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第2174話 揚げ物に挑戦

「皆の家」の台所に来ている夕也。 久しぶりの料理教室のようだ。

 ☆夕也視点☆


 5月10日の土曜日だ。 今日は「皆の家」の台所に来ている。 そう、料理教室なのだ。


「今日もよろしくお願いします希望先生」

「はぅ。 いつも通りで良いよぅ」

「私はいつも通り監督だよ」

「亜美はそろそろ消化器を近くに用意するのやめてくれないか?」

「ダメだよ。 今日はトンカツだからねぇ。 遂に揚げ物が来てしまったよ」

「さすがに火事にはならんだろ……」

「甘いよ。 夕ちゃんがやるんだから何が起きてもおかしくないよ」

「信用ゼロか……」

「10くらいだよ」


 一応10はあるのか。 まあ、10程度では消化器は仕方ないかもしれないな。


「だはは。 あんさん、ウチらの邪魔はせんといてや」

「そうよ夕也」

「きゃはは。 今井君がんばー」


 ちなみに、他の台所係のメンバーも夕飯のトンカツを作るようだ。 俺が作るのは自分の分だけという事になる。 上手くいかなくても自分で責任を持って食うというわけだ。


「じゃあ始めていくよぅ。 まずはトンカツ用のお肉を用意だよぅ。 今回は西條グループの養豚場で育てられた、超高級黒豚らしいよぅ」

「さすがだな」

「買出しシステムで西條グループの各食材を取り寄せられるようになってるからねぇ」

「ふむ」


 さて、目の前にその超高級黒豚のトンカツ用が置いてあるわけだが、こいつをどう調理していくのだろう。


「まずはお肉に切り筋をつけるよぅ。 切れないぐらいに切り込みを入れるんだよぅ。 こんな感じ」


 と、希望が一回手本を見せる。 なるほど、ちょっと切り込みを入れるのか。


「何でだ?」

「きゃはは。 揚げた時に縮むのを防止すんのよー」

「なるほど。 揚げた時に縮むのか。 サンキュー紗希ちゃん」

「がんばー」

「さ、やってみよぅ」

「おう」


 これぐらいは余裕だぜ。


「何で亜美は救急箱持って来てるんだ?」

「一応ね?」

「……」

「亜美、本当に夕也への信用10なのね」

「そうだよ」


 ふん。 ナメるなよなー。 肉に切り込みを入れるぐらいわけないっての。


「よし完璧だ」

「うんうん。 次は塩胡椒をして全体に馴染ませた後、包丁の背中で軽くお肉を叩いて形を整えるよぅ」

「そんな事してんだな。 まずは塩胡椒して馴染ませて……」


 トントントントン……


 周りの皆も包丁の背中で肉を叩いている。 なるほどな。 じゃあやるか。


 トントントントン!


「はぅっ! 強すぎるよぅ!」

「さすが夕ちゃんだよ! やはり何処かでボロが出るんだよ!」

「ぐぬぬ」

「きゃはは。 あんまり潰すと厚みも無くなって、食べ応えも無くなるわよ」

「く、くそー」

「まあ、それぐらいやったらまだ大丈夫や」

「だよな!」

「と、とりあえず次に進むよぅ」

「おう」

「まずは薄力粉の上に置いて満遍なく塗していくよぅ」

「ふむ。 ふぁさー」

「出来たら手で軽く叩いて余分な粉を落とし、次に卵の中に潜らせる」

「おう」

「これも満遍なくねぇ」


 しっかりと卵を着けてだな。


「次はパン粉の上に乗せて、やはり満遍なく塗していくよぅ」

「なるほど。 卵が接着剤の役割も担ってるのか」

「出来たら軽く叩いて粉を落とす」

「うむ。 オッケーだね」


 ジューッ!


