第2112話 実感
まだ父親になる実感があまり湧かない夕也だが。
☆夕也視点☆
皆の妊娠が確定した翌日の日曜日。
「宏太よ。 父親になる実感って湧いてきたか?」
亜美より少し早く妊娠しているのがわかった奈々美とその旦那の宏太。 宏太の方は親になる実感ってものが湧いてきたのだろうか?
「まあ、少しずつな」
「マジか」
「まあな。 お前も少ししたら湧いてくるさ」
「うーむ」
やはりそういうもんなんだろうか?
「ちなみに奈々美の方はどんな感じだ?」
「早くもベビー服を探し始めてるぞ」
「気が早過ぎるだろ……」
とツッコんでみたが、うちの亜美は昨日の今日でベビーベッドとかを探し始めていたな。 どっちもどっちだな。
「西條もキッズハウスを建てるとか言ってたしな」
「さっきパソコン触りながら、キッズハウスの間取りとか考えてたぞ」
「どいつもこいつも気が早いな」
うちの女子達は皆気が早いらしい。
「さて。 クールダウンして戻るべ」
「おう。 1on付き合ってもらってサンキューな」
さっきまでバスケコートで1onをしていたのだが、相変わらず宏太は上手くなっていて驚かされる。 ストバスってそんなに学べる事あるのか?
「夕也はバスケも大事だが、亜美ちゃんと産まれてくる子供の事もちゃんと考えろよ?」
「お前もな」
軽くクールダウンを済ませて屋敷に戻るのだった。
◆◇◆◇◆◇
リビングへ行くと、亜美と奈々美が何やら話し込んでいた。
「やっぱり女の子だったら『美』は付けたいよねぇ」
「そうね」
どうやら子供の名前を考えているようだ。 まだ性別もわからない状態なのだが、やはり気が早いようだ。 女の子には「美」を付けたいというのは、亜美と奈々美の母親達からの伝統のようだ。
「ちなみに男の子だったらどうする?」
「お母さんら男の子だったら『真』を入れてたって言ってたよ」
「そうなのね。 じゃあその方向でいきましょ」
「だね。 子供の性別、揃うと良いね」
「そうよね」
という会話を俺達の前で進めていた。 ちなみに、父親になる俺達には命名権が無いらしい。 まあ、別に良いんだけどな?
「おうおう、奈々美よ。 男だったら俺の名前から『宏』を付けるに決まってるだろ」
「何で?」
「何でって、俺の息子だからだが」
「却下」
「何故?!」
宏太の話は聞いてもらえないらしい。 何とも哀れな奴である。
「亜美、男の子時は俺の名前から『夕』の字を付けるぞ」
「うーん。 まあ夕真ってかっこいいね。 女の子でも夕美か美夕になるしアリだよ」
「どうだ宏太。 これが夫婦というもんだ」
「ぐぬぬ」
「あ、あはは。 宏ちゃんは可哀想だねぇ」
「宏亮……すまない」
「何よ、名前もう決めちゃってんの?」
「良いだろ別に」
何だ。 宏太も亜美達に負けず劣らず気が早いじゃないか。 こいつはこいつで楽しみにしてるんだな。 奈々美は奈々美で「こうすけ。 まあ悪くないわね? どんな字を書くのか一応聞いといてあげるわよ」と、話は聞いてくれるようだ。
「俺の『宏』の字に亮らかの『亮』な」
「おお、かっこいいねぇ。 『亮』でも良いよ、奈々ちゃん」
「そうね。 ここは宏太に免じて、男の子の時は宏亮にするわ」
「マジか!? 宏亮、良かったな!」
「まだ男の子かどうかわからないでしょ……」
「うっ」
しかしまあ、男としてはやっぱり男の子が欲しいよなぁ。 わかるぞー。
「うちは夕亮になるかな?」
「まあ、その時に考えれば良いさ」
「だね」
まだまだ先は長いのである。
◆◇◆◇◆◇
