表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/2236

第20話 奈々美と宏太の肝試し

奈々美は宏太と肝試しの方へ参加していた。

宏太との関係は進展するのか?


 ☆奈々美視点☆


 何とか、宏太を肝試しに連れ出す事に成功した私は、現在順番待ちをしているところだ。

 肝試しのルールは至って普通。

 男女ペアで林の中に入り、奥にある用意してあるノートに名前を書いて戻ってくるだけ。

 

「なあ、お前こういうの平気なタイプだろ?」

「そうね」


 こういう類の物はあまり怖いと思ったりしたことがない。

 あれ? それじゃ私、宏太に抱き付いたりし辛くない?

 何かいい方法は……。

 あるじゃん! これしかないわね!


 やがて、私達の順番が回ってくる。


「じゃあ、サクッと終わらせて皆と合流するか」

「そうね」


 本当は亜美と天体観測に残りたかったんでしょうけど、もう私だって負けてられないわ。

 何とか今日のこの時間で、私を女として意識させてみせるわよ!


 林の中に入ると、懐中電灯1つでは少し心許ない明るさだ。

 私は、宏太からはぐれないように手を繋ぐ。

 自然に手を繋げるのでラッキーだ。


「こういう所だと、霊とかより野生の生き物とかのが怖いよな」


 宏太が懐中電灯で周りを照らしながら言う。

 一応キャンプ場としてやってるんだし、そんなヤバイのはいないと思うけど。


「足元とか気を付けろよ? マムシぐらいはいてもおかしくないからな」

「蛇? あー、いそう」


 宏太は足元を照らしながら安全を確認してくれている。

 何よ、頼りになるじゃない。


「あとは蜂だな。 特にこういう雑木林はオオスズメバチがいる事が多いから注意しろよ」

「オオスズメバチ? なんか聞いたことあるわね」

「刺されたらすぐに対処しないと命を落とすぞ」

「怖っ」

「基本的に夜目が効かない奴らだから、この時間は飛んでないんだが、懐中電灯の灯りを頼りに飛んでくる奴がたまにいるから気を付けろよ」


 なんでこいつはそんなことに詳しいのかしら?

 そういえば、生物の成績は良かったわね。

 そういうの好きなのかしら?

 と、そろそろ作戦を開始しましょう。


「っ、痛っ」

「ん、大丈夫か!? 何かに噛まれたとか、刺されたとかじゃないよな!?」

「あ、うん。 昼に挫いた足がちょっとね」


 ふふふっ、これは嘘だ。

 宏太にくっ付いて歩くために痛いフリをする。

 我ながら良い作戦だ。


「そりゃヤバイな。 どうする? 戻るか?」

「支えてくれれば何とか歩けるし、とりあえず奥まで行きましょ?」

「そうか? まあ、無理なら昼に夕也がやったみたいに、背負って歩けばいいか」


 あら、なんて素晴らしい展開かしら。

 戻る時に「もう無理」って言って、おんぶしてもらうところまでは既定路線だわ。

 私は宏太の腕にしがみ付いて歩きはじめた。


「なあ、くっ付き過ぎじゃないか? 胸とか当たってんぞ? 後で殴ったりすんなよ?」

「あーいたたた」

「なんか痛がり方がワザとらしいぞ?」


 やばっ?! 早くも嘘がバレてしまいそうだわ。

 どうしようかしら?


「まあ、構わないんだが。 ちょっと照れるというか何というかだな」

「へー、照れてんの?」

「うっせー! お前とこんな風にくっ付いて歩くのなんて何年ぶりだよ! 照れもするわ!」

「逆ギレしないでよね」


 何よ、意外とチョロくない?

 思ったよりいい感じな気がするけど。


「何よ、私の事を女として意識しちゃってんの?」


 少しイタズラっぽく訊いてみる。


「さあなぁ。 つか、俺が亜美ちゃんの事好きなの知ってんだろ?」


 亜美……。

 やっぱり、そんな簡単には行かないわよね。

 ちょっとナメてたわ。


 私と亜美……見た目だけなら私だって負けてない自信はある。

 やっぱり性格なのかしら?

 私は、あの子みたいに可愛らしく振る舞うことがあまり得意じゃない。

 宏太も夕也も、ああいう可愛いタイプの方が好きなんだろう。


「奈々美?」

「え、ああ、亜美の事ね? 知ってるけど、あんたフラれたじゃない?」

「まあ、そうなんだけどな。 でも、あの時、隠れて聴いてたんだろ?」

「うっ……」


 あの時、亜美が宏太に返事をしていた時。

 私はどうしても気になり、近くに隠れて話を盗み聞きしていた。

 宏太は、亜美の事を好きでい続けたいと、そう言ってたっけ?


