第2124話 宏太と美智香は昆虫博士
次は昆虫館に向かう一行だが、女性陣の中には虫には興味が無い者も。
☆弥生視点☆
草津に来たウチらは、西條グループが運営する植物園を観光した。 亜美ちゃんの植物に関する知識の広さと深さに脱帽したウチらは、次の場所へ移動するで。 どうやらこの植物園には昆虫館なるもんが併設されとるみたいや。 次はそこに行くで。
「女子は昆虫とか興味無いわよー」
「ま、まあまあ。 さっきは植物園に男子が付き合ってくれたわけだし」
「そうだぜ」
「それに、私は昆虫も興味あるわよ」
「私もだぞー!」
女子の中にも昆虫に興味のある人はおるみたいや。 ウチはまあ、どっちか言うたら興味はある方やな。 好きかて訊かれたら別に好きではあらへんけど。
「ささ、入り口はこっちだよ」
「はいよー」
亜美ちゃんと西條さんの後に続いて中に入って行くで。 入り口がクワガタのツノみたいになっとるんは凝っとるな。
「さあ、宏ちゃん出番だよ」
「数少ない活躍の場よね」
「きゃはは。 頑張ってちょー」
「俺はそこまで昆虫に詳しいってわけじゃないぞ……まあ、ペットショップで扱ってはいるからそれなりにはわかるが」
「私はペットショップで働いてても、虫の事はよくわからないですけどね」
と、前田さん。 あまり虫のコーナーには近付かへんみたいやな。 亜美ちゃんからは「出入り口の前田さん」とか呼ばれとるけどどういう意味なんやろか?
「まずは昆虫といえばこれ。 カブトムシのコーナーですわね」
「なはは。 カブトムシー」
「カブトムシね。 あれ? ツノが無いのがいるけどあれもカブトムシなのん?」
紗希がケースの中のカブトムシを見ながら疑問を口にする。 あれやったらウチも知っとるわ。
「あれはカブトムシのメスなのよ」
「メスなのね」
答えたのは美智香。 親の実家がほんまにど田舎らしく、小さな頃は虫捕りとかにも行ってたらしいで。 日本の主要な昆虫ぐらいやったら大体わかるみたいや。
「ツノが無いからボウズなんて呼ばれたりするんだぜ」
「ハゲじゃないだけマシね」
「だ、だねぇ」
カチッカチッ
「はぅ。 あっちでカブトムシ同士が相撲してるよぅ」
「ありゃエサの取り合いしてるんだよ」
「ケンカせず仲良く食べれば良いのに……」
「野生動物の世界じゃあれが普通なんだ」
「厳しい世界だよぅ」
雪村さん、カブトムシのエサの取り合いにめっちゃ感情移入しとるで。 面白い子やなぁ。
「次はクワガタムシですわね」
「これもまあ昆虫としてはポピュラーだよね」
「ペットショップとかでも良く売ってるわよね?」
「カブトムシと人気を二分する昆虫だな」
「日本のクワガタムシはカブトムシと違って色々な種類がいるんですね」
マリアも何やかんや言うて昆虫に興味津々やな。 にしてもほんまに色々な種類のクワガタがおるんやな。
「だな。 良く図鑑の表紙とかになるのがこいつ。 ノコギリクワガタだ」
「カッコイイわよね、ノコギリクワガタ」
「ツノがノコギリの刃みたいにギザギザってなってるのね」
「くの字にグイッて曲がってるのもポイントが高いのよ」
美智香、めっちゃ嬉しそうやん。 好きなんやな、こういうの。 東京みたいな都会やと中々見られるもんやないしな。 田舎が恋しくなるやろに。
「ちなみに、ツノじゃなくて大顎って言うのよ」
「顎なのあれ?」
「なはは! あのクワガタ顎外れてるー!」
麻美っちが指差した先におるノコギリクワガタは、大顎を大きく開いて立ち上がるような素振りを見せている。 あれは多分、威嚇のポーズなんやろな。
「これこれ。 ノコギリクワガタが一番カッコイイポーズ」
「たしかにカッコイイな」
「あの姿を見て何かに見えないか?」
「うーん」
