第2096話 目指すは優勝
麻美のアドバイスを活かして希望が姉妹の連携を封殺。
☆麻美視点☆
アルテミスとホワイトフォックスの試合は1セット目が終了ー。 最後のラリーはかなり激しくなったが、希望姉が私のアドバイスを上手く活かして、姉妹の連携を攻略した。 私も役に立てて良かったー。
「ふぅ……」
「皆おかえりー」
「ただいま。 麻美のアドバイス、私達は活かせないけど希望ちゃんが何とか活かせるっぽいから私達は粘って希望ちゃんに託すしかないわね」
「任せてよぅ」
「希望ちゃんが頼もしいよ」
希望姉は目が良いから、私のアドバイスをちゃんと活かせると信じていたー。 マリエルさんから皆にも簡単に伝えておいたけど、多分活用は出来ないだろうと思っていた。 なので、希望姉には詳しく説明したしておいたー。
「さて! 一気に行きますわよ!」
「おー!」
「皆頑張れー! 希望ちゃんファイトー!」
試合には出られない私は、こうやって皆を送り出す事しか出来ないー。 早く来シーズン来いー!
◆◇◆◇◆◇
2セット目は大阪ホワイトフォックスのサーブで始まり、しっかり希望姉が拾い亜美姉が決めた。 更にその後の西條先輩のサーブが上手く決まり0-2スタート。 更に更に! 希望姉がまたまた姉妹の連携をカットし神崎先輩のバックアタックが炸裂ー。 完全に流れを掴んだ我らがアルテミスが2セット目も取り連取! 勢いそのままに迎えた3セット目も、要所で希望姉が姉妹の連携を拾いブレイクに繋ぎ、終わってみれば3-0でアルテミスが勝利したー!
「いやいや。 今日は希望ちゃんと麻美ちゃんにおんぶにだっこだったよ……」
「皆も頑張って粘ってたよぅ」
「そうだぞー! ブレイクされても大きく離されずに粘ってたー!」
「にしても妹さんのアドバイスを受けた雪村さん半端ないわね。 あんなアドバイスで連携に対応出来るんだから」
「あれは希望ちゃんにしか出来ない対応のしかただよ」
「希望ちゃんは動体視力が凄いのよん。 集中すればどんな動きもコマ送りに見えるのよね?」
「ぅん。 視線の動きも見逃さないよぅ」
「本当、月ノ木の卒業生は人間離れしてるんだから……」
「なはは」
この試合の勝利でアルテミスはリーグ単独首位に立つ。 このままいけばレギュラーシーズンはトップで抜けられると思われー。 Vリーグはレギュラーシーズンとプレーオフに分かれており、プレーオフで最終的な順位が確定するのだ。 プレーオフに行く為にはレギュラーシーズンで4位以内にいれば大丈夫だー。 現状、プレーオフに行けそうなのは我々千葉西條アルテミス、大阪ホワイトフォックス、東京クリムフェニックス、福岡ブルーコンドルズだねー。 何処も当然強敵だー。
「お疲れさんやで」
「うわわっ?! びっくりした!」
「何でやねん。 にしてもウチらの連携をあんだけ拾うて、雪村さん何やの?」
「何やのと言われてもぅ」
「それを言ったら梨乃さんのサッカーもだよ。 何あれ?」
「ええやろ? ああいう際どいサーブ拾うにはあれがええんやて」
「まあ、実際奈央ちゃんのサーブや紗希ちゃんの真下打ちにも対応出来てたしね」
「やろ? もっと足技磨くで」
「いや、バレーボールの腕を磨きなさいよ……」
「お姉ちゃん……」
黛のお姉さんは一体どこへ向かっているのだろうかー?
「さて、ほんだら今日は帰るわ。 まあ、ホテルで一泊やけど」
「ほなまたな」
と、姉妹は手を振りながら会場を後にした。 出て行く時に「明日はマジカルランドやな」とか言ってたので、観光して帰るつもりなのだろー。 遠征を楽しんでいるようで何よりですー。
◆◇◆◇◆◇
というわけで、恒例の祝勝会であるー! 本日は焼肉だー!
