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第2108話 奈々美も

「皆の家」に集まる亜美達。 

 ☆亜美視点☆


 2月17日の土曜日だよ。 今日は希望ちゃんもお休みで家にいるから、家事は分担で片付けて早めに「皆の家」に来ているよ。


「奈々ちゃんどう?」

「来ないわね」

「おお、これはもしやだよ」

「はぅ。 本当に仲良いね」

「遥ちゃんや奈央ちゃんもズレてるらしいよ」

「は、はぅ。 皆して? 紗希ちゃんは診断で確定してるし、まさか本当に皆で同時に?」


 私達妊活組は、何と皆が皆妊娠の可能性が出てきたようである。 高くても三割と言われる確率なので、もし本当に皆が妊娠していたら凄い事です。


「紗希ちゃんは体調変化とか無い?」

「今んとこつわりぐらいかしら?」

「そうなんだね。 私も妊娠してるとしたらそろそろかな?」


 大体5〜6週目ぐらいからそう言った症状が出始めたりするみたいだよ。 まあ、私の場合は妊娠したかどうかもわからないけどね。 1月の初めから本格的に動き出したし、早ければそろそろなんだけど。


「亜美ちゃんは人間離れしてるから、人間と同じ症状が出るとは限らないんじゃないですの?」

「人間だよ。 人間と同じ症状も出るよ」


 全く私を何だと思っているのか。


「なはは。 亜美姉は謎多き人間ー」

「普通だよ」

「普通ではないでしょ」

「……普通だよ」

「ま、それはそうと、全員ご懐妊だったら良いですわね」

「そうね」

「『皆の家』が赤ちゃんだらけになるー」

「それはそれで凄そうですね……」


 マリアちゃんは苦笑いしながらそう言うのだった。


「ちなみに、皆さんには我が西條グループが誇る産婦人科が全面的にバックアップに付きますのでご安心を」

「さすが西條グループ。 それなら先輩達も安心やな」

「だねぇ」


 西條グループの経営する産婦人科は、腕も良ければ設備も最高。 入院食も当然凄いし、病院とは思えないような施設となっているよ。 まるで高級ホテルなのである。



 ◆◇◆◇◆◇



 夕方だよ。 今日は「皆の家」に集まって夕食を、という事で台所に立つ私、紗希ちゃん、奈々ちゃんに前田さん、マリアちゃん。 台所は今日も大忙し……そんな中……。


「うっ……」

「奈々ちゃん、どしたの?」

「ちょっと吐き気が」

「吐き気って、それつわりじゃないのん?」

「そ、そうかしら?」

「時期的にも有り得ますね。 奈々美さんは少し休まれた方が良いですね。 代わりに廣瀬さんに台所に入ってもらいましょう」


 前田さんに言われてとりあえず頷く奈々ちゃん。 台所から出て行ってしばらくすると、代わりにマリアが台所へやって来た。 


「お二人は大丈夫なんですか? 特に神崎先輩は」

「きゃは。 私は大丈夫よ。 つわりは軽い方みたい」

「私も今のところ大丈夫だよ。 奈々ちゃん、つわりかな?」

「だと良いですね」


 私達は頷き合い、とりあえず夕飯の支度を進めるのであった。



 ◆◇◆◇◆◇



 夕飯時だよ。


「ああ……気持ち悪いわ」

「奈々ちゃん辛そうだね……」

「ええ……」

「明日にでも病院行く? 私がついて行けば診察もすぐに回ってきますわよ」


 と、奈央ちゃん。 奈々ちゃんは「そうね……」と、やはり辛そうに頷く。


「ご飯食べたら検査薬使ってみる?」

「そうね……」


 ダメだこりゃ。 結構参っちゃってるよ。 

 宏ちゃんは宏ちゃんで「これぐらい大人しくしてくれるなら助かるな」とか言ってるし。


「そ、そんなになるのぅ?」

