第2098話 山梨までドライブ
今日はドライブ日和。 麻美の車で何処かへ出かけるようだ。
☆奈々美視点☆
「じゃ、お昼ご飯は置いとくからレンジで温めて食べといてね」
「おうー。 ゆっくり楽しんで来いなぁ」
「わかってるわよ。 行ってくるわ」
今日は1月23日火曜日よ。 今日は宏太が休みで家にいるんだけど、私は亜美、麻美、渚、そして宮下さん、可憐ちゃんとドライブよ。 麻美の運転で……。
「とりあえずまずは東京までいくぞー」
「早く可憐ちゃんをお迎えしなければだよ」
「な、なはは。 ゆっくりいくぞー」
亜美は可憐ちゃんが絡むと色々とキャラが変わるのよね。 まあ、可憐ちゃんが可愛いのはわかるけど。
「麻美の運転もかなりようなったやんな」
「そうだねぇ。 あの方向すらわからなかった麻美ちゃんが良くぞここまで……涙出てきたよ」
「何泣いてんのよ」
「なはは。 亜美姉には色々感謝してるー」
ブロロロ……
◆◇◆◇◆◇
ブロロロ……
東京駅に到着。 宮下さんはいつも同じ場所で待っている為、麻美もいつもの場所に車を停める。 すると、気付い宮下さんがゆっくり歩きながら車に近付いてくる。
「やあやあ、こんにちは。 寒かったわ」
「なはは。 車の中は暖房聞いてるー」
「助かるわ」
亜美が何故か持っているチャイルドシートに可憐ちゃんを固定し、その隣に宮下さんが座る。
「よし! ではドライブ本番出発ー」
「おー!」
「うわはは!」
「あーい!」
ブロロロ……
というわけで東京からドライブに出発よ。 そういえば行き先は聞いてないわね。
「亜美、麻美。 今日はここから何処行くのよ?」
「山梨県だよ」
「山梨県?」
「山梨県にある富士五湖の一つ、河口湖だよ」
「なはは! ナビON!」
麻美がナビを点けて目的地を設定。 河口湖までは一時間ちょっとで着くみたい。 意外と近いのね。
「そういえば亜美。 昨日は奈央と何処に行ってたのよ?」
昨日、亜美は奈央を車に乗せて長い時間出掛けていた。 多分仕事関係だろうけど。
「牧場を買いに行ったんだよ……」
「は?」
「経営難になった牧場を買い取りに行ったんだよ」
「何で牧場なんか買いはったんですか?」
「今年に馬主登録して馬主になるって話は知ってるでしょ?」
「牧場が近くにあった方が楽そうだって」
「西條さんらしいわねー」
「困った人だよ」
亜美は奈央の秘書として働いてもいるけど、何だかんだ苦労してそうね。
「首都高に入るぞー」
「麻美、高速道路は平気なわけ?」
「亜美姉に一回付き合ってもらったー! よゆー!」
「本当なの?」
「うん。 大丈夫だよ。 麻美ちゃんの運転は安全だよ」
「亜美っちが言うなら大丈夫っしょ」
「よゆー!」
ブロロロ!
麻美の運転する車は首都高に入り、速度を上げて走る。 可憐ちゃんは窓の外の景色を見ながら「ぶーぶー!」と、興奮している。
「可愛すぎるよ……」
「うわはは。 亜美っちと奈々美っちは今子作り頑張ってんでしょ?」
「うん。 一応ね」
「来月になったら一応調べてみるけど」
「うんうん」
「なはは。 お姉ちゃんに子供出来たらおばさんになってしまうー」
「そうね。 麻美おばさん」
「まだ子供出来てないー! まだおばさんじゃないぞー!」
「怒らない怒らない」
麻美も一応そういうの気にするタイプなのね。 意外だわ。
◆◇◆◇◆◇
車は山梨県に入り、目的地までもう少し。 麻美の運転も安定していて乗りやすくなったわね。
「山梨県て結構すぐ来れるんやな」
「なはは。 車便利ー」
「ぶーぶー」
「ちなみに河口湖ってどんなとこなの?」
宮下さんはそんな事も知らないでついて来てるのね……。
「河口湖は富士五湖で二番目に大きな湖なんだよ。 観光スポットとしても整備されていて、東岸の方は温泉街にもなっているんだよ」
「温泉!」
「なはは。 お姉ちゃんは反応すると思ったー」
「温泉行くわよ!」
「先に河口湖を見てからだよ……」
「早く見るわよ!」
「奈々美っちって温泉が絡むと人が変わるわよねー」
「なーなー?」
「温泉をこよなく愛してはるんですよ」
「そうよ」
まさかドライブについて来て温泉街に来れるとは。 来て正解だったわね!
