第2176話 新たなバイク仲間
弥生とキャミィがバイクを手に入れたようだ。
☆弥生視点☆
5月13日。 ウチとキャミィのバイクが到着した。
「どや、これがウチのバイクや」
「こっちがウチのヤ」
「カッコイイですね! 私のドルフィンはどちらかで言えば可愛い系統のフォルム何ですが」
「大型二輪はカッコええ方がええと思うてな」
「わかります」
とりあえず手に入れたわけやけど。
「どないして帰ろかいな」
「ワハハ」
まさかバイク買う事になるとは思わんかったからなぁ。 車で来とるしミアも送らなあかんし。 バイクは置いて帰って後日取りに来るしか……。
「バイクなら月島さんの家に送りますわよ」
「お? ほんまか?」
「ええ。 亜美ちゃん、手配を」
「もう終わってるよ」
「早っ?!」
「予想してたからねぇ」
「さすが亜美ちゃんですわね」
「いやいや」
予想してた言うても、普通先に手配するかぁ? ウチがバイクで帰る言うたらどないしたんや。
「今日帰るの?」
「そやな。 だいぶ長い事世話なったし」
「ワハハ。 かえったらオオソウジやな」
「やなあ」
「言ってくれればハウスキーパーさん派遣したのに」
「ええよ。 自分の家を人にいじられるんもあんま好かんし」
「そか」
「ほな、ぼちぼち帰ろか」
「ヤナ」
「わかりましタ」
キャミィとミアを車に乗せ、一ヶ月ぶりに東京の自宅へ戻った。
◆◇◆◇◆◇
それから一週間程経った5月20日。 バイクにも乗り慣れた頃に星野さんから連絡が来た。 どうやら麻美っちが免許を取って、バイクも手に入れたらしい。 無茶苦茶早いな。
てなわけで、バイクツーリングをする為に「皆の家」へとやって来たわけや。 忙しないなぁ。
「なはは! これが私の愛車! ウルトラアサミン号だー!」
「ネーミングはともあれカッコイイバイクやな」
「正式な名前はスーパー雷神ですね」
「ほならスーパーアサミンにしたほうがええやン」
「スーパーは他にあるからダメなのだー」
どれがどれやらわからんわ。 まあ、ええけどやな。
「麻美っちはもう乗れるんか?」
「はいー。 昨日ちょっと走ってみましたー」
「ほな大丈夫か。 このメンバーでの初バイクツーリングになるわけやな」
「感動です……」
「ワハハ」
普段は一人で走るらしい星野さん。 たまーに、ネット仲間と走る事もあるらしいけど、ほんまにたまーにって話や。
「行き先はどこがええかな?」
「今日は内房の方へ行きましょう。 まずは慣れる為に近場から」
「了解や」
「ガッテン」
「りょーかーい」
てなわけで、4人でのツーリングに出発や。 ちなみに出かける前に藍沢さんから麻美っちの事をよろしく頼まれたで。 まだまだ心配性は治らんみたいやな。 まあ、姉としては当然やけど。
ブォーン!
「おお、これだけのバイクがおったら壮観やな」
「ですね。 ではゆっくり行きましょう」
ツーリングに慣れとる星野さんを先頭に走り出したウチらは、すぐに街中へと入る。 麻美っちから借りたスピーカーとマイクで、走りながら会話出来るのが中々ええな。
「麻美っち、中々様になっとるやん」
「なはは。 バイクの運転の才能まであるとは、自分が恐ろしいー」
「ワハハ! アサミはいつもチョウシにのるナー」
「あんさんも人の事言えんわ」
「ワハハ!」
「やっぱり、他の人と走るのも楽しいですね」
星野さんも実に楽しそうに走っとる。 にしても、バイクで走るんも中々に気持ちええもんやな。 風を感じるっちゅうんか。 車では味わえへん爽快感やよ。 街中でこれやったら、海外沿いとかもっと気持ちええんやろな。 楽しみやで。
ブォーン!
ただ、信号待ちはきついな。 エンジンの位置が近い所為か、熱が直接伝わって来て暑い暑い。 こら夏場はかなり辛いやろな。
「なあ星野さん」
「はい?」
「これ、夏場はどないなん? やっぱり暑いやろ?」
「そうですね。 でも何だかんだ乗っちゃいすけど」
「楽しさの方が勝るっちゅうわけか」
「はい」
どうやら、ほんまにバイクで走るんが好きなんやな。 まあ、たしかにわからんでもないけど。
「麻美っち、キャミィ、ついてこれとるか?」
「よゆー!」
「ヨユー!」
「さすがやな」
バイクに乗り始めたばかりやけど、ウチもこの二人も結構乗れとるな。
◆◇◆◇◆◇
走り続けて海岸沿いに出るちょいと前にコンビニに入り休憩する。 水分補給と軽く口に入れられる物を食う。
「んぐ。 あっちにもバイク停まっとるな」
「お仲間さんでしょうか」
「なはは。 さっきお店の中で見たー。 女の人だったー」
「おお」
「結構おるもんなんやな」
「なはは」
「ワハハ」
「ここから海岸沿いまではもうちょっとですね」
「ほのかに潮の香りが漂ってきているー」
「シオのカオリやー」
たしかに、さっきから風に乗って潮の香りがしてきよる。 海はもうすぐそこっちゅうわけか。
「そういえば先程走ってる時に、暑いと仰ってましたね」
「そやね」
「信号待ちが特にー」
「エンジンあついデー」
「先日、西條先輩と清水先輩がサイジョーモーター本社に足を運んで、空冷システムを積んだバイクの開発に着手するように進言したらしいですよ」
「ま、また無茶苦茶な事させよるなあの二人は」
「なはは。 でも出来たらかなりの発明なのではー?」
「そうですねー。 今のところ暑さ対策はマシンの方では出来ないので、スーツやヘルメット等で対策していますので」
「そうなんやな」
「ウヘー」
「とはいえ、行き先やコースを選べば夏でも割と走れたりしますよ」
「そうなんか?」
「後は前日にしっかり体調管理するのも大事ですかね」
「なるほどな」
バイク乗りの知識を色々と聞かせてもらう。 車に乗ってるだけやと知らん事ばっかりやなぁ。
◆◇◆◇◆◇
コンビニから出て再び走り出し、数分程で海が見えてきた。 潮風を感じながら走るのは悪くないな。
「海だー!」
「うみヤー!」
「星野さんは海沿い走る事が多いん?」
「というより、時間が無い時は大体内房か外房ですね」
「そうなんや」
「後は奥多摩とかの方まで行きます」
「奥多摩といえば『時を越えて』もよろしくー!」
「ここにいるメンバーに宣伝してもしゃあないやろ」
麻美っちが書いた小説は、奥多摩が舞台やったな。 ここにおるメンバーは本も読んだし映画も見たから今更宣伝しても意味無いで。
「潮干狩りしとる客もおるみたいやな」
「みたいですね」
バイクを駐車場に停めて浜に下りる。 季節的にもええ感じやな。
「この辺りは私のお気に入りスポットなんですよ」
「ようくるんカ?」
「はい。 ここから見える夕日は必見ですよ」
「ほう。 時間的にはまだもうちょいあるな」
「近くにカフェがありますよ。 行きましょう」
「おお、ええな」
「イクゾー」
「オー」
夕方になるまで一旦喫茶店で時間を潰す事にするで。
麻美も凄い早さでバイクを入手。 ツーリングを楽しむ四人。
「奈央ですわ。 西條グループの技術力で何とかしますわよ」
「乗ってて暑くないバイク開発だよ」




