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第2094話 見破れ

ベンチに座る麻美。 黛姉妹の連携の攻略法は見つけられるか?

 ☆麻美視点☆


 今日は西條アルテミスと大阪のホワイトフォックスの試合。 選手ではない私はなーぜーかベンチに座っている。 実は今日は前田さんの補佐としてここにいるのだ。 私の観察眼で黛姉妹の連携の穴を探すのが仕事であるー。


「黛お姉さんも希望姉も、足で拾うとは凄いー」

「希望はたまにやるけど、梨乃さんは珍しいわね」

「サッカー選手もびっくりなトラップ……あ、いや、レシーブでしたね」

「西條はんのサーブに対してあないな解答があるとは、思いもせえへんかったなぁ」

「ですね。 とはいえ、雪村さんの好レシーブのおかげでいきなりブレイクです」

「うむー。 まだ私の出番来ないー」

「まあ、最初は私達もやってる高速連携だったし」

「ですが、清水さんも蒼井さんもブロック追いつきませんでしたよ?」

「ノーサインで動くから想像よりも早いんでしょうね」


 前田さんの言う通り、あの二人をじっと見ていたけどアイコンタクトすらしている様子は無かったー。 完全にお互いの行動がわかっていて、自然な流れでプレーしているようだ。 あれの穴を探すというのは存外骨が折れそうだー。 穴を探すとかより、何かしら攻略法を探す方が良いのかもー。 私なら「ちょいさー!」で何とかするのに、アルテミスのブロッカーには「ちょいさー!」出来る人が居ないから困るー。 牧田さんをブロッカーにした方が良いのではー?


「あー、また西條はんのサーブ拾われとりますなぁ。 サッカー選手やないのにトラップ上手やねぇ」

「トラップはサッカー用語なんですが……」


 実際かなり上手くて、サーブの勢いを綺麗に殺した上で、高さ十分のレシーブにしているー。 バレーボール辞めてサッカー選手になれば良いと思われー。 とか言うと、バレーボール女子代表の戦力が大幅にダウンするのでダメー。


「むっ! 黛姉妹の連携その2「交錯連携」だー! 麻美アーイ!」


 パァンッ!


 ピッ!


「決められちゃいましたね」

「雪村はんも反応はしてはったんやけどなー」

「惜しかったっす!」

「で? 麻美は何かわかった?」

「手強いー」


 姉妹の「交錯連携」は、レシーブで上がったボールに対して二人が同時に向かっていき、交錯するような形で跳び上がって片方がトス、片方がスパイクというような動きをするのだー。 しかも、その二人の内のどちらかがスパイクを打つとは限らないので、他のアタッカーに対しても注意しなければならない。 この連携に関しても二人は完全にノーサインプレー。 二人とも全く同じ姿勢で跳び、合図を交わすでもなくスパイクとトスに分かれるのだ。 これを見破れと言われると大変だー。


「あ、麻美さん目が充血してますよ」

「集中し過ぎよ……」

「しかしまあ、ほんまに末恐ろしい姉妹やねー」


 何とかかんとか連携の穴、小さな癖や動きの違いを見つけて、攻略の糸口をー。



 ◆◇◆◇◆◇



 パァンッ!


 ピッ!


「ナイス紗希!」


 神崎先輩が決めて8-7のテクニカルタイムアウトに入る。 やはり激しい試合になっているー。 コートメンバーがゆっくりとベンチへ戻ってくるぞー。


「ふぅー。 中々に大変だよ」

「ですわねー」

「最初にブレイク取れて良かったわねー。 希望ちゃんに感謝」

「はぅ」

「ところで麻美ちゃん。 ここから見てて何かわかった?」


 スポーツドリンクを飲みながら亜美姉が訪ねてくるー。 ここまでのプレーを見ていて、黛姉妹は3つの連携を使って来ているのがわかった。 普通の高速連携、交錯連携にブロード高速連携の3つだ。


「むぅん。 私は匂いで何なく読めるようにはなってきたけど、皆は匂いわからないからねー。 どうすれば良いか悩み中ー」

「に、匂いでわかるんだ……」

「さすがだな、麻美は……」

「一応、交錯するやつは癖を見抜いたー。 スパイクする方が少し身体が開くー」

「わかるわけないって……」

「仮にわかったとしても、見てからじゃブロック間に合わねぇな」

「せめてもう少し早くわかればねぇ」

「むぅん。 そうだよねー」


 と言っても、現状それぐらいしか見破る方法は無い。 他に無い以上は、見破るのを諦めて打たれた時の対応を考えるしかないのだがー。


「もう少し時間下さいー! 見破るより対策を見つけるー!」

「わかったよ」

「頼むぜ麻美」

「はいー!」


 皆から期待されているので頑張るしかないー。

 コートメンバーはテクニカルタイムアウトを終えてコートへ戻る。 希望姉はちょうど前衛に移動なのでベンチに残っているー。


「希望姉は何か見えたりしてないー?」

「ぅーん。 麻美ちゃんが言ってたスパイクする方は身体が開くっていうのには気付いたよぅ」

「気付けるもんなのね……あんた達が怖いわ」

「でも気付いても間に合わないからね。 せめてもう少し早く見極められれば、交錯するやつは何とか出来そうだよぅ」

「普通の高速連携にはもう対応してはるもんね?」

「あれは何とか」


 希望姉もかなり凄いー。 私がコートにいれば、希望姉と連携して止めるのにー。


 パァンッ!


 ピッ!


「希望がいないと普通の高速連携も止まらないわね」

「ぅん」

「ブロックについたらほかのアタッカーにトスしよるさかいなぁ」

「後出しトスには雪村先輩しか止められない感じですね」

「ですね」

「あれが拾えるのも十分凄いわよね……」

「亜美ちゃんと奈央ちゃんがいた白山大学と対戦する時に、対応出来るように練習したんだよぅ」

「練習して出来るもんやないと思うけど……」


 と、眞鍋先輩もさすがに苦笑いん浮かべているー。 試合の方は、最初のブレイク以降はどちらもブレイク出来ていない状態だ。 黛姉妹も、希望姉がいる時は普通の連携は封印している。 通用しない事を悟ったのだろう。 私も何とか役に立たねばー。



 ◆◇◆◇◆◇



 試合は1セット目の16-15まできて、二回目のテクニカルタイムアウトに入っているー。


「何とか耐えてるけど、後一本ブレイクが欲しいねぇ」

「一本と言わず何本でも欲しいわよん」

「麻美、どうだ? 何とかなりそうかい?」

「とりあえずの応急対策として、交錯連携は姉さんに二人、妹さんに一人のブロックをつけるしかないですー」

「まあ、そうだよな。 でもそうなると他の人アタッカーが止まらないぜ?」

「希望姉がいる時は希望姉に任せるー」

「本当に応急対策だねぇ」

「それだけあの姉妹の連携が強いんですよ。 麻美さんはよく頑張ってくれてます」


 と、前田さんはちゃんと私をフォローしてくれている。 しかしまだあまり役に立っていないのも事実ー。 何とかせねば。


「もう少し時間をばー!」

「おっけ。 頼むわよ、妹さん」

「佐伯先輩も頑張ってくださいー」

「当然!」


 結局大した策も授けられないまま送り出してしまったー。 何かあるはずだー。 お互いサインは出さなくても、連携以外のどこかに染み付いた癖が! 集中して見るぞー! 絶対に黛姉妹の連携を丸裸にしてやるー!

麻美でも中々攻略法が見当たらない黛姉妹の連携。


「紗希ちゃんよ。 本当、合図も無いなんて何なのよ」

「別に双子とかでもないのに凄いよねぇ」

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