第2193話 卒業は近い?
家事を勉強中の夕也。
☆夕也視点☆
少しずつ暑くなり始めてきた今日この頃。 未だに家事の特訓中の俺だが、そろそろ卒業だな。
「夕也兄ぃ、掃除終わったかー?」
「おう、大体終わったぞ」
今井家のリビングへ様子を見に来た家事特訓の教官である麻美ちゃん。 「どれどれ」と言いながらリビングを見て回る。
「うむ。 散らかってない!」
「いや、綺麗になったかどうか見てくれないか?」
「夕也兄ぃが掃除したら散らかるのが普通だったのに、今は散らかってないー! 成長しているー!」
「だから、部屋が綺麗になったかどうかをだな」
「そこはまあ70点ぐらいー」
「そ、そうなのか?」
「うむ。 まだ少し甘い所があるー」
「そ、そうか」
「とはいえ、70点ならとりあえず合格点ー」
「よし! じゃあ卒業だな!」
「ほへ? まだ卒業には早いー」
「何でだ?」
「亜美姉からは100点出すまでよろしく言われてるー」
「あ、亜美めぇ」
とりあえずまだ卒業は出来ないらしい。 まあ、すぐに100点出してやるぜ。
「ちなみに洗濯は100点だぞー」
「洗濯は任せろ」
「料理の方は順調ー?」
「うーむ。 最近忙しくて教えてもらえてないな」
俺も希望も、バスケとバレーボールの練習が始まったりして中々時間が取れていないのである。 こればかりは仕方ない。
「なるほどー。 亜美姉とか神崎先輩に教えてもらえば良いのではー?」
「うーむ。 それもそうだな……」
「なはは。 ならば早速『皆の家』へイクゾー」
「おう」
◆◇◆◇◆◇
「と、いうわけだ」
「んん? 何の話かな?」
「意味わからないわよ?」
「夕也兄ぃ端折り過ぎー」
何の説明もせずに「と、いうわけだ」と、とりあえず言ってはみたが、やはり全く通じなかった。
「実は、最近俺も希望も忙しくて料理を教えてもらえてないんだ。 だから二人に教えてもらおうと思ってだな」
「料理ねー」
「私は別に吝かでは無いよ。 でも、先生の希望ちゃんに確認は取らないと」
「別に良くないか?」
「ダメだよ。 勝手にやると希望ちゃんが拗ねるんだよ」
「きゃはは! 可愛いわね」
「ちょっとメールしてみるよ」
と、亜美がスマホを取り出して希望にメールを送り始めた。 そのまましばらく待っていると……。
「うん。 OKだって」
「おし!」
「今井君ってそんなに料理するの好きだっけ?」
「うむ。 何かこう美味く作れたら楽しいんだよな」
「良い傾向だよ」
「ほいじゃ、今日のお昼は私が教えたげよう。 手取り足取り腰振りね」
「最後なんで腰振るのかな?」
「なはは! 神崎先輩、妊娠中でも相変わらずー」
「その性欲は何処から湧いてくるんだ……」
「きゃはー」
とにかく紗希ちゃんから料理を教えてもらうことになったので、早速台所へ向かうのであった。
◆◇◆◇◆◇
何故か亜美と麻美ちゃんもついて来る他、今現在の台所係であるマリアちゃんに星野さんも昼食の準備にやって来ている。
「先輩方、何故台所へ?」
「今日は紗希ちゃんに料理を教えてもらうんだ」
「そそ。 手取り足取り腰振りね」
「そうですか」
「マリアちゃん、腰振りにもツッコまないんだね」
「?」
マリアちゃん、君はそのままで居てくれ。
「マリア、今日のお昼は何を作る予定なのよ?」
「お昼ですか? 星野さんと話して冷やし中華にでもしようと思っていますが」
「うーん。 それだと調理とか必要無いわねー……」
「ですね……」
「それは困るぞ」