「む? 既に誰かが揚げ始めてるな?」

「紗希ちゃんだね。 さすがに早いよ」

「きゃはは」


 コンロは4つ、8対あり空きはあるので俺も揚げの作業に取り掛かる。


「消化器準備!」

「あのなぁ」

「だはは! まあ、用心するに越した事あらへんからな」

「そうだよ」

「……」

「ま、まずは160℃ぐらいの温度で揚げていくよぅ」

「うむ。 ところで、油の温度ってどうやって見てるんだ?」

「きゃはは。 慣れた人は油の中に菜箸を入れて、泡の出方で大体判断するわ」

「そやな。 菜箸からゆっくりと泡が立つぐらいが大体160℃前後や」

「なるほど。 やってみるか」


 菜箸を油の中に入れてみると、小さな泡がゆっくりと上がってくる。 なるほどな。


「ちょうど良いぐらいかなぁ。 じゃあ揚げていこう」

「おう!」


 ジューッ!


「良い音だな!」

「衣が狐色になるぐらいまで揚げたら一旦取り上げて油を切りながら、油の温度が180℃になるぐらいまで上げるよぅ。 180℃まで揚げると菜箸からは絶え間なく泡が出るようになるよ」

「ふむ」


 しばらく待ち、菜箸を油に突っ込むとたしかに泡の勢いが強くなっている。 なるほどなー!


「よし、じゃあ二度揚げするよぅ」

「おう」

「二度揚げは本当に数十秒ぐらいで良いわよー」

「やな。 頃が良い感じに狐色になるぐらいまでや」

「了解だ」


 油の中にカツを入れ、数十秒待機。 綺麗な狐色になってきたところで油から上げてバットの上で油を切る。

 最後に包丁で切り分け、トンカツソースをかければ完成だ。


「で、出来た……」

「きゃはは! おめでと! 揚げ物もとりあえずは出来るわねー」

「ぅんぅん。 良い感じだよぅ」

「消化器の出番が無くて良かったよ。 夕ちゃんへの信用が15に上がったよ」

「5しか上がらないのか?!」

「うん」


 まだまだ亜美から見れば信用度は低いようだ。 結構成長したと思うんだがなあ。


「まあ、こっから上げていけばええやん」

「そーよ。 家事が出来なかった頃から比べたら凄い進歩よん」

「そうね。 私はかなり見直してるわよ」

「奈々美はわかってるな」


 やはり亜美が厳しいだけなのではないだろうか?



 ◆◇◆◇◆◇



 夕飯の時間だ。 さて、俺が自分で作ったトンカツはどんな揚がり具合だろうか。


「いただきます」

「いただきます!」


 ではまず一口。


 サクッ……


「う、美味い!」

「なはは! 私にも一口ー!」

「おう、良いぞ」

「ありがとー!」


 麻美ちゃんと一切れ交換する。 麻美ちゃんも一口食べると「うむ! 美味しい!」と評価する。


「まあ、お肉が超高級だし、凝った味付けするわけでもないから。 不味くはならないわよね」

「奈々美。 それは言うな」

「きゃはは! でもまあ、焦がしたりしなかったし良かったんじゃん」

「それは評価点ね」

「だねぇ」

「ふん。 トンカツもマスターしてしまったな。 だいぶレパートリーが増えたんじゃないか?」

「えーと、親子丼、チャーハン、オムライス、だし巻き玉子にカレーライスにトンカツかな? うんうん。 丼物、炒め物に焼き、煮物に揚げ物と良い感じだね」

「ぐわはは! 自分の才能が恐ろしい!」

「今井君も結構アホなんやな」

「うん。 すぐ調子に乗るんだよ」


 何を言われようが、自分が成長していると感じているので調子には乗らせてもらう。 希望は次に何を教えようか思案しているようだ。


「遥よりは優秀よね?」

「何?! 私より優秀だと?!」

「遥ちゃんに料理教えていた頃は大変だったよ」

「ま、まあ……色々やらかしたからなぁ。 でも今は違う!」

「うん、わかってるよ。 今は問題無しだよ。 夕ちゃんも早く遥ちゃんぐらいになってね」

「まあ、任せておけ」


 とりあえず子供が産まれるまでに亜美の信用度を上げて、家事を任せてもらえるようにならないとな。

揚げ物も出来るようになりレパートリーの幅が増えた夕也であった。


「奈々美よ。 夕也も結構やるわね」

「信用15まで上がったのは凄いことだよ」

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