◆◇◆◇◆◇
河口湖に到着した私達は、整備された遊歩道を渡りながら、冬の河口湖を散策。 観光地として開発されている為、そこかしこに飲食店や商店が見られるわ。 富士五湖と言われるだけあり、綺麗な富士山も拝む事が出来たわ。 あれに登ったのよね、私達。 また行きたいわ。
「季節によっては色々な景色が見られるだろうねぇ。 ただ富士山が一番綺麗に見えるのは今ぐらいの時期なんだって」
「空気も澄んでるからねー」
「可憐。 あれが日本一の山、富士山さんよ」
「うーじー?」
「ははは。 それやったら京都の地名になってまうで可憐ちゃん」
可憐ちゃんは富士山を見るのは初めてみたいね。 あれが何なのかを知るのはもっと先の事なんだろうけど、今はこの光景に目を輝かせて見つめているわ。
◆◇◆◇◆◇
河口湖周辺の散策を終えた私達は、いよいよ温泉街へとやって来たわよ!
「奈々ちゃん。 鼻息荒いよ」
「うっさいわね」
「そやけど、可憐ちゃんも入れるんですか?」
「基本的に生後半年以降からは大丈夫らしいわ。 私も旦那と色々と調べたし」
「なるほど」
「今回は可憐ちゃんに考慮して、温度が低めの単純泉に浸かれる西條グループの温泉へ向かうよ」
「出たわね、西條グループ」
「最近は亜美姉も西條先輩みたいになってきたという噂ー」
「使える物は使うんだよ」
と、財布から西條グループプラチナカードを取り出す亜美であった。
◆◇◆◇◆◇
かぽーん……
「はあ、生き返るわねー」
「奈々ちゃんは今日も年寄り臭いねぇ」
「なはは。 またやってるー」
「可憐、気持ち良い?」
「あーう!」
「何やめっちゃ嬉しそうやな」
「可憐ちゃんも温泉の良さがわかるのね。 偉いわ」
亜美が西條グループプラチナカードを使って、他のお客さんが居ない家族専用風呂を貸し切ったおかげで、のんびりと浸かる事が出来ている。 温度はたしかに温めだけど、長風呂するには最適ね。
「ここからでも富士山が見えるー」
「ほんまやな。 絵やなくてほんまもんの富士山が見える温泉か」
「乙だねぇ」
「日帰りなんて勿体無いわね」
「そうねー。 色々と遊べそうな場所も一杯あったし」
「可憐ちゃんがまだ小さいからねぇ。 難しいよ」
「そうねー」
可憐ちゃんと旅行もまた行きたいわね。
◆◇◆◇◆◇
帰りは亜美の運転で帰る事になった。 高速道路でも制限速度ぴったりで走り、他の車にどんどん追い越されていたわ。 亜美は「安全第一なんだよ」と、真剣な顔で言うのだった。 亜美らしいわね。
ドライブを一日楽しんだ私達は、東京の宮下さんと三山の家まで宮下さんと可憐ちゃんを送り届け、千葉の「皆の家」へと帰還。 少しゆっくりと過ごして、それぞれの家へと戻るのだった。
「腹減った」
「……良い気分だったのに台無しね」
帰ると、いつものように宏太が腹を空かせて待っていたのだった。
温泉も楽しんでほくほくの奈々美。
「奈々美よ。 麻美、次は何処の温泉行きましょうか?」「な、なはは。 その内考えるー」