「困ると言われましても」
星野さんも困っているようだが、俺だって料理を覚えたいしなあ。
「献立を今から変えることは出来ないかな?」
「うーん。 お昼は冷やし中華で決めていたので買い出しもしてないし、他の食材を発注もしてないですよ」
「そ、そうか」
「ちょっと冷蔵庫見せてちょ」
「は、はい」
紗希ちゃんは冷蔵庫を開けて中を確認。 「ふむふむ」と頷く。
「こんだけあれば野菜炒めの味噌和えが作れるわ」
「おー、良いねぇ」
「てなわけで、そんなに難しくはないけど炒め物の基本だし、おさらいがてら野菜炒め作りましょ。 それは今井君のお昼ね」
「おう。 頼む」
「私はいつも通り監督だよ。 腰を振られちゃ堪らないからね」
「振らねぇよ……」
「きゃはは。 とりあえず野菜を冷蔵庫から出して調理始めるわよ」
「おう」
冷蔵庫から野菜を取り出して並べる。 基本的にはこの野菜達を切って炒めて味付けするだけらしいが、包丁の使い方をおさらいするにはちょうど良い。
「ほいじゃ、この野菜を水洗いして一口大に切ってってちょ」
「おう」
まずは軽く水洗いして、順番にまな板に乗せて切っていく。
サクッサクッ
「ほほう。 包丁は普通に使えてて偉いわね」
「ふん。 余裕だぜ」
「あまり調子に乗るとケガしちゃうよ」
「余裕だぜ」
「夕也兄ぃ頑張れー」
「おう!」
野菜を切り終えた後は炒めに入る。 こんなの余裕だぜ。
「亜美ちゃん、どう見る?」
「うん。 この程度の料理ならもう余裕そうだね」
「よね」
「ぬわはは!」
「なはは! 夕也兄ぃが調子に乗ってるー!」
「これさえ無ければねぇ」
「じゃあ最後に味噌を入れて軽く炒めて出来上がりよ」
「おう!」
最後に味噌を入れるぜ!
「完成だぜ!」
「パチパチー」
「きゃはは。 良く出来ました」
「うんうん。 簡単な料理だからねぇ。 これぐらいは余裕で作ってもらわないと」
「でも、ちょっと前の今井君なら絶対苦戦してたわよ」
「料理スキルが上がってる証拠ー」
「だねぇ」
「自信持って良いんだよな?」
「良いと思うわよん」
「うおおお! 紗希ちゃんに認められたらもう卒業だな!」
「いやいや。 それを判断するのは希望ちゃんだよ」
「そそ。 私はあくまで臨時講師だから」
「ふ、ふむ」
最終試験は希望に見てもらう必要がありそうだなぁ。 時間がある時にでも見てもらうとしよう。
「家事スキルも上がってきて、ほぼ及第点。 私の代わりに家事を任せられるようになるのも時間の問題だよ」
「おう。 任せろ」
もうすぐで俺も家事で役に立てるようになるな。 今までは掃除の時には厄介払いされたりしていたし、亜美と希望がいない時は即席ラーメンだったが、もうそんな自分とはおさらばだぜ。
◆◇◆◇◆◇
作った野菜炒めと白米で昼食を食べる事に。 俺以外の皆は冷やし中華を啜っている。 美味そうだな。
「しかし、俺の野菜炒めも美味い!」
「良かったねぇ」
「きゃはは」
味噌の風味が食欲をそそり、白米が進む進む。 これは簡単に作れるから、ちょっと腹が減った時とかに作って食うにはちょうど良いな。
「今井君、蒸し料理はやったことないわよね?」
「ないな」
「なるほど。 じゃあ夕飯は蒸し料理やりましょ」
「おう!」
紗希ちゃんはまた俺を教えてくれるらしい。 蒸し料理……一体何を作るんだろうか?
卒業も目の前か?
「奈央よ。 今井君が掃除出来るなんて奇跡ですわね」
「本当だよ。 掃除して散らからないだなんて奇跡だよ」




