第2129話 麻美と渚の勝負
岩盤浴中の亜美達。
☆亜美視点☆
草津のスパ施設へやって来た私達は、内部で自由行動を開始したよ。 私は奈々ちゃん、麻美ちゃん、希望ちゃん、天堂さん、星野さんのメンバーで行動中。 天堂さん、星野さんは私達を大先輩と呼び神格化しているようだけど、この機会にもうちょっと親睦を深めて仲良くなりたいと思っている。
現在岩盤浴をしている私達。 妊娠中はあまり良くはないとは聞いてるので、岩盤浴の時間は短めにする予定だよ。 岩盤浴に来ると、先客で紗希ちゃんと奈央ちゃんが居たので、少し一緒に過ごす事にするよ。 二人は10分程前に来たらしいので、一旦岩盤から離れて椅子に座っている。
「ところでさー、どうして私達は大先輩なんて呼ばれ方してんのー?」
紗希ちゃんが天堂さんと星野さんに質問をする。 まあ、今更な気もする質問ではあると思うけど、紗希ちゃんは気になるらしい。
「大先輩の世代のバレーボール部は伝説の中の人みたいなものになってまして……」
「月ノ木のレジェンドですからね。 それに麻美先輩の世代が『先輩』で、更にその先輩に当たる方々だからというのもありますね」
「そういえばレジェンドって言われてたわね」
「おほほ。 まあ、悪い気はしないですわよね」
「ま、まあそだねぇ。 ただ、別にそこまで凄いかと言われると」
「いやいや。 バレーボール部最強時代を作っただけでも凄いですよ」
「それに、バレーボール以外でも色々伝説が残ってるんですから」
「そんな無茶苦茶な事した覚えないんだけどねぇ」
割と普通に学園生活を送っていた記憶しか無いんだけど。 何かあったかなぁ?
「清水先輩と藍沢先輩は他校の男子の告白も千切っては投げていたとか……」
「千切っては投げていたというか……」
「まあ」
「きゃはは。 しょっちゅう呼び出しされてたわよね」
「300人からは数えてないよ」
「私も」
「やはり伝説……」
「凄過ぎる……」
うん? 何か私達、普通じゃなかったのかな?
「なはは! 亜美姉とお姉ちゃんは伝説ー」
「うーん……」
まあ、別にいっか。 今あの学園で私達がどういう扱いされているかは気にしても仕方ない事である。
「ちなみに、麻美先輩はとてつもない変人扱いされています」
「なぬー?! 私が変人扱いー?!」
「きゃはは! そっちの話の方が面白そうなんだけど!」
「麻美が変人なのは当たってるじゃない」
「何が変人なのかー!?」
「走る時はいつも爆笑してるとか。 文化祭のアピールでエアガン撃ち出すとか、色々と噂話が」
「噂話じゃなくて全部事実ですわよ」
「ぐぬぬー」
「あはは」
たしかに麻美ちゃん、ちょっと変なところあったもんね。 未だに走りながら爆笑するのは理解出来ないよ。
◆◇◆◇◆◇
岩盤浴で汗をかいた私達は、そのままサウナに移動したよ。 サウナにも先客がいて、弥生ちゃん、渚ちゃん、キャミィさんが座っている。
「おお、亜美ちゃんも我慢くらべ勝負せえへんか?」
「しないよ……身体に悪いよ」
「だはは! まあ、そらそやな」
「ワハハ」
「私は別に勝負してへんで……」
「渚ー! 私と勝負だー!」
「臨むところや!」
ありゃ。 麻美ちゃんに勝負を挑まれたらすぐに受けるんだねぇ。 渚ちゃんはずっと麻美ちゃんをライバル視してるもんねぇ。
「じゃあまずは渚一旦出ろー! 渚が水風呂で整ってからスタートするぞー」
麻美ちゃんと渚ちゃんは一旦サウナ室から出て行く。 ちゃんと公平に勝負する辺り、麻美ちゃんもしっかり渚ちゃんをライバルと見ているようである。
「麻美先輩と渚先輩はずっとあんな感じなんですか?」
天堂さんが私達に質問をしてきたよ。 良いねぇ。 かなり緊張も解れてきたと見えるよ。
「そだねぇ。 大体あんな感じだよ」
「渚先輩は実家京都ですよね? どうして月学に来たんでしょう?」
「あー、それは」
「あれはな、ウチと比較されんのが嫌でウチと同じ京都の学校を避けたんや」
代わりに答えたのは弥生ちゃんであった。 たしかそんな理由だったね。 当初は渚ちゃんと弥生ちゃんの仲が悪いのかと思ったよ。
「そうなんですね」
「まあ、ヤヨイとヒカクされたらたまらんやろナー。 バケモンやしナ」
「ウチがバケモンやったら亜美ちゃんどないなんねん」
「人間だよ」
隙あらば私を人外にしようとするんだから……。
ガチャ!
