第2101話 第二号
日曜日は「皆の家」に人が集まって来るようだ。
☆遥視点☆
2月4日の日曜日。 今日はジムのトレーナーの仕事も休みだし、朝から「皆の家」のトレーニングルームでトレーニングだ。
「おう、マリアも精が出るな」
「はい」
この屋敷に住んでいるマリアは、トレーニングルームの主になりつつあるようだ。 私は休みの日以外は職場のジムでトレーニングしてるからなぁ。
「あ、遥ちゃん来てるよ。 おはよう」
「お、亜美ちゃんも朝からトレーニングかい?」
「うん。 体力は落とさないようにしないとね」
亜美ちゃんは何だかんだ言って真面目なんだよなぁ。 時間がある時はこうやって体力作りをしているらしい。
「そういえば遥ちゃん。 そろそろ検査した?」
「へ? 検査? 何のだい?」
「そりゃもう妊娠したかどうかだよ」
「ええ……」
「遥ちゃんも先月は頑張ったんでしょ?」
「ま、まあそれなりには。 けど、亜美ちゃんとこほどじゃないぜ」
「そうなの?」
「おう」
「ふうむ。 まま、とりあえずは検査してみてはどうかな?」
「いや、まだ周期的には早いんだが」
「おー、そっか。 それもそうだねぇ。 遥ちゃん、ちゃんと調べてるんだねぇ。 むふふ」
「まあ、それは」
「皆大体2月下旬ぐらいかなぁ?」
「だなぁ」
「まあ、もう少し待つしかないね」
亜美ちゃんは「頑張ったしデキてるといいなぁ」とか言いながら、ランニングマシンで走っていた。
しかし皆して妊活とか、タイミング被り過ぎだなぁ。
「……」
「あ、マリアちゃん。 ごめんね、変な話して」
「いえ。 ベビーラッシュ楽しみです」
マリアの奴、無表情で黙々とトレーニングしていたと思ったが、意外と楽しみにしているらしい。
◆◇◆◇◆◇
日曜日は大体皆休みの為、「皆の家」に集まってくる。
「てか、今日は試合なんじゃないのかい?」
「ですわねー。 私達が居なくても勝てると思いますわよー」
結構適当なオーナーではあるが、前田さんが「作戦と采配は監督に伝えてありますし、西條さんの言う通り皆さんが居なくても勝てると思います」と言うので信用することに。
「紗希は何してるの?」
「んんー? 自分の配信用の3Dモデルの衣装デザイン」
「おお。 紗希ちゃんはそういえばVドルとしても活動してるんだったね」
「アイドル枠じゃないけどねー」
「何とかってVドルのママなんだよな?」
「花風風花ちゃんよ。 もう何回かコラボもしたわ」
「なはは。 風花ちゃん可愛いかったー」
「でしょ? 私の自慢の娘なんだから」
「ちなみに、本当の娘や息子が産まれたらどっちを可愛いがるのよ?」
奈央がまためちゃくちゃな事を聞いてやがるなぁ。 しかし、紗希はさも当然のように「皆に決まってんじゃん」と、返した。
「子供で思い出しましたわ。 皆、先月はやけに頑張ったけど進捗はどんな感じですの?」
「まだ何ともだよ」
「そうね。 検査薬もまだ使えるタイミングじゃないし」
「だなぁ」
「ですわよねー」
「きゃはは。 実は先月来なかったのよねー」
と、紗希が笑いながら軽い感じで言う。 その言葉に対して女子全員が反応し、紗希に視線が集中する。
「し、調べましたの?」
「いやー、まだなんよね。 一応今月も様子見て、予定通り来なかったら調べようかなって」
「いやいや。 すぐに調べましょうよ」
「一ヶ月くらいはホルモンバランスの関係とかでさー」
「良いから!」
と、皆で紗希を無理矢理納得させて検査薬で調べさせるのだった。
