第2075話 希望はどうする?
希望が家を出るかもしれないと聞いた亜美。
☆亜美視点☆
さて。 麻美ちゃん経由ではあるが、希望ちゃんが今井家を出ようかどうか考えているらしい事を知ってしまった私。 希望ちゃんが養子として清水家に来てからというもの、本当の姉妹の様に一緒に暮らしてきたわけだけど……。
「しょぼん」
「亜美、落ち込み過ぎでしょ」
奈々ちゃんは「まだ決まったわけじゃないんでしょ?」と、一応フォローをしてくれている。
「そうだけど、でもねぇ」
「まあ、亜美には話をしておくべき事よね」
「そうだよ。 何で私には何も言わないんだろうねぇ」
まあ、今夜にでも夕ちゃんも交えて家族会議を開くよ。 希望ちゃんの今の考えも聞いておきたいしねぇ。
◆◇◆◇◆◇
というわけで、夕飯の時間だよ。
「私達、お邪魔してて良いのかしら?」
「なはは」
「家族会議やのに……」
「うめー!」
いつも通り夕飯を食べに来たお隣の藍沢家。 まあ、会議するのに邪魔という事もないから気にしないで良いと告げる。
「さて。 希望ちゃんはこの会議の議題について心当たりはあるかな?」
「はぅ? どぅして私に訊くのぅ?」
どうやら心当たりが無いらしい。
「議題はズバリ、希望ちゃんがこの家を出るのか出ないのかについてだよ」
「あ、麻美ちゃんから聞いたのぅ?」
「そうだよ。 聞いた時はショックで倒れるかと思ったよ」
「それは大袈裟過ぎるだろ……」
と、夕ちゃんはちょっと呆れたような顔を見せる。
「ま、まあ倒れるっていうのは大袈裟だったけど、ショックはショックだったよ」
「ご、ごめんなさい。 まだどうするか、結論が出てないんだよぅ」
「それでも、話ぐらいはしてほしかったよ。 姉妹なんだよ?」
「はぅ。 ごめんなさい」
と、しゅんっとなる希望ちゃん。 頭のリボンも何故か萎れている。 感情とリンクしてるのだろうか? あまり責めるのも良くないから、とりあえず希望ちゃんの今の考えを聞いてみようと思う。
「希望ちゃんの今の考えはどんな感じなの?」
「うーん。 私は亜美ちゃんと夕也くんの邪魔になってたりしないかなぁって」
「邪魔にはなってないが……」
「そうだよ。 そんな事、思った事も無いし言った事も無いよ」
「はぅ」
「希望姉、気にし過ぎー」
「そうよ。 二人があんたの事を邪魔者扱いするわけ無いでしょ」
「ぅ、ぅん」
「うめー!」
「宏ちゃんは邪魔だから帰ってていいよ」
「……」
急に静かになる宏ちゃんであった。
「希望姉としては、この家に残りたいんでしょー?」
「はぅ! 勿論だよぅ!」
「何よ。 それなら何も問題無いじゃない」
「でも、麻美ちゃんは私も一緒に暮らす前提で新居を建てたんでしょ?」
「なはは。 いつでも泊まりに来れば良いのだー」
「はぅ」
どうやら希望ちゃんは、麻美ちゃんにも気を遣っていたらしい。 なるほど、周りの人の事を人一倍気にする希望ちゃんらしい考え方だ。
「あっさり解決しましたね。 私も麻美も、雪村先輩が家に泊まりに来たりするんは大歓迎なんで、いつでも来てください」
と、渚ちゃんと麻美ちゃんはニコニコしながら頷くのであった。
結果的に、今まで通り希望ちゃんは私や夕ちゃんと一緒に暮らす事に決まった。 私も一安心である。
「ふぅ。 私の可愛い妹の希望ちゃんが、姉を捨てて家出するかと思って不安だったよ。 良かった良かった」
「亜美も大概大袈裟よね………」
「なはは! 亜美姉は希望姉に対しては凄い過保護になるー」