「なはは! 勝負だー!」
「麻美には負けへんで!」
どうやら勝負が始まったらしい。 私達は適度にサウナと水風呂を往復しながら、二人の我慢比べを見守る事に。
「二人共、意地張るのも良いけど体調がおかしくなりそうだったらすぐに外に出るのよ?」
「なはは」
「はい」
「だはは。 渚、負けたらあかんで」
「わかっとる」
「弥生ちゃんってばすぐに煽るんだから」
「月島家家訓!」
「受けた勝負には全力を出して勝て!」
「なはは!」
「何よそれ……」
「ウチらの家の家訓や」
まさかそんなものがあるなんて。 初めて聞いたよ。
「バカらしいわね」
「ははは……」
「凄い家ですね……」
ま、まああの親なら有り得るのかな?
と、一度会った事があるだけの弥生ちゃん達の親を思い出すのであった。
「なーははなーははサウナー風呂ー」
割と時間が経ったが、麻美ちゃんはずっとニコニコ顔で座っている。 まるで快適空間で過ごしているかのようだ。 対して渚ちゃんは座禅を組み目を閉じて座る。 心頭滅却という事だろうか? しかし、表情の方は少し辛そうである。
「なはは」
「……」
「凄いですね……二人共」
「意地のぶつかり合い……ですかね?」
「どう見ても意地張ってんのは渚だけでしょ」
「麻美っち、めちゃくちゃ余裕あるやん」
「ワハハ」
私達は既にサウナと水風呂を二往復しているのに、その間もこの二人はずっとサウナに篭っている。
「二人共大丈夫なのぅ?」
「よゆー」
「だ、大丈夫です」
あー、かなり差があるねこれ。 二人には適当なところで打ち切らせないと、渚ちゃんがちょっと危ない感じだよ。
「なはは。 渚、もう出た方が良いのではー?」
「は、はん! そないな事言うて、麻美もほんまはきついんやろ? 先に出たらどないや?」
「ほへー? 全然きつくないぞー?」
「麻美先輩の身体ってどうなってるんでしょうか?」
「バレーボール部でも一人でずっと練習してましたよね?」
「うん」
麻美ちゃんは実はとんでもないスタミナお化けなのは私も知っているけど、それと今のこれはまた別の話な気もする。
「なははー。 仕方ないなー。 じゃあ私が出るー」
と、麻美ちゃんは立ち上がって「なはは」と笑いながらサウナを出て行く。
「わ、私の勝ちや……」
「だはは! どう考えても麻美っちの勝ちやな!」
「だねぇ」
麻美ちゃんは渚ちゃんの身体を案じて先に出る事を選んだのだろう。 そういう子なのである。
渚ちゃんはフラフラとしながら、麻美ちゃんの後に続いてサウナを出て行く。 私達も外に出ると、麻美ちゃんと渚ちゃんは、水風呂でも勝負を始めていた。 何やってるんだろうねぇ。
麻美の身体はどうなっているのか?
「希望です。 麻美ちゃんも謎だらけだよぅ」
「私は普通だよ」




