第2189話 天才だらけ
練習試合が終わった後、ジュニア達は「皆の家」に遊びに来るようだ。
☆亜美視点☆
月ノ木学園中等部と都姫女子中等部の練習試合を観戦し終えた私達は、私有バスに乗り千葉へ戻る。 さゆりちゃん達は、一度学校に戻ってから解散するとの事。 解散後に「皆の家」に遊びに来ると言っていたよ。 私達もおもてなしの準備しないと。
「お茶とおやつOK」
「あの子達、疲れたりしてないのかしら?」
「パワフルな子達だからねぇ。 きっとまだ元気が有り余ってるよ」
「みゃー……」
「なー……」
マロンとメロンはあの子達と遊ぶと疲れると言っているようだ。 前に来た時に追いかけ回されていたからねぇ。 今は幾分大人しくなっていると思われるよ。 マロン達を追いかけ回すような事もないだろう。
◆◇◆◇◆◇
バタバタ……
バタバタ……
「待て待てー」
「みゃー!」
バタバタ……
バタバタ……
「相変わらずパワフルですわね」
「大人しくなってると思ったけど、そんな事はなかったよ」
「なはは。 元気なのは良い事ー」
どうやら犬猫を見ると追いかけて遊びたくなるらしい。 まだまだ子供である。 マロン達はというと、飼い主に抱きついて助けを求めてきている。 さすがにこれは可哀想だね。
「皆、あまり追いかけ回したりしないであげてねぇ。 この子達、ちょっと怖がってるみたいだし」
「はい!」
返事は凄く良いのである。 注意してあげるとすぐに言う事を聞いてくれる子供達。 マロン達とは大人しく遊ぶようにしたらしい。
「今日は夕飯どうするのぅ?」
「それまでには帰ります!」
「そうなんだね。 あまり遅くなるとご両親も心配するもんね」
「はい!」
「にしても、皆バレーボール上手くなったよなぁ」
「ねー?」
「頑張って練習してます!」
「でも、アリサちゃんが上手過ぎて私一回も勝てません!」
「ふふふ。 エースの座は渡しません」
さゆりちゃんとアリサちゃんはチーム内のライバルとして、お互いを高め合うような存在のようだ。 そういう人が近くにいると、成長が早まったりするのである。
「真由美ちゃんも中々の『ちょいさー力』であった!」
「はい、ししょー!」
「真由美ちゃんは麻美ちゃんの教えを理解してるのぅ?」
「はい! わかりやすいです!」
「なは! なはは!」
同族にしかわからない言語で教えているのかな? 私には麻美ちゃんのブロック理論はわからないのである。
「麻美みたいなんがまだおるんやな……牧田さんもそやし」
「そうだったねぇ」
西條アルテミスのLである牧田さんも、麻美ちゃんタイプの不思議な選手であり、やはり麻美ちゃんの教えを理解している数少ない人間である。
ちなみに麻美ちゃんはあんな意味のわからない事を言ったりしているが、実際は頭も凄く良くて成績も良かったのである。 要領が良いのかな?
「だけどさ、よく今日の練習試合勝ったわね? 相手も相当強かったはずよね?」
「今調べてみましたわ。 都姫女子中等部。 昨年のインターミドルベスト4だそうですわ」
「ベスト4か。 強いわけだ」
「はい。 円香ちゃんがとにかく凄いです!」
「まどかちゃん?」
「あの背番号1だった子?」
「はい!」
名前を柊円香ちゃんというらしい。 都姫女子中等部のエースで、中学バレーボール界ではトップクラスの実力者なのだそうだよ。 アリサちゃんとはライバル同士なのだそうだ。 さゆりちゃんも何とか頑張って追いつこうと頑張っているのだとか。 アリサちゃんはさゆりちゃんの成長速度が異常に早い為、いつエースを奪われるか気が気ではないらしい。
「亜美ちゃんはそんな感覚わからなさそうね」
「えっ? どうして?」
「あんた、誰かに追いつかれる事とか無さそうだし」
「いやいや。 奈央ちゃんとか弥生ちゃんとか、割といるよ?」
「私、追いつける気なんてしませんわよ?」
「えぇ……そこは頑張ってよ」
「無茶言わないでちょうだい」
「私は奈央ちゃんを終生のライバルだと思ってるよ?!」
「それは私も同じだけど。 いやー、でもスペックに差がありすぎて」
「そんなに無いと思うよ?!」
私は奈央ちゃんもかなりの化け物スペック人間だと認知してるんだけどねぇ。 そして、それに関しては他の皆も同意している。 その上で皆が言うには「亜美ちゃんはそういう次元を超越している」との事。 うーん。 私って一体何だと思われてるのだろうか?
◆◇◆◇◆◇
中学生の子供達を家に送り届け、私達はまたまたリビングでのんびりと過ごす。
「あの子達がいれば日本バレーボール界はしばらく安泰ですわね」
「だねぇ。 私達より凄い選手になるかもしれないよ」
「きゃはは。 怖い怖い」
「亜美より凄いのは今後未来永劫出てこないわよ……」
「そんな事はないんじゃないかな?!」
「いやいや、亜美ちゃんって人間の域を超越してますもの」
「ちゃんと人間なんだけどねぇ」
「でも、ケガの治りもやたら早いとかで医者からも不思議がられたんでしょ?」
「それはたしかにあったけど……人間だよ」
「まあ、それぐらいにしといてやりなよ。 その内亜美ちゃん泣くぞ」
遥ちゃんが助け舟を出してくれたおかげで、私イジりは止んだようだ。 まあ、たしかに他の人よりちょっとは違うとは思わないでもないけどねぇ。
「なはは。 亜美姉は凄い人なのだ」
「色々なとんでもエピソードがあるわよ」
「お、聞かせなさいよ奈々美」
奈々ちゃんはたしかに私の事を色々知ってるけど、とんでもエピソードって言う程のものあったかな?
「例えば、幼稚園の年長の頃には九九をスラスラ言えたり……」
「きゃはは。 それぐらいだと100まで数えられるとかが普通っしょ」
「私は出来ましたわよ」
「ほら! 奈央ちゃんも出来たって言ってるよ! 私と同じだよ!」
「まあ、学力に限って言えば亜美ちゃんと奈央は大差無いわよね」
「そうですわね。 勝った事無いけど」
「それはまあ……」
その後も奈々ちゃんから出るわ出るわのとんでもエピソード。 小学生低学年時には中学生女子より走るのが速かっただの、なんだの。 それらを聞く度に紗希ちゃんは大袈裟に笑うし遥ちゃんも苦笑いを見せるのだった。
「とにかく! ジュニア達には大いに期待しているって話だよ」
「まあそれはそうね」
「あの子達なら新たな月ノ木学園の伝説になれますわよー」
「はぅ。 期待大き過ぎるよぅ」
「いやいや、あの子達ならやるさ」
既にその片鱗も見せているし、努力も怠らないし、強くならないわけがないからね。
「ケガだけはしないようにしてほしいですわね」
「そういうのもちゃんと教えてあげないとね。 アスリートは身体が資本だし」
「そうねー」
もちろんあの子達がこのままプロアスリートを目指したりするならではあるのだけど。 さゆりちゃん達にはまだ早い話である。
とはいえあれだけの才能だし、プロを目指さないのも勿体無い話ではある。 高校でもバレーボールを続けていたら、その時にでも聞いてみようかな?
ジュニア達の今後の活躍に期待。
「遥だ。 亜美ちゃんに勝とうとか、考えた事すら無いな」
「きゃはは。 無理だしー」




