第2184話 美智香も世話焼き
弥生の家に来た宮下。 また世話を焼くのだろうか?
☆宮下視点☆
うーむ。
「宮下さん、弥生ちゃんどんな感じ?」
「相変わらずね。 ありゃ中々進まないわ」
「なはは」
「はぅ」
「まあ、急かしても仕方ないだろ。 月島さんと武下君はちゃんと上手く付き合えてるんだろ?」
「まあねー。 今日は武下っちも弥生っちとキャミィっちの家に泊まるみたいだし、さっきは武下っちを下の名前で呼んでたし。 ちょっとずつは前進してるっちゃしてるけど」
「まあ十分だよねぇ」
「近くで見てるとヤキモキするわよ?」
「あはは……我慢だよ」
亜美っちは「上手くいってるなら暖かく見守るが吉だよ」って言ってる。 まあ、私も弥生っちから言われた事あるし、しばらくは様子を見てたんだけどさー。 あんまりにも進展しないからついつい……。
「うーむ。 明日弥生っち達の家に行ってみよっかな」
「あ、あんまり口出ししちゃダメだよ?」
「わかってますがなー」
「本当かなぁ」
亜美っちには怪しまれるが、ちゃんと私もわかってるから大丈夫。 弥生っちが困るような事はしないわ。
◆◇◆◇◆◇
翌日よ。 弥生っちに連絡して確認を取り、オッケーをもらったので弥生っちの家へ。
ピンポーン!
「おう、来たか美智香に可憐」
「やーよーいー」
「おはよ、弥生っち。 武下っちもいるんでしょ?」
「おるよ。 今は何や仕事しとるわ」
「仕事?」
「修学旅行の引率が今月あるらしいで。 それ関係や言うてた」
武下っちは中学校教師という職業よ。 たしか今は担任クラスも持っているらしいから、修学旅行の引率なんかもあるみたい。 リビングへ行くと、キャミィっちと武下っちの姿を発見。 キャミィっちは静かにテレビを見ているし、武下っちはノートパソコンと睨めっこしてる。
「おはよー二人ともー」
「オウ、ミチカおはよーヤ。 またはやいジカンにきたナ」
「うわはは」
「宮下さんおはよう」
「む、武下っちは昨晩泊まったんだって?」
「そうだね」
「見たとこ弥生っちとは何も無かったようだね」
「無いよ」
「あらへんわ」
「お、弥生っち」
「ほれ、茶や」
「ありがと。 ずずっ……はぁ、弥生っちの淹れるお茶は美味しいわね」
「まあな。 んで、朝っぱらから何をしに来たんや?」
「それはまあ……武下っちが泊まったって聞いたから様子を見に来たのさ」
「見てどないするんや……」
「うわはは。 どうもしない!」
「何やそれ……」
「うわはは」
まあ、本当は弥生っちと武下っちの尻を叩きたいとこではあるんだけど、亜美っちにも言われたし下手な口出しはしないようにしないと。
「ミチカ、このふたりせっかくのやすみやのに、デートせえへんみたいやデ」
「武下っち忙しそうだし仕方ないんじゃない?」
「そやろカー」
「修学旅行て何処なんや?」
「……定番の京都だよ」
「だはは!」
「ワハハ!」
「地元じゃん」
「そうだよ……もう見尽くした観光地を巡る旅行だよ」
「その上、中学生のお守りやもんな。 何や損した気分やな」
「まあ、そうでもないとは思うけど。 楽しみが無いのは確かだ」
「そればかりは仕方ないわね」
「本当にね……」
「そやけど、わかくてキレイなオンナのセンセーとかもくるんやロ?」
「いるっちゃいるけど」
「何や、浮気するんか?」
「しないしない!」
「うわはは! 何、弥生っちは浮気許さない派なんだ? てっきり『好きにせぇ』とか言うかと」
「そら誰とも知らん女と浮気されるんはおもろないやろ……」
そういう考えは一応するのね。 ちょっと安心したわ。 武下っちが浮気出来る程の甲斐性があるとも思えないけど。 いや、その前にそんなにモテるとも思えないわ。
「まあ、久しぶりの地元観光楽しんで来たらええやん」
「そうするよ……」
「弥生っちもついて行ったら?」
「アホか?! 何で部外者のウチが修学旅行について行くんよ?!」
「いや、京都は庭なんでしょ? 案内役にぴったりじゃん」
「そういう話やないて……」
「さすがにそれは無理だよ宮下さん」
「無理かー」
「ウチでもわかるデ」
名案だと思ったんだけどなー。
「あんさん、まさか本気で言うてたん?」
「え? そうだけど」
「ア、アホ過ぎる……」
「えぇ……」
「あーほー?」
「可憐が良くない言葉を覚えちゃったじゃない?!」
「いや、そやけどなあ……」
「ミチカ、さすがにやばいやロ……」
私の提案、そんなにおかしかったのかしら? うーむ。
◆◇◆◇◆◇
「美智香、昼はどうするん?」
「あ、私自分の分と可憐の分は買ってきたからいらないわよ」
「ここで食う気満々かいな」
「うわはは」
買って来たコンビニ弁当を出して手を合わせる。 可憐にはおかずを小さく千切って食べさせるわ。
「あむあむ」
「可愛いなぁ、可憐は」
「かわいーい?」
「そや」
「イミはわかるんカ?」
「多分意味はわかってないわ」
「ワハハ」
「まだそこまではわからないんだね」
「多分ね」
ただ聞いた言葉を繰り返してるだけじゃないかしら?
一応物の名前は覚えたりし始めているみたいだけど。
「ほい、聖也君。 昼飯のチキンライスや」
「ありがとう」
「ふむ。 どっからどう見ても夫婦じゃん」
「全然ちゃうやろ」
「ははは」
「いやいや、亜美っちと夕ちゃん君みたいだったじゃん」
「あの二人、普段あんま仲良うしてへん気がするで?」
「むむ?」
言われてみるとたしかに。 あの二人より亜美っちと奈々美っちの方が仲良いまである気がする。 私達夫婦は結構仲良くやってんだけどなぁ。 夫婦によって付き合い方は違うのかしら。 今まで気にした事なかったわ。 だけど、弥生っちと武下っちは結婚したら多分こんな風になるんだろうなぁとは思うわ。 あんまイチャイチャするタイプじゃなさそう。
「何や」
「何でもない。 早くそんな日が来ればなぁって話」
「意味わからん」
「うわはは」
この二人が夫婦になるのはまだまだ先になりそうねー。 キスすらまだってんだから。 本当どうなってんのかしら。
ピロリン!
「おん? グループチャットや」
「千葉組からね」
私達のスマホが一斉に通知音を鳴らす。 どうやら千葉組の誰かがグループチャットで何か発言したらしい。
「おお」
「舞っちと彼氏さんが籍を入れたみたいね」
「オー。 おしあわせにやナ」
「週末にお祝いパーティーやるから集まれる人は『皆の家』へ、てか」
「最近良く行くわね」
「そやな。 まあ、友人の結婚祝いやし参加しよか」
「オー」
「うむ」
「聖也君は?」
「週末は忙しいかなぁ……お祝いメッセージだけ送らせてもらうよ」
「しゃあないな」
「しかし、こうなるとあとは弥生っちと武下っちだけじゃない?」
「何がや」
「結婚してないカップル」
「別に慌ててするもんでもないで」
「だね」
「ワハハ。 アカンみたいやナ」
「うーむ」
やはりこの二人はまだまだ時間がかかりそうね。
青砥さんも籍を入れたようだ。
「亜美だよ。 青砥さんもようやくだね」
「だよぅ」