「それは昔からね……」
「希望ちゃんの事はお爺さんからもお願いされてるからねぇ」
「10年以上前の話だよぅ……」
「一生有効なんだよ」
「はぅ」
とりあえず緊急家族会議with藍沢家は終了。 心配していたような事にはならなくて良かった良かっただよ。
◆◇◆◇◆◇
お風呂の時間だよ。 珍しく希望ちゃんが一緒に入ろうと誘ってきたので、二人で入浴する事に。 今井家のお風呂は成人二人が入るようには設計されていない為、少々狭いのである。
「はぁ、疲れが取れるねぇ」
「年寄り臭いよぅー」
「うわわ!? 希望ちゃんにやられてしまったよ。 不覚だよ」
「はぅ……ところで亜美ちゃんは、まだお祖父ちゃんとの約束に捕らわれてたりするの?」
「んー……希望ちゃんを幸せにしてあげるっていう約束なら……うん、捕らわれてるというか、それは私の願いでもあるからねぇ」
「ふぅむ。 じゃあ夕也くん頂戴っ!」
「それとこれは話が別だよ?!」
最近大人しくしてるなぁと思ってたら、急に来るんだから……。 でも、やっぱりまだ夕ちゃんの事は狙っているんだねぇ。
「うーん……やはり愛人の座で我慢するしかないよぅ」
「希望ちゃんも結構逞しいねぇ……」
「だって、夕也くん以外に考えられないもん」
「それはわかるけどねぇ。 私は私の幸せを優先する事にしたんだよ。 他でもない希望ちゃんがそうしろって言ったんだからね?」
「はぅはぅ!」
何か怒ってるし。
「まあ、今まで通りたまのデートぐらいならOKするから」
「本当ぅ?」
「本当本当」
「じゃあクリスマスイブに夕也くん貸してくれる?」
「それとこれは話が別だよ?!」
「ダメかぁ」
「その日は私が夕ちゃんとデートするんだから、ダメに決まってるよ」
「あ、やっぱりデート行くの?」
「うん。 まあ、Wデートになるけど」
「奈々美ちゃんのとこと?」
「うん」
どうせなら賑やかにいこうという事になり、Wデートを提案したよ。 奈々ちゃんはOKしてくれたよ。 宏ちゃんの意見は無視らしい。 あの夫婦は完全にかかあ天下である。
「じゃあ、年始の休みの間に夕也くん貸してくれる?」
「まあ、それならOKだよ」
ちなみに年末は麻美ちゃんに抑えられているよ。 何でも即売会とやらに行くらしい。
「やった」
「希望ちゃんは可愛いねぇ」
「はぅ」
◆◇◆◇◆◇
お風呂から上がり自室でのんびりタイム。 心配だった希望ちゃんの事は解決したし、これで今年は憂なく終える事が出来るよ。 クリスマスイブはWデートの予定があるし、23日には「ミルフィーユ」のスタジオ完成記念配信、25日は西條家クリスマスパーティーとイベント目白押しだ。 年末年始は特に旅行等の予定は入っていない。 西條グループの企業は軒並み28日で仕事納めとなるので、私や奈央ちゃんのお仕事も一旦そこまで。 ペットショップで働く宏ちゃんと前田さんは年末年始でも通常営業となるが、営業時間は短縮となり昼過ぎまでとなるならしい。
「来年は奈央ちゃんの馬主登録もしないとだねぇ。 後は……むふふ。 夕ちゃんとの間に子供を作る事を考えなければだよ。 奈々ちゃんとも要相談だけど、来年中には出産したいねぇ」
となると、1月中にどんどんむふふしなくてはだよ。
「可憐ちゃんみたいな可愛い女の子が欲しいねぇ」
と、早くも将来の我が子に想いを馳せるのであった。
何とか今まで通りに落ち着き一安心の亜美であった。
「希望です。 私もまだまだ頑張るよぅ」
「あ、愛人ねぇ」