顎を目一杯に開いたノコギリクワガタを皆で眺める。 何かに……。
「おお、牛に見えるで」
「確かに」
「だろ? 愛好家の間ではウシって呼ばれたりしてるんだ」
「へー」
なるほど。 見た目でそういった別名とかも付いたりするんやな。
「次はミヤマクワガタだな!」
「これも人気の高いクワガタね」
「おー、大きいー」
「デカイやつは日本のクワガタの中でも最大クラスになるな」
「私はこっちのが好きかも」
ウチもどっちか言うたらこいつの方が好きやな。 渋い色してなんやカッコええ。
「こいつは気性が荒くてな。 すぐに他の昆虫に絡んでいくんだ」
「輩だな」
「そうだな。 他のクワガタと一緒のケースで飼うとすぐケンカしてやっちまうんだ」
「強いんだねぇ」
「頭のとこがなんか被ってるみたいになってるっしょ?」
「本当だ」
確かに顎の根本から頭を覆うように何か被ってるように見えるな。
「ヘルメットみたいだからヘイタイって呼ばれてんのよ」
「ヘイタイかー。 何か強そうー」
「人気があるのも頷けるな」
たしかに。 これやったら世のガキンチョ達からは人気あるやろな。
その後もクワガタコーナーが続くで。 ほんまに色々なクワガタがおるもんやな。
「これが一時期クワガタブームを巻き起こした通称黒いダイヤ、オオクワガタだ」
「おお、これが噂のオオクワガタかいな」
「ダイヤなんカ?」
「30年以上前にはこれの80mmクラスのサイズの野生個体がとんでもない金額で取り引きされてたらしいぜ」
「1000万とかの記録もあるらしいわよ」
「は、はあ?」
「こ、こないな虫が1000万やて?」
「そりゃ黒いダイヤなんて呼ばれるわけね」
さすがにその話には度肝を抜かれてもうたで。 中には一攫千金を夢見て、林に入って行く人間もおったらしい。
「だがな、そういう人が増えたせいで林の木が傷つけられたりして、色々問題も多かったらしいぜ」
「そ、そうなのね」
「人間の欲ってのは周りを見えなくさせてしまうものなんですね」
「だな」
「さて。 他も見に行きますわよー」
次はなんか人が少ないコーナーやな。 何なんやろ……。
「う、うわわ?! ハチさんだよ!」
「でかっ! こんなハチ日本にいんの?」
「これは日本固有種かつ、世界でも最強と名高いオオスズメバチよ。 割と都会でも見たりするけど知らない?」
「知らないわよ?!」
「でもこれがオオスズメバチか。 確かにとんでもない威圧感があるな」
「極めて攻撃的で毒性も強い、神経性の毒で身体の麻痺を引き起こすから、一人でいる時にこいつに刺されたらまず助からないぞ」
「ひ、ひぃ……怖いよぅ」
「だねぇ……」
まだ野生で見た事あらへんけど、この姿を見たらとにかく離れた方が良さそうやな。
スズメバチと言うてもその種類は多岐に渡るらしい。 数種類おるスズメバチ達がケース内に展示されているのを横目に、次のコーナーに向かう。
「次のコーナーは蝶々ですわね」
「ほっ。 怖い虫じゃなくて良かったよぅ」
「なはは。 希望姉は怖がりー」
「はぅ」
「蝶々は綺麗だねぇ。 あれはよく見るアゲハ蝶だね」
「だな。 アゲハチョウ科の蝶々は特に綺麗だな」
「アゲハチョウ科? 色々な科に分かれてんの?」
「そうだぜ。 よく見る奴だとモンシロチョウとかはアゲハチョウとは見た目が全然違うだろ? あれはシロチョウ科の蝶々になる」
「へぇ。 やっぱり佐々木君詳しいじゃーん」
「まあ、これぐらいならな」
佐々木君大活躍やな。 昆虫館、最初は女子達もあまり乗り気やなかったけど、何やかんや言うて楽しんどるやん。 まだまだ昆虫館には色々な昆虫が展示されとるらしい。 ウチも楽しなってきたで。
何だかんだ楽しんでいる皆であった。
「奈央ですわよ。 昆虫にも色々いますわね」
「蝶々綺麗だったねぇ」




