第2106話 弥生の考え
バレンタインパーティーにオンラインで参加中の弥生。
☆弥生視点☆
バレンタインパーティーにオンラインで参加しとるんやけど、話題は子供の話題になり、何故かウチにまで飛び火してきよった。 ウチと武下君は付き合い始めて一年とちょいやけど、他の皆と比べても付き合い方はまったりしたもんや。 当然、まだ結婚とかも考えてへんし今後も結婚までするかどうかはわからんし。
「弥生ちゃん、どうしたの?」
「あ? いや、何でもあらへんよ」
「何か考え事してるみたいだったよ?」
「してへんしてへん」
亜美ちゃんはわざわざモニターに映っとる人間の顔まで見とるんか。 気を配り過ぎやろ。
「ぜんいんオメデタやったらええナ」
「そうですね」
「千沙っちも頑張らないと」
「う、うん……」
「お、新田さんも頑張るの?」
「は、はい」
千沙も千葉組に感化されたか、今月から頑張るみたいやな。 もしかしたらほんまにベビーラッシュが来よるからもしれんな。 もしそないなったら、また一段と騒がしいなるで。
◆◇◆◇◆◇
バレンタインパーティーはお開きになり、ウチもパソコンを閉じて風呂の準備を始める。 給湯を始めてリビングに行くと、既にキャミィがソファーで寛いどった。
「おー、ヤヨイ」
「あんさんは気楽なもんやな。 アメリカの実家とか心配にならへんのかいな」
「ジッカはしんぱいあらへんヨー」
話によるとかなりの規模の家らしいからな。 お嬢様っちゅうやつみたいやけど、そうは見えへんでほんま。
「ヤヨイ。 タケシタとはケッコンせえへんのカー?」
「キャミィまで言いよるんか。 今は考えてへん……っちゅうか、多分せえへん」
「なんでヤ?」
「ウチな、いつかはイタリアのセリエAに挑戦したろ思うてんねん」
「おー、ええナ」
「そないなったら、拠点はイタリアになるやん? 武下君を連れて行くわくにはいかんし、そう考えたら結婚なんかせんと別れた方がお互い楽なんちゃうかって思うんや」
「あー、ナルホドやナ。 タケシタにはタケシタのシゴトがあるもんナ。 いっしょにイタリアにとはいえへんカ」
「かと言うて、帰ってくるまで待っといてとも言いにくいやん?」
「まあ、あのオトコはまちそうやけどナ」
「ウチなんか待ってたら、もっとええ女を逃すで」
「ワハハ! タケシタにとったらヤヨイはサイコーのオンナやデ。 そのシンパイはあらへんテ」
「そないなわけ……」
ウチのどこが最高なんや? 恋人らしい事は特に何もせえへん、ただのバレーボールバカやのに。
「ちなみに、そのハナシはタケシタにはしたんカ?」
「してへんよ。 どうせ挑戦するんは先の話やさかいな」
「はやいほうがええデ」
「そやろか?」
「またせるのがワルイとおもってるんやロ? ほなはやめにハナシてタケシタにきめてもらわナ」
「それもそやな……」
「ちなみにヤ。 バレンタインのチョコレートもわたしてへんのちゃウ?」
「そやな」
「まだ8じやし、いけるやロ」
「そやんな。 渡して来る」
「フロさきにはいっとるデー」
「ええよ。 ほな、急いで行ってくるわ」
「ジコにはきをつけヤ」
「わかっとる」
家から武下君の家までは車で10分ぐらいの距離や。 一応連絡だけしといて準備して出発。
「せっかく準備したチョコレートやし、渡さなもったいないしな」
キャミィの言う通り、結婚は出来ひんっちゅう話も早めにしとかなあかんし。
ブロロロ……
◆◇◆◇◆◇
ピンポーン……
武下君の家のインターホンを鳴らすと、武下君がすぐに出て来る。
「いらっしゃい。 中入る?」
「あ、いや。 チョコレート渡してちょいと話するだけやし」
「そう?」
とりあえずはチョコレートを渡してしまい、用事の半分を済ませる。 さて、後は……。
「それと、話なんやけどな」
「あ、うん」
「まあ、何や。 ウチらの将来の話なんやけど。 武下君、単刀直入に言うで?」
「うん」
「ウチとこのまま付き合い続けても、結婚は多分出来ひんで」
「……ん? それはまたどうして?」
武下君は取り乱したりはせんと、割と落ち着いた感じで訊いてくる。
「あのな。 ウチ、いつかイタリアへ行こうと思うてんねん」
「イ、イタリア?」
「そや。 バレーボールには、セリエAっちゅう世界のトップリーグがあるんや。 それがイタリアのプロリーグなんよ」
「なるほど……それでイタリアに」
「まあ、いつになるやわからんけど。 絶対に行くつもりではあるんや」
「そうか……それで、何で結婚出来ないの?」
「え?」
武下君は不思議そうな顔でこちらを見ている。 な、何やこの男は……。
「あ、あのな? イタリアやでイタリア? 京都と東京とはちゃうんやで? 当然、武下君かてイタリアについて行くわけにはいかんやろ?」
「まあ、そうだけど……でも、別に別居婚だって可能だよね?」
「べ、別居婚?」
そ、そないな事は考えてへんかった。
「た、武下君はそれでええんか? イタリアと日本やで? まず中々会えへんのやで?」
「まあ、それは寂しいかもしれないけど、今はビデオ通話とかも出来るし、西條さんに頼めばもっと良い方法とかもあるかもしれない」
「あ、あんさん前向きやな」
「そう?」
「まさか、こないな返事をされるとは思うてへんかったわ……」
「ははは……」
どうやら武下君はウチとは違う考えを持っとるみたいやな。 これはウチももうちょい考えなあかんやろな。
「はあ……わかった。 この話は一旦保留や。 すまんな」
「いや別に」
話もとりあえず終わったし……。
「今日のとこはまた帰るわ。 また週末」
「うん」
◆◇◆◇◆◇
「っちゅうわけで、そう言われたわ」
「ワハハハ! タケシタやったらそういうやろとはおもったデ」
「何でウチよりキャミィの方が武下君の事を理解しとるんや……」
「ヤヨイがアホなだけやロ」
「うぐ」
「まあ、まださきのハナシやロ? ゆっくりかんがえたらええやン」
「ああ、そうするわ」
イタリアに行くんかて、まだまだ先の話になりそうやしなぁ。 まずは日本で亜美ちゃんを完膚なきまでに負かしてからやし……。
「まあ、それはそれとしてヤ。 イタリアのことがなかったら、タケシタとケッコンするつもりはあったんカ?」
「それは……うーん。 まあ、いずれはって感じやろなぁ。 すぐにとかそんな風にはならんかったと思うで」
「そうなんカ。 あいかわらずギュウホやナ」
「だはは。 まあ、ウチはそういう女なんや」
武下君には悪いけど、どちらにせよまだまだ結婚のこのは考えられへん。 まずはやるべき事があるしな。
◆◇◆◇◆◇
「イタリアねー」
「美智香は考えてへんの? バレーボールのトップリーグに挑戦」
「うーん……まあ、憧れではあるわよね。 でも家族の事考えるとさ」
「やっぱそこやろな。 だからウチも武下君に話したんやけどなぁ」
「うわはは。 武下っちは諦め悪いねー」
「ほんまやで」
ウチはとんでもない男と付き合うてもうたんやろか?
武下も結構変わり者?
「奈々美よ。 弥生もバレーボールバカよね」
「だよねぇ」




