第2103話 宏太は愛されキャラ
2月6日は宏太の誕生日。
☆夕也視点☆
2月に入って一旦は落ち着いた妊活という日々。 紗希ちゃんが一足先におめでたになった事もあり、他の女性陣も後に続きたいと言っている。 俺も自分の子供に関しては早く見たいと思っている。 ただ、月末付近まではわからないだろうとの事だ。
「ふんふんだよー♪ 今日は宏ちゃんのー♪ 誕生日だよー♪」
「そういや2月6日か」
「そうだよ。 しかも火曜日だから宏ちゃんはお仕事休みだよ」
「なるほど。 じゃあ今日も『皆の家』で宴会か」
「そうだよ。 お仕事組は夕方以降に『皆の家』に集まってくるよ」
「東京組は?」
「昼には来るみたいだよ。 三山君はまた弥生ちゃんが夕方に迎えに行くみたい」
「暇なのかあのメンバー」
「あ、あはは。 試合がない日はオフみたいなもんだからね」
「練習とかしてないのか?」
「夕ちゃんみたいに自主練なんじゃない?」
「そうなのか」
俺もシーズン中は試合以外はそんな感じだ。 シーズンオフには日本代表にでもなれば忙しくなるだろうが、基本的に自主練期間だ。
「私はお昼に行って準備していかないと」
「大変だな、台所長も」
「そだねぇ。 でもやり甲斐はあるよ。 年取ったら食堂のおばちゃんにでもなろうかね」
「何言ってんだ……」
亜美はたまにこういう謎のボケをかます。 こいつの場合、本気なのか冗談なのかわからないんだよなぁ。
「宏ちゃんも何だかんだ言って、皆に愛されてるよねぇ」
「あんだけイジってもらえる奴はそうはいないからな」
「うんうん。 おまけにイケメンで美人な奥さんがいるし、素晴らしいよ素晴らしい」
「俺もだな」
「そだね」
何でそこは素の顔で棒読みになるんた……。
バタバタ……
リビングで寛いでいると、玄関の方で騒がしい音が聞こえてくる。 まあ、これは十中八九麻美ちゃんと渚ちゃんだろう。 家の合鍵も持ってるしなぁ。 あの二人は暇になるとこの家か「皆の家」へ移動する。 亜美は人数が多い方が良いと喜んでいる。
「おはよー」
「おはよう麻美ちゃん」
「おはようだよ」
「麻美、ちょっとは大人しくでけへんのか。 あ、おはようございます」
「おはよう渚ちゃん」
「おはようだよ」
渚ちゃんは麻美ちゃんとは違い、いつも大人しく入って来る。 というか騒がしいの麻美ちゃんぐらいだ。
「亜美姉は何時ぐらいに『皆の家』に行くの?」
「お昼食べてからだよ。 午前中に掃除とか片付けちゃわないと。 麻美ちゃんは掃除とか洗濯とかは良いの?」
「もう終わったー」
「早いねぇ」
「渚と二人で頑張ってやったー」
「ほんまやで。 『昼前に終わらせて夕也兄ぃの家にイクゾー!』とか言い出して……」
全然似てないモノマネを披露した渚ちゃんだが、どうやら朝から麻美ちゃんに振り回されて大変だったらしい。
「なはは。 お昼は一緒に食べよー!」
「何か作って来たの?」
と、亜美が訊くと麻美ちゃんは鞄をガサゴソと漁りだした。
「これー!」
「インスタントラーメンだねぇ」
「味噌ラーメンー」
「私は塩ラーメンや」
「あ、あはは……トッピングの野菜ぐらいなら使って良いよ」
「ありがとう亜美姉ー!」
どうやら朝早くから掃除と洗濯をやったおかげで、買い出しには行けずに、家にあったインスタントラーメンを持って来たらしい。 どちらも袋麺だ。
「ちなみに今井家のお昼はきつねうどんだよ。 もちろん冷凍うどんだよ」
「インスタントうどんか」
