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第2183話 進展しない二人

亜美と電話中の弥生だが?

 ☆弥生視点☆


 風呂から出て自室に戻り、スマホで亜美ちゃんと電話で談笑する事に。 亜美ちゃんはどうやら美智香達とゲーム中らしい。


「え、武下さんが泊まってるの?」

「おう、そやで」

「なぬー?! 武下っちが弥生っちの家にお泊まりとな?!」


 いきなり美智香が騒ぐ。 どないなってんのやこの状況。


「電話してる場合?! 夜這いしないと!」

「せぇへんわ! ウチを何や思うてんねん」

「ここで狼にならなくてどうすんの?」

「なるんやったらウチやのうて聖也君の方やろ!?」

「いやいや! 武下っちは奥手だから……って、聖也君って誰?」


 あ、普通に下の名前で言うてもうた。


「武下聖也。 武下君の下の名前やよ。 知らんかったんか?」

「何か聞いた事ある気がするけど忘れた!」

「というか、私のマイクとスピーカー越しに会話するのやめてほしいねぇ」

「なはは!」

「どうなってるのぅ?」


 今の状態は、ウチが亜美ちゃんと電話で話しとって、その会話を亜美ちゃんがゲームしとるパソコンのマイクが拾い、他の皆にも聞こえとるらしい。 更に会話を聞いた美智香の話し声が、亜美ちゃんのパソコンのスピーカーから電話越しにウチに届いて会話が成立しとるって事みたいや。


「亜美姉、ヘッドセットにしないのー?」

「耳が圧迫される感じがあまり好きじゃないんだよねぇ」

「なるほど」


 何やようわからん話になってもうたな。 美智香は、「今から弥生っちに電話するわよ」と、やたら息巻いとる。 亜美ちゃんは亜美ちゃんで「私は電話を切るから、宮下さん実況解説お願い」とか意味わからん事言い出しとるし。


 亜美ちゃんが電話を切るとすぐに美智香から着信がある。 何が、そこまでさせるんやろな?


「もしもし!」

「何や」

「弥生っちが泊まれって言ったのか武下っちが泊まるって言ったのどっちなのさ?」

「キャミィが泊まったらええやんって言うたんや」

「キャミィっちかー。 いや、グッジョブ」

「いや、だから何がやの……」


 何や一人で勝手に盛り上がっとるで。 いや、多分亜美ちゃんと雪村さんと麻美っちも盛り上がっとるんやろな。 もう電話から声は聞こえへんけど。


「恋人同士が一つ屋根の下で一晩過ごす……これは何か起きるわ」

「起きへんしキャミィもおるんやで」

「まさか三人で?!」

「アホぬかせ!?」


 何が三人でやねん。 美智香も頭ん中ピンク色なんか?


「とにかく何も起きへん。 あとは布団入って寝るだけや」

「一緒に?」

「一人でや! 部屋も当然別々や!」

「つまらないわねー」

「やかましわ!」


 ほ、ほんま疲れる。 美智香は一体何を期待してんのや。


「まあ、名前呼びになっただけでも進歩か」

「そやろ。 それだけで十分やん」

「弥生っちにしては上出来」

「ウチ、どんな評価なんや……」

「ノロマ」

「マイペースて言うてんか」

「そゆことにしといたげる。 まあ、二人には二人のペースがあるってのはわかってるわよー。 ただ、あんまりにも牛歩過ぎるからつい口出ししたくなるのよー」

「そらえらいすんまへんな」

「本当よ。 あんまりのんびりしてると、おばあさんになるわよ」

「さすがにそこまでは引っ張らんわい」

「だと思いたいわ」


 キャミィといい美智香といい、心配し過ぎやろ。 ウチのお袋かいな。


「ほな。 ウチは寝るさかい、電話切るで」

「うむ。 詳細は後日聞かせてもらおう」

「だから何も起きへんて……ほな、おやすみ」

「おやすみー」


 ピッ


「はあ……何で電話でこない疲れなあかんのや」


 ウチが何した言うんや。 いや、何もしてへんから急かされとるんか。 はあ……。


「あかん。 ちょっと茶でもしばいてから寝よ」


 ちょっと落ち着く為に茶を飲む事にし、台所へ向か俺うと部屋を出る。 部屋を出て何気にキャミィの寝室の方に視線を向けると、少し開いた扉からこちらを覗くキャミィの視線とぶつかる。