少しすると「皆の家」のリビングには続々と人が集まってくる。 さすがは日曜日だな。 奈央ちゃんは相変わらずキッズハウスについて色々考えているようで、他の皆からも意見を聞いたりしている。
「キッズハウスって何歳ぐらいまでの子供を想定してるの?」
「まあ、5歳ぐらいまでかしらねー」
「なるほどね。 それぐらいの子供が遊べるような物を作れば良いわけね。 砂場とかはあると良いんじゃない?」
「屋内に砂場?」
「いや、庭に作りなさいよ」
「ですわよね」
「屋内には屋内で遊べる物を作れば良いよ。 小さな滑り台とか、積み木遊び出来るスペースとか」
「後はそれが見えるような場所に、私達親が休憩出来る場所もね」
「そうだな。 いくら屋敷内とは言え、見えてないと心配だからなぁ」
「何よ。 遥ももう母親気分なわけー? きゃはは」
「悪いかよー」
皆、もう親になるって自覚が芽生え始めてるんだな。 奈央ちゃんも奈央ちゃんで、西條グループの技術を駆使して、ハイテクなキッズハウスを建てるとか言っている。
「奈央ちゃんは子供に対してすげー過保護になりそうだな」
「きゃはは。 それはわかるわね。 絶対過保護になるわよ」
「まだわかんないでしょ」
「わかるって」
自分の子供の為に金をバンバン注ぎ込みそうだよなぁ。 公園買い取ったりしそうだな。
「なはは。 お姉ちゃんは子供に厳しそうー」
「そうかしら?」
「叱る時に叩く場合は、凄く優しく叩かないとダメだよ? 奈々ちゃんはゴリラパワーなんだから」
「……手は上げないようにはするわよ。 言葉で叱るわ」
「それが良いよ」
奈々美がちょっとでも力を入れて叩いたら、子供が吹っ飛んでいっちまいそうだからな。 亜美もそれを心配したようだ。
「亜美は自分の子供に甘そうよね。 可憐ちゃんを可愛がる姿を見てても」
「どうなるだろうねぇ」
「案外、自分の子には厳しくするかもしれないよぅ」
「なはは。 それもありそー」
「いや。 マロンとメロンに対する亜美を見てみろ」
「みゃ?」
「なー?」
「ほわわーん……可愛いねぇ」
「これだからなぁ。 絶対甘くなるぞ」
「む、むー……今から良い母親になるべく勉強だよ……」
と、亜美は宮下さんを心の師と呼び、教えを乞い始めるのだった。 相変わらず形から入る奴である。
◆◇◆◇◆◇
夕方になる頃には夕飯の支度が始まる。 今日は亜美と紗希ちゃんの台所係二人に、前田さんとマリアちゃんが手伝う形になったらしい。 それ以外はリビングに集まって相変わらず駄弁っている。
「なはは。 お姉ちゃん何見てるのー?」
「ベビー服の雑誌よ」
「な、なはは。 やっぱり気が早いー」
「こうやって色々考えてると楽しくなるのよ」
「あ、わかるわかるー。 私、赤ちゃんの服とか自分でデザインしようかと思っててさー。 もう三着ぐらいデザインしちゃってさー」
紗希ちゃんは自分が描いたらしい三面図を広げて見せている。 遥ちゃんは子供にどんなスポーツをやらせようかとか考えているみたいだし、皆かなり先の事まで考えているようだった。
「亜美は自分の子供に何をさせたいと思ってるんだろうなぁ」
「はぅ。 亜美ちゃんの事だから、子供の自由にさせてあげるんじゃないかな?」
と、希望が言う。 確かに亜美は子供の自主性を重視しそうだなと思うな。 俺はどんな父親になるんだろうか……。
「少なくとも俺のバカ親父みたいにはならないようにしないとな」
自分はどんな父親になるのかを考える夕也であった。
「希望です。 夕也君は子供と一緒に遊んでそうだよぅ」
「うんうん。 何かわかるよ」