◆◇◆◇◆◇
「きゃはは! デキてんじゃーん!」
「デキてんじゃーん、じゃないわよ?! 今から産婦人科行って詳しく診てもらいますわよ!」
「何目の色変えてんのよー」
「いや、本当に妊娠してんのか診てもらった方が良いだろ」
「そうだよ!」
「し、仕方ないわねー。 それじゃあ裕樹も連れて行って良いかしら?」
「もちろん」
亜美ちゃんが車を出すことになり、奈央が同行する事が決まった。 私達は留守番だ。 結果報告は帰って来てからだな。 はてさてどうなるやらだ。
「神崎先輩のお腹に赤ちゃんがいたら、可憐ちゃんに続く第二号だー」
「そうね」
「何や私までドキドキしてきたで」
「はぅ。 ベビーラッシュが始まる予感がするよぅ」
私も月末とかにはわかるんだろうか? もし妊娠していたら私は母親になるのか。 まさか私が母親になるかもしれない日が来るなんてなぁ。
◆◇◆◇◆◇
2時間後。 亜美ちゃん、紗希、奈央、柏原が「皆の家」に帰ってきた。 私達留守番組は、紗希の発表を固唾を飲んで待つ。
「きゃはは。 一月半だってさー」
「おー!」
「やったー!」
「おめでとうございます、紗希先輩」
「おう、柏原君もやったな!」
「あ、ありがとう。 自分でもびっくりしてる」
柏原の方はまだ実感が無いようだな。 まあ、急に父親になりますって言われてもそうだろうが。
「頑張れよ柏原君」
「は、はい」
「よーし! 今日は宴会ですわよ!」
「お、出たな! とにかく何でも良いから宴会騒ぎ」
「なはは!」
「忙しくなるよぉ。 希望ちゃん、奈々ちゃん手伝って」
「ぅん」
「オッケー」
「きゃはは。 私も手伝うわよん」
「ダメですわよ。 一応今日は紗希と柏原君が主役なんだから」
「きゃは」
という事で、私達はお菓子やらジュースの買出しだぜ。 紗希はもちろん留守番だ。 退屈だと文句を言っていたが、宴会の主役はいつもこうなるものなんだ。
◆◇◆◇◆◇
「ではでは。 紗希の妊娠を祝してー! かんぱーい!」
「かんぱーい!」
宴会が始まり、いつも通りにバカ騒ぎになる。 東京組にも紗希の妊娠は知らされ、オンラインではあるがこの宴会に参加している。 リビングにある巨大モニターに東京組のメンバーの映像が映し出されている。
「紗希、おめでとさん。 やっぱりあんさんとこが一番早かったな」
「きゃはは。 ありがと」
「さすが年中発情期の紗希っちね」
「きゃはは!」
「むしろよく結婚するまでにデキたりしなかったわよね」
「本当それだよ」
「一応ちゃんと避妊はしてたし」
「偉い! 私なんて油断した一回が命中しちゃったからねー」
「宮下さんらしいよ」
「うわはは! 他の皆も妊活してるんでしょ? わかるのっていつぐらいなの?」
「今月末から来月中旬ぐらいじゃないかなぁ」
「皆の報告楽しみにしとるで」
「しとるデ」
「でス」
「私もそろそろ頑張ろうかなぁ」
新田は新田で、まだ妊活とかはしていないらしいが、可憐ちゃんや紗希を見て少し欲しくなったらしい。
◆◇◆◇◆◇
宴会が終わり、今日は全員が「皆の家」に宿泊。 明日は普通に月曜日で仕事なので、早めの就寝だ。 明日の朝ご飯は亜美ちゃん、紗希、奈々美、マリアが早起きしてくれる事になっている。
にしても、もし皆が一斉に妊婦になったりしたらどうなっちまうんだろうな?
紗希が遂におめでた!
「奈央ですわ。 結婚は一番遅かったのに」
「さすが紗希ちゃんだよ。 頭ピンクだからね!」