「人によるんじゃないかな? 紗希ちゃんは軽いって言ってるし」

「きゃはは」


 ちなみに宮下さんに聞いたら、宮下さんも軽い方だったらしい。 わ、私も軽かったら良いなぁ。



 ◆◇◆◇◆◇



「陽性だったわ」

「おお……」

「ご懐妊の可能性大ね」

「では明日、病院まで行くと言う事で決まりですわね」

「なはは! 私が車出すー!」

「お願いしますわ」


 麻美ちゃんは「任せろー」と言って胸を叩く。 強く叩き過ぎて咽せている。 自分で力加減出来ないようだ。


「今日はこのまま『皆の家』に泊まるわ」

「じゃあ私もー」


 麻美ちゃん、奈央ちゃんも今日はここに泊まるとの事。 私も心配だし泊まろうかな。



 ◆◇◆◇◆◇



 翌日18日ね日曜日。 奈々ちゃんは昨日よりはマシみたいである。 お昼前には病院へ出掛けるとの事だよ。 私は「皆の家」でお留守番するよ。 


「ドキドキだよ」

「亜美が診察受けるわけじゃないだろ……」

「でもドキドキするんだよ」


 もし奈々ちゃんが先にご懐妊となると、私も急がないとだよ。 ただ、私も今月は来ていないので、可能性は十分にあるよ。


「あー、だるい……」


 気分はマシらしいけど、倦怠感が来たらしい。 奈々ちゃん大丈夫かな?



 ◆◇◆◇◆◇



 奈々ちゃん達が病院へ出掛けて約1時間半。 私達は今か今かと帰りを待ち侘びる。 宏ちゃんは何だかんだ言いながらもやっぱり気になるみたいで、さっきからリビング内をウロウロして落ち着きが無い。


「宏ちゃん、落ち着きなよ」

「だがなぁ。 父親になるかもしれんと思ったら急に緊張してきたんだよ」

「わからないでもないけど」


 と、話していると玄関の方から音が聞こえてきた。 奈々ちゃん達が帰ってきたのだろう。 宏ちゃんは足を止めてリビングの出入り口のドアの方を見つめる。

 しばらくすると、リビングのドアがゆっくりと開く。


「なはは」

「お前かい!」

「なはは。 お姉ちゃんもすぐに来るー」


 麻美ちゃんの言う通り、すぐに奈々ちゃんもリビングへやって来て私達の方を見る。


「宏太、デキてたわ」

「マ、マジか!」

「ええ」

「よし!」


 宏ちゃんはとても嬉しそうにガッツポーズをする。 父親になるという自覚が芽生えたようで、仕事も一層気合いを入れて頑張るとの事。


「紗希に続いて奈々美もかー」

「遥ももうデキてるんじゃないの?」

「まあ、たしかに予定日からズレちゃいるがな」


 と、妊活組は皆可能性があるのである。 奈々ちゃんは早速ご両親にも連絡を入れたようだ。 こういう時は両親にも協力してもらった方が良いもんね。 宏ちゃんも夜にはご両親に連絡するとの事。 宏ちゃんのご両親は忙しい人達だからねぇ。


「で、今日はお祝いパーティーするのか?」

「別にしなくていいわよ。 つわりきついし……」


 奈々ちゃんは相変わらず辛そうである。 しょっちゅうパーティーしても仕方ないしねぇ。


「奈々ちゃんはこれからしばらくどうするの?」

「まあ、家事ぐらいは何とか出来るわよ」

「なはは! 困ったら私と渚を呼べー」

「わかったわ」


 奈々ちゃんが結構素直だよ。 本当につわりが大変らしい。 私も手伝える事があれば手伝いたいけど、私も体調悪くなったりするかもしれないしねぇ。


「あー……だるい」

「あ、あはは……」


 私はきつくなりませんように……。


奈々美もご懐妊!


「紗希よん。 奈々美、一緒に頑張るわよ!」

「ええ」

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