「今日も何とか勝つ事が出来たという事で、西條の奢りで焼肉食べ放題だ! 皆、感謝するように!」
「監督いたのね」
「もう影が薄すぎてわからなかったわね」
「わし、日本代表監督もやっとるんだが……」
「まあまあ。 とりあえず始めますわよー。 それでは乾杯ー!」
「かんぱーい!」
お酒も入り盛り上がる。 ちなみに私は選手ではないけど参加しても良いのだろうかー?
「師匠ー! 早くチームに入って来て下さいよー!」
「愛弟子よー! 来シーズンまで待てー!」
「騒がしいのが増えるんはしんどいけど、藍沢妹はんか が入ったら一気に戦力アップどすな」
「来シーズンには渚も入るしー」
「今年高校を卒業する海咲さんも来ますわよー」
「どんどん凄い新人が入ってくるわね。 負けられないわ」
と、佐伯さんももうベテラン選手に分類されるぐらいになってきたし、若手には負けられないと気合いを入れている。
「レギュラーシーズンの残りの試合はどんな感じですの?」
「対戦相手も下位順位のチームが残るのみです。 決して油断は出来ませんが、このまま首位で逃げ切る事は十分可能です」
「ふむ。 私も亜美ちゃんも、出られる試合はなるべく出るようにしますわ」
「だねぇ。 遠征もするよ。 ね、奈々ちゃん?」
「そうね。 リーグ優勝には貢献したいし」
亜美姉とお姉ちゃん、西條先輩は仕事の関係で試合に出場する機会は多いようだ。 私も仕事といえば執筆作業ぐらいだから、来シーズンは結構試合に出るつもりだぞー。
「来シーズンは私達は全休かもしれないからねぇ」
「あら? 何でやの?」
「むふふ。 今、妊活中なんですよ」
「もう妊娠確認しはりましたん?」
「まだです。 来月ですねぇ」
「達って、どういう事なの? 清水さん以外も?」
「皆だよ」
「……」
亜美姉の言葉には他の皆が閉口し、しばし沈黙の時間が続く。 口を開いたのは佐伯さんであった。
「み、皆して子作りしてんの?」
「ですわね」
「どんだけ仲良しよ……」
「きゃはは。 まあ、たまたま被っただけよん」
たしかに。 亜美姉とお姉ちゃんはずっと前から決めていた事だが、その他の人はたまたまだそうだー。 前田さんは既に来シーズンの戦い方を考え始めているらしいー。 気が早いー、
「まあ、皆がおらんでもウチらだけでやれます」
「まあ、まだ確定ではないからねぇ」
とはいえ、亜美姉はかなり夕也兄ぃとお楽しみしているみたいだし、確率の方は高いだろー。 ちなみ希望姉がほぼ毎日のように私の家に泊まりに来ている。 大変だねー。
「来シーズンの事は来シーズン考えましょ。 今は今シーズンを逃げ切る事だけ集中よ」
「佐伯はんの言わはる通りや。 今は今シーズンや。 ウチらVリーグV1昇級初年度や。 ここでしっかり結果出してかんとあきまへんで」
「ですわね。 あと約2ヶ月半程ですわ。 気張っていきますわよー!」
「おー!」
アルテミスの士気は高い。 レギュラーシーズン残りは10試合程になりどのチームもラストスパート。 特にプレーオフがギリギリ狙えるチームは必死だろー。 そういうチームに足元を掬われないよう、皆には頑張ってほしいものであるー。
試合にも勝ち優勝レギュラーシーズンも残り少し。
「亜美だよ。 レギュラーシーズンの後のプレーオフかあ」
「またクリムフェニックスやホワイトフォックスと当たるかもしれないのね」




