してるわよ? 朝私が出勤したらエナドリ缶が並んでる中、机に突っ伏して寝てる事もあるし」
「だ、大丈夫なのその人?」
「多分……」
中には凄い人もいるもんだな……。
「その人、好きでキャラクターデザインしとるんかいな?」
「嫌なら辞めてると思うわ。 何だかんだ名前の売れてる人だし」
「なは! もしや前話してた真昼花苗さんー?」
「そそ」
麻美ちゃんが知ってるようなキャラクターデザイナーって事は、何かのゲームのキャラデザなんだろう。 俺にはさっぱりわからんが。
「真昼花苗……あったよ。 グランドリームっていうゲームのシリーズのキャラデザで有名なんだね。 若いのに凄いねぇ」
「知らないゲームだな。 麻美ちゃん、どんなゲームだ?」
「まあよくあるファンタジー系RPGだよー。 キャラクターやモンスターのデザインが可愛くて人気のシリーズー。 7年前に1作目が出て去年4作目が出たー。 当然やったー」
「んん? 7年前って真昼さん18歳とか19よ? その頃からそのゲームのキャラデザやってたって事?」
「1作目から真昼花苗氏が担当してるー」
「って事は高卒で今の会社に入っていきなりそんな仕事したって事? やっぱり凄いわあの先輩……」
ふむ。 紗希ちゃんの話を聞いても凄さがわからないのだが、同業者にはわかるんだろう。
「さて。 仕事仕事」
「執筆執筆」
紗希ちゃんと亜美は思い出したかのように仕事を再開するのであった。 ちょっとは休めば良いのになあ。
役割分担も決まり別荘生活開始。
「亜美だよ。 環境が変わって新鮮だね」
「結構涼しいよぅ」




