第2181話 今シーズンのメンバー
6月に入り練習が始まった西條アルテミス。
☆麻美視点☆
6月に入り、SVリーグ入りした我々西條アルテミス。 今シーズンの練習がスタートという事で、早速アルテミスドームに集まっている。
本日は6月3日火曜日ー。 練習には、チームマネージャーの前田さんもやって来ているー。 恐らく、本日早々にベンチ入り選手の発表があるものと思われるー。 ちなみに、ここには居ないが希望姉はベンチ入りに決定しているー。 幼稚園の先生のお仕事が忙しく、全試合に出ることが出来ない為であるー。 正L争いはクロエさん、牧田さん辺りが争う事になりそうですー。 Sの方はやはり眞鍋先輩が抜けているが、姫神さんも頑張って食らいついているのでチャンスはあると思われー。
OHは激戦区だ。 渚、佐伯和香先輩、天堂さんに海咲さん、高嶺さん等のハイレベルな選手がエースを狙っているー。 ここはやはり注目のポジションだ。 そして我々のポジションのMBは、私とマリエルさん、星野さん辺りが有力とされているー! 負けないぞー!
今日は皆の動きを見る為にチーム内紅白戦を行うー。
しっかりアピールして、スタメンの座を獲得するぞー!
「ちょいさー!」
「ちょいさー!」
「うぇーい!」
「な、何なのよこのデタラメなブロックは……」
「しかも全然抜けないですよ……」
「なは! なはは!」
今日は絶好調だ。 皆のスパイクをバシバシ止めていく私ー! アピール出来てるはずー!
「麻美! 私とも勝負や! おらっ!」
「ちょいさー!」
パァンッ!
渚のスパイクもしっかりブロックで勢いを止め、後衛のプレーヤーが拾って攻撃に繋がる。
「渚敗れたりー!」
「ぐぬぬ……妖怪め」
「人間だぞー!」
「いやいや、あんさんは妖怪の類いで間違いあらへんよ」
「ま、眞鍋先輩まで妖怪扱いするー?!」
むー。 私、人間ではないのかー?
◆◇◆◇◆◇
「という事で、今から来シーズンを戦っていく選手を発表します。 まず、OHですが…… 月島渚さんをエースに抜擢します」
「よっしゃっ」
渚はガッツポーズを見せる程喜んでいる。 おめでとう渚ー!
「他には佐伯和香さん、天堂さん、海咲さん、高嶺さん、石橋さん、甲斐さん、三嶋さんの8名」
ベテランさんの名前も数人上がる。 OH多いねー。
「MBは藍沢麻美さん、マリエルさん、星野さん、岸谷さん、北見さんの5名」
なはは! よゆー!
「Sは眞鍋さん、姫神さんの2名」
こちらも順当かー。
「Lはクロエさん、雪村さんの2名。 基本的にはこのメンバーで戦っていきます。 以上です」
試合のメンバー登録は大体12名から18名までとされており、チーム毎にその人数はまちまちだ。 また、どのポジションが何人いるかもチームよって変わるが、Lだけは規定で決まっているらしいー。 牧田さんはベンチ入り出来なくて残念がっているー。 愛弟子よ、頑張れー!
◆◇◆◇◆◇
練習を終えて「皆の家」に帰宅ー。
「おー、皆はスタメンになったんだね」
「よゆー!」
「OHは激戦区やったけど、エースを勝ち取ったで!」
「私は麻美先輩とマリエルさんの控えブロッカーですかね」
「いやいやー! 星野さんもスターティングで入る可能性ありー!」
星野さんの実力は世界の舞台でもしっかり通用していたし、十分に有り得るー。
「だと良いですが」
「天堂さんもとりあえずおめでとう」
「ありがとうございます」
「来年は私と冴木さんも参戦します」
「やります」
「うへー。 マリアが来るんやな……エース争いやばいな」
「何言ってんのよ。 来シーズンのエースは私よ」
「なはは! お姉ちゃんもう復帰する気満々ー」
「きゃはは! 奈々美なわけないじゃない? 来シーズンのエースは私」
「あら、じゃあ勝負ね」
「良いわよ」
バチバチ……
この二人のエース争いも熾烈だー。 中学、高校時代はずっとお姉ちゃんがエースをやってたけど、神崎先輩も月ノ木の隠れたエースとして活躍していた。 また、オリンピックでもエースに抜擢されるなど、実力は世界でもトップクラスだ。
「清水先輩はエース争いしないんですか?」
「私はエースって柄じゃないよ」
と、亜美姉はサラッと流した。 知名度、実力共に間違い無く世界一なのに、決してエースにはならない亜美姉。 曰く、自分はチームの精神的支柱になるようなプレーヤーではないとの事。
「そういうのは奈々ちゃんと紗希ちゃんに任せてきたからねぇ」
と、亜美姉は笑う。 月学でキャプテンに抜擢された時も、最初はあまり乗り気じゃなかったのだとかー。
「清水先輩って不思議な選手ですね……」
「ある意味エースより目立ってるしね」
「あはは。 私は世界一高く跳ぶだけのバッタだよ」
その世界一高くって言うのが、女子レベルではなく男子レベルな辺りが化け物じみているー。
「人間だよ」
「なは」
読心術まで身につけているー。
「何はともあれ、今シーズンは皆さんに託しますわよ。 SVリーグ入り初年度、しっかり結果を残して存在感を出していくのよー」
「はい!」
◆◇◆◇◆◇
カタカタ……
リビングで何やら作業をしている亜美姉を後ろから眺めている。 どうやら新作の小説を執筆しているらしいー。
「うーん」
「何か詰まったのー?」
「あ、うん。 ちょっとね。 競馬って客席からしか見た事無いじゃない?」
「うんー」
「実際に跨ってる騎手さんって、レース中どんな事考えたりするのかなぁって」
「な、なるほどー。 たしかにそれは経験者にしかわからない事だねー」
「何だよねぇ。 ここは一つ、インタビュー記事でも調べてみようかねぇ」
亜美姉はパソコンで調べ物を始める。
「競馬 騎手 インタビューっと。 おお、結構出てくるね」
亜美姉は順番にページを開きながら「ふむふむ。 なるほど」と頷き、メモを取っている。 こういう細かいところまで拘って書くからこそ、音羽奏の小説は完成度が高いのだろう。 同じ作家として、見習うべきところが多いー。
「ふむ。 騎手さんも色々考えて乗ってるんだねぇ。 これは参考になったよ。 ありがたや」
「なはは。 役に立たなくてごめんなさい」
「いやいや。 麻美ちゃんは話し相手になってくれてるだけで役に立ってるよ」
「邪魔じゃないー?」
「全然。 逆に捗るよ」
「な、なはは」
亜美姉はやっぱり変わっている人だ。 私がこの人みたいになれる日が来るのだろうかー?
麻美も無事ベンチ入り。
「奈々美よ。 まあ、麻美ならベンチ入りぐらいは余裕でしょ。 優勝ぐらいしてもらわないと」
「いきなりハードル上げるねぇ……」