「やっぱり、諦めないの?」

「そうだな。 少なくとも、亜美ちゃんに彼氏が出来るまでは」


 はっきりと言うわね。

 亜美の彼氏ってんなら、夕也が一番可能性があるんだろうけど、あいつはあいつで今かなり悩んでる。

 亜美もあれで中々頑固だし、この複雑な恋愛相関図はどうなるか見当もつかない。


「ねぇ、もしよ? もし、亜美以外にあんたを本気で好きになってくれる女子がいたとして、その子に告白されたらどうする?」

「そうだなー……相手にもよるけど、もしその子が本気だって言うなら、俺も本気で考える」

「あら、亜美一筋なんじゃないの?」

「だから、相手によるんだよ」

「た、例えば?」

「今のところ、お前か、雪村ぐらいじゃねーかな?」


 の、希望が入ってるのは意外だけど、ちゃんと私もいるのね。

 そういう対象ではあった事に安堵した。


「へ、へぇ。 希望は意外ねー」

「まあ、雪村も何だかんだ言って、長年連んでる幼馴染だからな。 その辺の女子に比べたら特別ではあるぜ?」


「可愛いしな」と、付け加える宏太。

 やっぱり可愛いタイプが良いのね。


「まぁ、雪村に関しては、夕也にゾッコンだから、まずそんな展開にはならんだろうけどな」

「でしょうね。 じゃあ、私は?」

「お前は、俺を『叩くと良い音がするサンドバッグ』とか、『どんなに乱暴にしても壊れない玩具』ぐらいにしか思ってないだろ?」

「えっ?!」


 な、何それ!?

 私、宏太にそんな風に思われてたの?

 

 ちょっとそんな扱いをした記憶なんて……。

 山ほどあるわねぇ。

 夕也の言う通り、宏太に対してキツく当たりすぎだったってことか。

 こ、これからは直す努力をしましょう。


「な、なんかごめんなさい」

「まあ、いいんだけどよ。 昔から、俺らはそんな感じだろ?」

「そうかもしれないけど。 これからはちょっと控えるようにするわ」

「さよか。 お、あれがノートか?」


 宏太が照らす光の先に机の様な物が見える。

 どうやら折り返し地点らしい。


 ノートを見ると、先に来たペア達の名前が並んでいる。

 中には相合い傘なんかにしてるのもあるわね。

 さすがに恥ずかしいでしょこれは?


「ほれ、奈々美も名前書けよ?」

「え、えぇ」


 藍沢奈々美と。


「書けたか?」

「あ、ちょっと待って」


 よし、これぐらいならまあ、許容範囲でしょ。

 私はペンを置いて、宏太に並んだ。


「まさか、相合い傘なんか書いてないよな?」

「書いてないわよ、あんな恥ずかしいの」


 まあ、ただちょっとだけ、2人の名前の間にハートマークを書き足したけど。


「なあ、足は大丈夫か?」

「え? あ、もうダメかも? 歩けないわー」

「お前、演技ダメだな」

「え、演技じゃないわよ?」

「へいへい、そういうことにしておいてやるよ」


 そう言って宏太は、私に背中を向けて屈んだ。

 何? 踏んでくださいってこと?


 ゲシゲシ


「お前なぁ」

「あ、ウソウソ! ごめんなさい」


 私はゆっくりと宏太の背中に負ぶさった。


「重かったらごめんなさい」

「柔らかい」

「夕也とおんなじ反応するのね」

「そうなのか?」

「えぇ」

「ほい、奈々美、懐中電灯頼む」

「はいはい」


 私は宏太から懐中電灯を受け取り、足元を照らす。

 お互い、しばらくの間無言になる。

 どうしよう? 何か話題が欲しいわね。


「奈々美」

「え? 何?」

「今みたいに、黙ってると本当に美人だよな」

「えっ? そ、そうかしら?」

「そうだぞ? 自覚無しかよ」


 宏太から美人って言われたわよ!

 これは嬉しいわね。

 

「ありがとう、その……嬉しい」

「そうか」


 どうしよう、なんか良い雰囲気だし、このまま告っちゃうのもアリな気がするわよ?

 でも、さっき「亜美に彼氏が出来るまでは諦めない」って言ってたし。

 今は、告ってもダメっぽいわよね?

 だ、だけど、私が宏太に好意を持ってることを知ってもらうには良いかもしれない。

 そうよ、ここでの損は、先への投資!

 決めたわよ!


「こ、宏太?」

「ん?」

「わ、私ね、宏太の事が……そのね?」

「おう」

「す、好き……なの」


 言ってしまった!

 やっぱりまだ早過ぎたかしら?!