「……何しとん?」

「ワハハ……かんしヤ」

「監視? 何をや?」

「ヤヨイのこうどうヤ」

「はあ?」

「いまからヨバイなんカ?」

「ちゃうわ!」


 何処でそないな言葉覚えてくんねんほんまに。 キャミィ「なんや、ちがうんカ」と、ちょっと残念そうに言う。


「茶飲みに行くだけや」

「オウ。 ウチもいくやデ」

「さよか」


 茶を飲み行くだけやのにな。 ようわからんやっちゃ。


「ミチカとデンワしてたんカ?」

「そや。 あれもあんさんみたいな事言うとったわ」

「ヨバイしろてカ?」

「まあ、あんさんと同じでウチらが心配なんやろうけどな」

「ワハハ」

「心配せんでええのにな」

「そやったら、ちょっとはシンテンしてほしいもんやデ」

「すまんの、ノロマで」

「ワハハ。 まあ、ヤヨイとタケシタをしんじるしかないナ」

「そやそや」


 台所に到着し湯沸かす。 やっぱり暑い茶が一番やで。


「そやけど、そろそろセップンぐらいはしたらどうヤ?」

「接吻て……何処で覚えてくんのや」

「ドラマやデ」

「まあそやろな……アメリカでは挨拶みたいなもんでも、日本ではちゃうんやで」

「アメリカでもアイサツでセップンはせぇへんデ。 キホンはアクシュやナ」

「そうなんか?」

「ひとによってはイヤがるひともおるんヤ」

「へぇ」


 勝手にアメリカの人は挨拶代わりにほっぺにキスするもんやと思ってたで。


「そやけどタケシタはいやがらへんやロ」

「そうかもしらんけどやな……おっと、湯が沸いたな」


 湯が沸いたし急須に茶葉を入れて茶を淹れていく。


「ほれ、キャミィの分」

「オー、ありがとうナ」

「これ飲んで寝るで」

「そやナ」

「ずずっ……はぁ」

「おちつくナー」

「そやな」


 キャミィも茶が好きになったなぁ。 まあ、ウチの影響やろうけど。


「ヤヨイのオチャはうまいデ」

「淹れ方一つで変わるさかいな」


 和菓子屋をやっとる婆ちゃんに、お茶の淹れ方教えてもろたなぁ。


「これのんだらタケシタもホレなおすデ」

「茶ぐらいで惚れ直すかいな」

「ワハハ」

「あしたはタケシタとデートとかせんのカ?」

「あー、予定はしてへんで」

「さいきんデートしてへんやロ」

「そやけど、別にせんでもええやろ」

「ハァ……まあ、ヤヨイがそれでええならええけどやナ」


 キャミィに溜め息をつかれる。 そもそもウチと聖也君はそない頻繁にデートには行かへん。 ほんまにたまにやねんな。 しかも大したデートをするわけでもあらへんし。


「ヤヨイはレンアイがヘタクソやナ」

「それは自分でもわかっとる……」


 言われんでも自覚しとるんよ。 そもそも自分に恋人が出来るやなんて思ってもみいひんかったからな。


「あの男、ほんまウチのどこがええんやろな」

「ヤヨイはいいヒトやデ。 それにおもろいしカッコええ。 ホレるようそマンサイやデ」

「そうかいなぁ」


 たしかにウチがバレーボールしとる姿がカッコイイて言うとったけど……あの男も変わっとるな。


「さて、眠いしそろそろ寝よか」

「そやナ。 タケシタのヘヤはあっちやデ」

「行かへん」


 ほんま疲れるわ。

何を言われてもマイペースな弥生であった。


「遥だ。 私より恋愛下手がいるとはな」

「本当だよ。 これじゃカメさんの歩みだよ」

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