こちらも似たような物のようだ。 まあ食えれば何でも良いのだが。 希望は亜美に弁当を入れてもらっているようで、幼稚園のお昼の時間には園児達と一緒に食べているらしい。
◆◇◆◇◆◇
昼過ぎには「皆の家」に移動した俺達。 奈々美と本日の主役の宏太も一緒だ。 前田さんにマリアちゃんはこの屋敷に住んでいる為、休みの日は大体いる。 他には奈央ちゃんと春人の西條夫妻も大体いるな。
「他は仕事組か」
「冴木さんと天堂さんはもう少しで来るみたいだよ。 後は東京組だねぇ。 武下さんはどうやら無理みたいだよ」
亜美がスマホ片手に言う。 どうやらグループチャットを開いてリアルタイムで情報を受信しているようだ。
「皆、俺を祝いたくて仕方ないらしいな」
「宴会騒ぎがしたいだけだろ」
「そうですわよ」
と、やはり宏太の扱いはこうなるのである。 宏太に対して優しいのはマリアちゃん、青砥さんと彼氏さん、冴木さん、天堂さんぐらいだろう。 柏原君はまあ普通か。
14時くらいには東京組もやって来て、更に賑やかさが増す。 女性陣はやはり可憐ちゃんの方に集まって可愛がっているようだ。
「佐々木君、誕生日おめでとさん。 これ、ウチからプレゼントや」
「サンキュー……こ、これは!」
「ふふん。 これ、めっちゃ高かったで」
「そりゃそうだろ。 ライトニング製の最新リールじゃねぇか」
「あんさん、そのメーカー贔屓にしとるやろ? 多分これ欲しいんちゃうか思うてな」
「欲しかったんだ! マジでありがてぇ。 お前ら! プレゼントってのはこういうのだぞ!?」
「知らないわよ……」
月島さんは宏太と趣味とかが合う為、プレゼント選びもやりやすかったらしい。 にしても、宏太にそんな物をプレゼントするとは良い人だなぁ。
ちなみに俺は靴を買って持って来ている。 ストバスをたまにやってるらしいからな。
「後は三山君とかお仕事組だねぇ。 可憐ちゃん、私と遊んで待ってようね」
「亜美は台所長でしょ。 サボってないで宴会料理の支度始めるわよ」
「うわわ! 引っ張らないでぇ!」
「先輩、諦めて下さい」
台所係の亜美、奈々美と手伝いのマリアちゃん、前田さんがリビングから出て行く。 亜美は「か、可憐ちゃんー!」と、悲鳴を上げながら奈々美に引っ張られて行った。
「ウチは美智香の旦那を迎えに行かなあかんさかい、台所は手伝えへんしなぁ」
「いつも悪いわね」
「まあ、しゃあないやん。 旦那さん一人だけ放っとくわけにもいかんやろ」
三山は仕事を頑張っているようだ。 奈央ちゃんからの紹介だから、それなりに良い職場なんだろう。 宮下さんの年俸と三山の給料で、特に不自由は無いらしい。
「宏太も給料は結構貰ってんのか?」
「まあ、西條グループの店だかんな。 その辺のペットショップ店員よりは貰ってると思うぞ」
「そうか」
「夕也は年俸いくらなんだ?」
「俺は1000万スタートだ。 春人が一応オーナーだからなぁ」
「活躍次第では来年上がりますよ」
「だそうだ」
「バスケ選手て、初年度でそないに入るんやな」
「バレーボールは初年度しょぼかったわよ。 今は活躍してるし、スポンサー料とか諸々でかなりあるけど」
「やな。 セリエAとかに移籍したらどんだけ貰えるんやろ」
と、月島さん。 曰く、一度は世界のトップリーグに挑戦してみたいとの事だ。 俺はそこまでの野心は無いな。
さて、宏太の誕生日パーティーまでまだ時間があるな。 俺も可憐ちゃんと遊んで暇を潰すとしよう。
今日も宴会騒ぎが始まる。
「亜美だよ。 宏ちゃんはどうしてあんなにイジりやすいのかな?」
「バカだからでしょ」




