第2144話 実は双子
部屋で何やら悩んでいる様子の紗希。
☆紗希視点☆
4月13日の土曜日。 今日はお仕事も休みで亜美ちゃんの誕生日パーティーをやる事になっているわよ。
「はあ……そろそろ裕樹には伝えなきゃいけないわよねー。 結構前には判明してた事だし……」
私は「皆の家」の自室で独りごちる。 その私の手には、二冊の母子手帳が握られている。 何故二冊もあるのかというと、私のお腹の中には二つの新しい命が宿っているからよ。 一卵性双生児で性別はまだ確定ではないけど、女の子っぽいとの事。
「裕樹、双子だってわかったら日和って逃げたりしないかしら……」
私はそれが心配なのよね。 あいつ、結構ダメダメな男だし。 ちなみにこの事は奈央や他の皆にもまだ話をしていない。 誰から裕樹に漏れるかわからないから。
「でもやっぱり、ちゃんと話さないとダメよね。 よし、今日の誕生日パーティーの時に皆に話そう」
私は裕樹を信じているわよ。
◆◇◆◇◆◇
「亜美ちゃん、誕生日おめでとうー!」
「ありがとう! 嬉しいねぇ」
夜になり、皆集まって亜美ちゃんの誕生日を祝う。 ついでに来週の今井君の誕生日のパーティーも兼ねているわ。 今日のメンバー草津旅行に行ったメンバーが集まっている。 東京組もわざわさ来ていて、正に勢揃いよ。
「なはは! 亜美姉おめでとうー。 これ誕生日プレゼントだぞー」
麻美は早速プレゼントを渡しているわ。 亜美ちゃんは「おお、ありがとう!」と、笑顔で受け取る。 ちなみにプレゼントの中身は可愛いイヤリングだったみたいね。 麻美やるわね!
さて、パーティーも始まったし、中にはお酒を飲む人達もいるから早めに私の話を聞いてもらいたいわ。 裕樹がどういう反応するか……。
「皆、ちょっと良いかしら?」
「ほん? どないしたん紗希?」
私が話を切り出すと、皆が一斉に私の方に注目する。 裕樹も当然だけど、私の顔を見て首を傾げているわ。
「実はさ、皆に黙ってた事があってさ」
私は自分のバッグから二冊の母子手帳を取り出して皆に見せる。 皆はポカンッとした表情を見せている。
「二冊って、まさか紗希ちゃんのお腹の赤ちゃん、双子なの?」
亜美ちゃんが気付いて正解を言ってくれた。 皆は「おー! 双子?!」と、驚きの声を上げる。 気になる裕樹の反応は……。
「双子? 本当か紗希?」
「ええ、一卵性双生児よ。 性別はまだ確定はしてないけど、見た感じ女の子の可能性が高いみたい」
「おお! 女の子の双子!」
「楽しみですわね」
「うん。 ゆ、裕樹は? 双子って聞いてどう思う?」
「え? 嬉しいけど?」
「本当? 双子とか養うの大変で逃げ出そうとか思ったりしてない?」
「いや、そんな心配はしてないよ。 僕達結構稼いでるから、生活は何とかなると思ってる」
「ほっ」
「紗希ちゃん、それが心配で言い出せなかったの? 裕君はダメダメな男だからね」
「そーなのよ!」
「何気に酷いな君達は……」
「でも良かったわ……逃げるって言い出したらどうしてくれようかと」
「そないな事言わせるわけあらへんやろ。 ウチらがふん縛って逃げられへんようにしたるわ」
「そうですわよー!」
「み、皆怖いなぁ……」
「双子かあ。 楽しみだねぇ」
「ええ。 今からワクワクするわよ」
「うんうん。 私の方は一人っ子だよ」
「ほっ」
「あ、夕ちゃん今ほっとしたね? まさか双子だったら逃げ出してたんじゃないの?」
「い、いや、逃げないが?!」
「なはは! 逃がさないぞー!」
「だから逃げないが?!」
とりあえず裕樹は「二人で頑張ろう」と言ってくれて一安心よ。 安心したし、この話はここら切り上げて亜美ちゃんの誕生日パーティーを再開ね。
「皆、話聞いてくれてありがと! あとは亜美ちゃんの誕生日パーティーをしましょ!」
「おー!」
「うめー!」
「だな!」
◆◇◆◇◆◇
パーティーが始まると、各々が自由に喋り出す。 いやいや賑やかね。
「にしても双子ちゃんかー。 紗希ちゃんに似たら美人姉妹になるね」
「女の子の可能性高いんだっけ?」
「ええ。 次の検診でほぼ確実にわかると思うわ」
「私も早く知りたいよ」
「そうよね」
と、女性陣は赤ちゃんの性別が気になって仕方ないみたいよ。 皆して女の子が良いと言っている中、奈央は跡継ぎの男の子が良いと言っている。 別に女の子でも良いけど必ず長男に継がせたいみたい。
「そういえば武下君。 弥生ちゃんとはどう?」
「月島さんとはまあ、今まで通りかな」
「相変わらず週末には家に来て飯食って帰りよるで」
「デートとかしないわけ?」
「たまにやな」
「こっちが結構忙しくて」
「学校の先生だものね」
弥生のところは相変わらずっぽいわね。 どっちものんびりしてるわ。 こりゃあ結婚とかまだまだ先になりそう。 結婚と言えば……。
「舞ちゃんのとこは6月に入籍だっけ?」
「うん」
「そうなのか井口君」
「はい」
「式を挙げるなら是非西條ブライダルへですわよー!」
「あはは。 亜美ちゃんにも言われました」
「さすがは我が第一秘書」
「えっへん」
舞ちゃんのとこは安泰そうね。 やっぱり問題は弥生のとこか。
「そや。 今年は花見どないするん?」
「あ、そうそう。 それでしたわー。 花見、明日のお昼に湖の公園の私有地でやりますわよ」
「明日?!」
「ワハハ!」
「聞いてへんで」
「言ってませんでしたわ。 ごめんなさい」
「ま、まあ、明日は日曜日だし皆が今ここに集まってるから良いんじゃない?」
「そうだね? 参加する人はここに泊まっていけば良いからね」
急に明日が花見となった私達だけど、どうやら今いるメンバーは全員参加出来そうとの事。 明日は賑やかな花見になりそうね。
◆◇◆◇◆◇
亜美ちゃんの誕生日パーティーも終わり、私と裕樹はこのまま「皆の家」に泊まる事に。
「きゃはは。 結局皆が残ってるのね」
「そだねぇ。 お風呂待ちの列だよ」
「さすがにこれだけ多いと、6人用の浴場ではちょっと足りなく感じますわね」
「まさか、あの浴場でも足りない日が来るとは……」
「普段は広過ぎるぐらいなんですけどね」
「そうですね」
この屋敷に住んでいる前田さんとマリア。 基本的には二人で一緒に入ってるらしいわよ。 仲良くしてるみたいね。
「そういえば、二人意外にここに住もうとか考えてる人はいないのかしら?」
ふと疑問に思って口に出してみた。 すると……。
「実は今ちょっと考えてまして」
と、手を上げたのは天堂さん。 今の部屋より明らかに良い家なので、前向きに検討しているみたい。 奈央は「いつでも入居オッケーですわよ」と、軽く言っている他、前田さんとマリアさんも同居人が増えるのは大歓迎と、天堂さんの背中を押していた。 更に星野さんも手を上げ、意外にも入居希望者がいるという事がわかったのだった。
双子問題も無事解決して一安心の紗希であった。
「紗希よ。 はー、良かった。 安心したわ」
「柏原君、結構普通だったね」