「ふぅん……それは、()()で好きなやつか?」


 私は小さく頷いて返事をした。


「そうか。 じゃあ、()()で考えないとな」


 宏太自身がさっき言ったことだ。

 私が本気なら、宏太も本気で考えてくれる。


 今は別にフラれても良い。

 これは未来への先行投資だ。

 少なくともこれで、私の気持ちは宏太に伝わったはず。

 これから、少しでも私への見方が変わってくれれば……。


「ちなみに、いつから?」

「結構昔からよ? 幼稚園の頃からかしら」

「そんな前からか……俺が気付いたのは中学入ってからなんだがなぁ」

「え?」


 今、なんて言った?

 中学の頃には私の好意に気付いてた?


「確信があったわけじゃねーぞ? 聞くのも気恥ずかしかったし、そのままにしてただけだ」

「そ、そうなの?」

「あぁ。 その頃には亜美ちゃんに惚れてたしな」

「……」

「悪かったな。 俺を好きな奴に、他の女子の事で相談したりして。 無神経だったかもしれん」

「別に構わないわよ。 私も好きで世話焼いてたんだし」


 正直な話、亜美に宏太取られるのは別に構わないと思っていた。

 親友だし、可愛いし。

 だから、相談にも乗ってた。

 今でも、それは変わらない。

 何かあって、宏太と亜美が付き合う事になったとしても構わない。

 私の好きな2人がそれで幸せなら。

 あー、私も亜美や希望の事言えないわ。


「なあ、そろそろ出口だが、降ろした方がいいか?」

「別にこのままで良いわよ? 皆、私が怪我したの知ってるし、誰も不思議に思わないでしょ?」

「はいはい」


 短かったけど、凄く有意義な肝試しは終了した。




 ☆亜美視点☆


 天体観測を終えた私達は就寝準備をして、奈々ちゃんと宏ちゃんの帰りを待った。

 しばらくすると、奈々ちゃんを負ぶった宏ちゃんが戻ってきた。


「奈々ちゃん大丈夫?」

「えぇ、大した事ないわよ」

「降ろすぞ」

「ありがと、助かったわ」


 んん? 心無しか2人の雰囲気が良いような。

 これは何かあったかな?

 

「な、何にやにやしてんのよ?」

「いやいや、別に。 お話は中で聴かせてもらいますよぉ」


 私は奈々ちゃんの背中を押してテントに押し込んだ。


「あ、夕ちゃん、宏ちゃん、おやすみー」

「ああ、おやすみ」


 ◆◇◆◇◆◇


「さあ、奈々ちゃん? 何があったのかなー?」


 テントに入ってすぐに質問を投げかける


「全く、あんたの嗅覚はどうなってんのよ?」

「奈々美、本当に何かあったの?」

「聞きたいな!」


 奈央ちゃんも希望ちゃんも興味津々だ。

 奈々ちゃん、逃げ場はないよ!


「宏太に告ったのよ」



 奈々ちゃんから宏ちゃんに告白。

 幼稚園の頃から宏ちゃんの事好きだったんだもんね。

 ようやく気持ちを伝えたんだ。


「……長かったね」

「まあね。 半分ぐらいあんたの所為だけどね」

「ううっ、ごめんなさい」


 宏ちゃんは宏ちゃんで、ずっと私が好きだった。

 気付いていたのにはっきりとさせなかった私の所為で、奈々ちゃんに迷惑をかけてしまった。


「別にいいわよ」

「それで、返事は?」


 希望ちゃんが前のめりで訊いている。


「まだよ」

「そっかぁ」

「手応えはあったの?」


 今度は奈央ちゃん。


「さあ、多分フラれるんじゃないかしら?」

「ええー、なんで? 奈々ちゃんならOKだと思うけど」

「理由はあんたが一番わかってるでしょうが!」

「あ、そっか。 宏ちゃん私の事諦めてないんだった……」


 ど、どうしよう……。

 私の事忘れてって宏ちゃんに。

 いやいや、でも、そんなことしたら奈々ちゃん怒るだろうなぁ。

 宏ちゃんにもさすがに悪いし。

 これは黙って見守るしかないか。


「いいのよ、フラれても。 その覚悟で告ったんだし」

「そうなんだ」

「す、すごいなぁ。 私はフラれるかもって思ったら告白なんてできないよぉ」


 希望ちゃんはフラれる心配ないから早く告白しちゃえばいいのに。

 そうすれば、私も楽になれるのに。

 どっちも、私の所為だと考えると胸が痛む。

 どうすれば丸く収まるんだろう?

 

 

 ◆◇◆◇◆◇



 私達の林間学校2日目はキャンプ場を出て昼まで観光、昼食を食べた後、観光バスに乗り込み家路へと着いた。

 高校に入学して1か月半ほど。

 私達、5人の関係が少しずつだけど変わってきているのを感じる。

 これからどうなるんだろう?


希望と奈々美の恋が中々進まないのは自分の所為だと考える亜美。

5人の関係はどうなっていく?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