第2203話 近辺を開拓
西條家の別荘へ移動中。
☆麻美視点☆
8月4日になり、西條先輩の別荘へ移動する事にー。 西條家の私有バスで移動するのだが、私と月島先輩はマイカーで、星野さんはマイバイクでバスについて行く形を取っているー。 ちなみに私のバイクと月島先輩のバイクは先に別荘の方へ送ってもらっているー。
ブロロロ……
「なはは。 くぅは大人しくて偉いなー」
「はっはっ」
くぅだけは私の車に乗りたがっていたので、助手席に乗せているー。 くぅは何度も私の車に乗っているので、もう完全に乗り慣れているのだ。 ちゃんとベルトもして大人しくお座りしているぞー。
「市内近郊って言ってたっけー?」
先日の西條先輩の話によると、市内近郊、駅近だけど辺りは山になっていて避暑地にもなるとの事。 交通の便も良く、最高の立地らしいー。 さすが西條先輩、別荘一つ取っても隙が無いー。
「くぅー。 着いたら早速散歩に出かけるかー?」
「わんっ! はふはふ」
ブルンブルンと尻尾を振るくぅ。 散歩という言葉に反応しているのだ。 くぅは散歩が大好きなのであるー。
ブロロロ……
「赤信号ー」
ブォンブォン……
「あ、星野さんだー」
「わふ」
すぐ横で星野さんのバイクが信号待ちー。 こうやって見ると、やはり様になっているー。 私もバイクに乗っている時はカッコよく見えているんだろうかー?
「この夏にまたツーリング行くぞー」
「わふ」
「くぅはバイクは難しいかなぁ?」
「くぅん……」
さすがにちょっと無理があると思われー。
◆◇◆◇◆◇
車で走る事約20分。 市内でも少し郊外にある山の麓へとやって来た私達ー。 西條先輩の別荘に到着だー。
「予想通りでかい屋敷だな……」
「結構涼しいわね」
「ええ。 意外と避暑地にもなってますわよ」
「ふむ。 お、ウチらのバイクもちゃんとガレージに停めてあるやん」
「なはは。 本当だー」
「問題無く運ばれているみたいですわね。 さ、屋敷内に入りましょ。 部屋割りを決めますわよ」
「はーい」
西條先輩の後に続いて別荘の中に入っていく。 当然玄関は広いー。 下駄箱も一杯あるー。 とりあえずスリッパに履き替えてリビングへと向かうー。
「リビングも広っ?!」
「そりゃ収容人数70人くらいの別荘だからねぇ」
「ちょっとした宿だな……」
「70人って……」
「ま、今更驚きもしないさ」
付き合いの長い私達は多少の事では驚かないー。 青砥先輩も旦那さんの井口先輩もかなり慣れたらしいー。
天堂さん、星野さんはまだちょっと慣れきってはいない様子。 時間の問題だろうけどー。
「基本的に部屋割りは夫婦でね。 それ以外は好きに組んでちょうだい」
「渚ー」
「わかっとるがな」
「そこはもう固定だな」
「親友ー」
「へいへい」
というわけで、適当な部屋の鍵と荷物を手にして寝室へ向かうー。 くぅとアテナ、エリー、レオンも私達の部屋へー。 タマはお姉ちゃんと宏太兄ぃの部屋に行くみたいだー。
◆◇◆◇◆◇
荷物も置いて一息ついたので、早速ご近所探検するぞー!
「くぅ、散歩行こー」
「わんっ!」
ブルンブルン!
尻尾を振るというよりはもう回しているというぐらいに動かしている。 よほど散歩が嬉しいらしいー。 ワンちゃんにとって散歩とはそんなに楽しいものなのだろうか?
「渚達は行かないのかー?」
「アテナ、エリー行くか?」
「わんっ!」
ブルンブルン!
