第2073話 麻美は絶好調
ワイドショーでは麻美が書いた小説を原作とする映画「時を越えて」の話題になっている。
☆麻美視点☆
今日は12月17日の日曜日ー。
「アサミさん原作の映画『時を越えて』は現時点で興行収入60億円を超える大ヒットとなっています」
「いやー! 2週間でこれですか? 凄いですね」
「原作もヒットしていますし、主演女優にアイドルの姫百合凛さんを起用するなど、注目されてはいましたがこれ程のヒット映画になるとは思っていませんでしたね」
現在、お昼のワイドショーを見ている。 映画「時を越えて」が話題になっているようであるー。
「何か凄い事になってるわね、麻美」
「う、うむー。 さすがに自分でもびっくりしてるー」
「亜美が書いた小説の映画ってどうだったっけ?」
「んー。 覚えてないよそんなの」
「私のデータによると、初週が51億、二週目では合わせて92億だったようです」
と、前田さんはそんなデータまで持っていたー。 さすがデータキャラだ。
「きゃはは。 亜美ちゃんのやつ、化け物コンテンツじゃーん」
「あはは……そだねぇ」
亜美姉の書いたデビュー作品である「愛の想い出」という小説は、本の売り上げも映画の興行収入も怪物みたいな数字を叩き出している。 「時を越えて」もかなりの大ヒットだけど、亜美姉の叩き出し数字はまだまだ及ばないー。 さすが亜美姉ー。
「にしても、姫百合さんも凄いよね。 銀幕女優デビューでこれだもん」
「あー、あの人も何かそういう星の下に生まれたみたいな人ですわよね。 何をやっても成功するみたいな」
「たしかにー」
姫百合凛はデビューしてすぐに並み居る先輩アイドルを押しのけてトップアイドルに登り詰めた。 そしてその後もその座を他の人に譲る事なく、トップに君臨し続けている。 正に生ける伝説だ。 最近はブルーウイングスというアイドルユニットも人気がある。 そのユニットの子達も私達の知り合いだ。
「類は友を呼ぶってのかねー? 天才は天才を引き寄せるんだな」
「どういう事?」
蒼井先輩の言っている事がいまいちわからないお姉ちゃん。
「亜美ちゃんと奈央が引き寄せられて、そこに姫百合さんやミアみたいなのも寄って来たからな。 やっぱり引き寄せるんだ」
「まあ、たしかに周りにはそういう人間増えたわね……」
「でも、ゴリラはゴリラを引き寄せないよねぇ」
「何か言ったかしら?」
「亜美はまた余計な事言って奈々美に制裁されてるぞ」
「ま、二人の仲だから成立するやりとりだわなぁ」
宏太兄ぃの言う通り、亜美姉とお姉ちゃんの仲だから出来るやりとりであるー。
「渚と私はこんな風にはまだなれないかー?」
「まあ、無理やなぁ。 年季がちゃうわ」
「きゃはは。 私と奈央も結構長いから似たような事するけど、奈央の場合やり過ぎると社会的に消されかねないからさー」
「消さないわよ……」
「なはは。 二人も仲良しー」
ここにいるメンバーの中でも、亜美姉とお姉ちゃん、神崎先輩と西條先輩の仲の良さは別格だ。 私も渚とそれなりには仲良くなったつもりだけど、やはり年季が違うー。
「映画のヒットで原作小説の売り上げも伸びているらしいよ」
「なはは? 本当ー?」
「うん。 先週の売り上げみたら、公開日の翌日に一気に伸びてるよ」
と、亜美姉はスマホを見ている。 私もスマホで売り上げランキングを見てみると、たしかに凄く伸びているー!
「映画効果ね」
「だねぇ。 普段、本馬読まないけど映画を見て気になった人が買ってるんだと思うよ」
「なるほどー」
「麻美、亜美ちゃんに勝ってるじゃん。 きゃは」
「な、なは!」
今回の本の売り上げに関しては、たしかに亜美姉を超えているー。 そこはたしかに嬉しいし、ようやく追いついたとも思っているけど、それでも亜美姉は私の遥か先を歩く目標である。 たかだか一度亜美姉に勝てたぐらいでは、調子に乗るわけにはいかないのだ。
「まだまだー。 亜美姉は凄い人だから、これぐらいじゃまだまだ勝った事にはならないー!」
「あら。 珍しいわね」
「あはは。 亜美ちゃんに油断の二文字は無いんだよ」
「うむー! 今後も亜美姉は目指すべき目標ー!」
それは変わらないのだー。
◆◇◆◇◆◇
翌日の月曜日ー。 私に一本の電話がかかってきた。
「はいー! わかりましたー! お疲れ様でしたー!」
ピッ……
バタバタバタバタ!
「お姉ちゃん、渚ー! 出来たぞー!」
「うるさいわね……何が出来たのよ?」
「家ん中走ったらあかんやろ……」
「そんなことより、出来たんだよー!」
「だから何よ?」
「スタジオー! 『ミルフィーユ』のー!」
「お、ほんま?」
「うむ! 今さっき電話がかかってきたー! 使えるようになりましたって!」
「やったわね。 亜美にも連絡してあげましょ」
「たしかにー!」
早速亜美姉にも連絡をし、四人で「皆の家」へと向かう事に。 スタジオは「皆の家」の庭の中に建築されているー。 完全防音。 空調完備に配信設備、レコーディング設備等が揃っているー。
「到着だよ」
「本当に出来てるわね」
「早速入りましょうや」
「うむー! リーダー、鍵を開けてくだされー」
「らじゃだよ」
一応鍵を預かっているのはリーダーの亜美姉だけど、後日私達にも合鍵を用意してくれるとの事ー。 建物の中は、まずは玄関となっている。 ここで履き物を履き替えて中へー。 1階は一応休憩スペースとなっており、冷蔵庫が置かれていたりテレビなんかも置いてある。 奥には階段があり、2階に上がれるよー。
「ここが配信スタジオだねぇ。 配信機材が整ってるよ」
「凄いわね。 何よこのカメラ……」
「マイクやらも高そうやで」
「アンプも何か凄いよ」
「一応配信機材は最高品質の物を揃えたー。 パソコンも超スペックー!」
「さすが今一番熱い小説作家やね。 大盤振る舞いやな」
「なはは! 今度から『ミルフィーユ』の配信は基本的にここでやっていくー」
「そうね。 ソロ配信でも使いたいから、後でやり方教えなさいよ」
「りょーかーい!」
2階には更にレコーディングスタジオもあるー! 曲をレコーディングしてネットに上げたり、販売も出来るー。 亜美姉がサイジョーミュージックに掛け合って話はつけてくれている。 さすが仕事が早いー!
「じゃあ、次回配信の予定とかも立てないとねー」
「そだねぇ」
「私はいつでも大丈夫よ」
「私もや」
「まあ週末にするとして、23日土曜日か30日土曜日かな?」
「じゃあ、23日土曜日にスタジオ完成配信をー」
「オッケーよ」
「私もや」
「らじゃだよ」
という事で、記念すべきスタジオ完成初配信は23日土曜日に決定した。 楽しみになってきたー!
「これから『ミルフィーユ』もどんどん活躍していこー」
「おー」
映画は大成功、スタジオも完成してどんどん楽しくなってきたー。 もうすぐ新しい家も完成するし、更に楽しみだー!
スタジオも完成。 更に新居も完成間近の麻美であった。
「遥だ。 麻美は本当に多才だな」
「うん。 本当にねぇ」




