第2149話 皆さんお上手
天堂星野ペアの歌の実力やいかに?
☆亜美視点☆
のど自慢大会も私達「ミルフィーユ」のパフォーマンスが終わり、天堂さん星野さんペアがステージに上がっている。 あの二人の歌はまだ聴いた事が無く、とても楽しみである。
「こんなイベントに参加しようというぐらいだし、それなりに自信あるんじゃないかな?」
「どうだろぅ」
客席に戻って来た私達は、二人のパフォーマンスが始まるのを待っている。
「皆さんこんにちはー。 天堂千空です」
「星野光です」
二人共実に綺麗な名前をしているのである。
「私達はワールドカップバレーの応援歌にもなっていた、姫百合凛さんの『光』を歌いたいと思います」
「ご本人の前で歌うのは緊張しますけど……」
「緊張せず頑張って下さい。 ご本人がここで見てて上げますから」
「プ、プレッシャー……」
姫百合さんご本人の目の前で歌うのは中々に緊張するだろうねぇ。
「では、お聴き下さい!」
意を決して、二人は姫百合さんの持ち歌「光」の歌唱を始める。 二人の歌を初めて聴く私達は、その歌唱力に驚いた。 星野さんは実に力強い歌い方で天堂さんを引っ張り、天堂さんはその優しい歌い方で星野さんを引き立てている。 息の合ったデュエットだ。
「普段からカラオケとか行ってたりするのかしら、あの二人?」
「どうなんだろうねぇ」
でも、お互いに自分の歌声の役割をちゃんと把握しているところを見ると、恐らくは二人で一緒に歌った経験があるのだろう。
「これはまたゆりりんがスカウトしようとするに違いないー」
「多分するやろなぁ」
麻美ちゃんと渚ちゃんが言う通り、姫百合さんは自分が良いと思った人にはすぐにスカウトをかける。 あの二人もこの後でスカウトされるに違いないよ。
「ありがとうございました!」
パチパチパチパチ!
二人のパフォーマンスが終わり、次の人がステージに上がるまでには少し時間が空く。 次はキャミィさんミアさんのペアかな。 あの二人も歌がとても上手いんだよ。 ミアさんは透き通るような綺麗な歌声を持っているし、キャミィさんは普段カタコトっぽいのに歌
になると流暢になる。 キャミィさん、普段はワザとカタコトで話してる説があるよ。
「あ、天堂さん達が戻って来たよ」
「なはは。 おかえりー」
「ただいま戻りました」
「どやった? 姫百合さんにスカウトされへんかった?」
「あー……されました」
「『素晴らしい歌声でした! 是非歌手デビューしましょう!』って凄い勢いで……」
「はあ、あのアイドルは……」
「おほほ。 面白い方ですわね」
面白いかなぁ? まあ、楽しい人ではあるけど。
「次、キャミィとミアやろ?」
「うん」
「何歌うのかしら?」
「さあ?」
さて、そんな二人がステージに上がり挨拶を始めた。
「こんにちハ! アメリカ出身のミア・ホワイトでス!」
「アメリカしゅっしんのキャミィ・キャンベルやデ!」
「おお……アメリカ人ー!」
「ミアちゃん可愛いー!」
ミアちゃんにはいきなり男性ファンがついたようだ。 とても可愛らしいからねぇ。 ミアさんは顔を紅くして「はわわ」と、狼狽えている。 それを見てまたファンが増えるのであった。
「私達が歌うのは、姫百合さんの『この星に生まれた』でス」
「ワハハ! ユリリンにんきものやナ」
「またまた本人の前で歌われるんですね。 楽しみです」
姫百合さんの「この星に生まれた」は、姫百合さんのサードシングルの曲だったかな。 奈々ちゃんのレパートリーにも入っているのでよく知っているよ。
キャミィさんとミアさんのデュエットも息の合った歌唱で、観客を虜にしている。 やはりミアさんの歌声は綺麗だねぇ。 キャミィさんも日本語が流暢になっているよ。 謎である。 そしてさすがは英語圏出身の二人で、英語の歌詞の部分はとても発音が綺麗だ。
「サンキュー!」
「ありがとうございましタ!」
パチパチパチパチ!
「ミアちゃん可愛いぞー!」
「はわわ」
ミアさんは更にファンが増えているようである。 大変そうだねぇ。
◆◇◆◇◆◇
私達のグループのパフォーマンスを終えて、皆観客席に戻って来ている。 他のお客さん達のパフォーマンスを楽しんでいるよ。
「小さな子供もいるんだねぇ」
「可愛いよなぁ」
「可憐もその内あんな風に歌ってくれるかしら」
「うーたー」
「歌だねぇ」
可愛いねぇ。 姫百合さんは可憐ちゃんにまで唾をつけていたけど、誰でもスカウトするんだねぇ。
「この子達で最後かしらね」
「そうみたいですわよー。 時間も中々良い時間になってるわね」
どうやらのど自慢大会もクライマックス。 最後はゲストのブルーウィングスさんと姫百合さんによるデュエットが披露され、まるで大きな会場の生ライブのような盛り上がりを見せるのだった。
◆◇◆◇◆◇
「皆さんお疲れ様ですわ」
「いえいえ。 こんな楽しいイベントに参加出来て良かったです」
「だよね」
ゲストで参加していたブルーウィングスと姫百合さんに合流し労いの言葉をかける。
「皆さんの歌があまりにもお上手で、スカウトに余念が無かったです」
「姫百合さん、知らない人までスカウトしてたんじゃないでしょうね?」
「もちろんしました!」
「なははははは!」
「アイドル辞めてスカウトにでもなった方が良いのでは?」
前田さんにズバリ言われてしまう姫百合さんだが、彼女はまだまだアイドルを続けるつもりとの事。 最近は女優の道も進み出しており、日本の芸能界の頂点に君臨する日も近そうである。
◆◇◆◇◆◇
お花見とのど自慢大会が終わり、そろそろ帰ろうとしていると、姫百合さんとブルーウィングスの皆さんも何故かひょこひょことバスまでついて来ていた。
「皆さん、ロケ車はあっちの駐車場じゃないんですの?」
「いえ。 あのお屋敷について行くのでこちらで合ってます」
と、姫百合さんは何食わぬ顔でそう言った。 それに続いてブルーウィングスの子達も「うんうん」と頷く。
「あ、あなた達ね……ロケ車の方はどうするの? マネージャーさんとかは?」
「大丈夫です。 言いくるめてやりました」
「うんうん」
「だははは! おもろいなあ、このアイドル達は」
おもろいとかおもろくないの話では無いと思うけどねぇ。 まあ、こうなってしまうと放って行くわけにもいかないので、仕方なく皆もバスに乗せて「皆の家」へと向かうのだった。
◆◇◆◇◆◇
「ブルーウィングスの子達も、この先輩アイドルの自由奔放さは見習っちゃだめよ?」
「でも、楽しいですよ?」
「ダメだこりゃ」
どうやら既に手遅れの様子。 先輩アイドルの悪いところまで見習ってしまったようだ。
マネージャーさん達には同情するよ。
尚、いつも勝手なことをしている姫百合さんは、毎度後から説教されるのだとか。 何故それで治らないのか甚だ疑問であるが、本人から「性格です」と言われてしまい納得するしかないのであった。
皆歌が上手くて姫百合さんもスカウトに大忙し。
「希望だよぅ。 私も園児からお歌がお上手って言われるよぅ」
「希望ちゃんも普通にお上手だよ」