そっちも尻尾回すのかー。
「じゃあ行くぞー」
「行くで」
ついでに夕也兄ぃや天堂さんにも声をかけてみよー。 マロンメロンやハルト君、カイン君が来るかもー。
「おん? 散歩か? マロン、メロン、どうするよ?」
「みゃ!」
「なー!」
散歩と聞いたマロンとメロンは、何処からかリードを持って来て夕也兄ぃの足元に擦り寄って来ているー。 やはり変な猫ー。
天堂さんにも声を掛けると、やはりハルト君とカイン君も散歩と聞いて尻尾を回していた。
◆◇◆◇◆◇
「とりあえずどっちへ行く?」
「こっちから別荘に来たからあっちに歩いてみよー」
「ですね」
「了解や」
てなわけで、来た方向とは逆側に向かって歩いていくー。 一体何があるのだろー。
「でも、市内にこんな場所があるなんてな」
「ほんま。 市内言うても私らがよう行ってる場所とは雰囲気大分違いますよね」
「でも駅近だって言ってたぞー」
「駅と言っても○○駅ではなくで××駅なのかも?」
「ああ、いつも降りてる駅のもう一つ隣か」
「なるほどー。 確かに普段降りないから知らないー」
「そやね」
「わふわふ」
「みゃみゃ」
くぅとマロンも普段散歩しない場所を散歩出来て満足そー。
「ハルトとカインも元気だな」
「はい。 お尻が可愛いです」
「ポメラニアンのチャームポイントやんな」
「ですね」
「尻尾がカールし上向いてるから、可愛いお尻が丸見えー」
「確かに丸見えだ」
「なはは。 あ、何か線路見えて来たー」
「本当ですね」
「いつも使ってる路線だな」
「そういえば、電車に乗ってる時あの大きな別荘が見えますね……」
「あまり気にした事あらへんかったけどなぁ。 確かに見えたような気ぃする」
「なはは。 信じられないぐらい広い敷地の屋敷が見えたら大体西條先輩絡みと思えー」
「それは言えてる」
更に散歩を続けているとー。
「おお。 駅だー。 やっぱり××駅だー」
「だな」
「なるほどやなー。 普段降りひんけどこないな場所やったんですね」
「ですね。 確かにここからなら皆さんの職場へのアクセスも大丈夫そうですね」
「うむ。 車を走らせればいつものショッピングモールとかにもよゆーで行けるー」
「やな」
「ボケねこショップにもな……」
「な、なはは」
希望姉と神崎先輩が行きたがるー。
「わふわふ」
「みゃみゃ」
「うん? どうした?」
「公園があるー」
「ああ、公園行きたいんやな」
「なるほど」
くぅ達は普段から散歩の終点に駅前公園で遊ぶから、今回もあの公園に反応しているようだ。 ここにいる間の散歩コースはこのルートで良さそうだー。
「じゃあちょっと公園で遊ばせるか」
「ですね」
「なははー。 くぅ、遊んでこいー」
「わふ!」
てけてけ……
公園に到着したのでペット達を遊ばせる。 マロンとメロンは猫なのに一緒になって遊んでいるぞー。
「本当に仲良く遊ぶよなあいつら」
「基本的に追いかけっこしてるだけですけどね」
「本人らは楽しそうやしええやん」
「なはは」
「猫ってあんな風に遊ぶものなんでしょうか?」
天堂さんが不思議そうに首を傾げる。 確かに猫っぽくないけどマロンとメロンはあれが普通なのだー。
「あいつらは自分を人間だと思ってる節があるんだ。 特にマロンは本当に頭が良くてなあ……人間の言葉を完璧に理解してるとしか思えないぞ」
「多分、ほんまに完璧に理解しとりますよあれ。 清水先輩の話に黙って耳傾けとるし……」
「だよなあ」
マロンの賢さは猫のレベルを超えていると思われるー。 亜美姉に似てると言えば納得かー。
さて、別荘に帰ったら何しよーかなー。
近辺を散策し、散歩コースを開拓!
「遥だ。 市内にこんな場所がねー。 知らなかった」
「私もこの辺は来ないから知らないねぇ」




