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第2049話 最終セット開始

こちらアルテミスサイド。

 ☆亜美視点☆


 4セット目をしっかり取り切り、セットカウント2ー2と追いついた私達アルテミス。 最終セットにまでもつれ込んだね。 


「さて。 皆さん最終セットまでよく持ち込みました」

「前田さんの作戦のおかげだよ。 希望ちゃんが弥生ちゃんのサーブを完璧に抑えたからねぇ」

「頑張ったよぅ!」


 希望ちゃんはかなり頑張ってサーブを拾ってくれていた。 しかし、こうなるとクリムフェニックス側でも動きが出てくるかもしれない。


「ねぇ、前田さん。 最終セットの希望ちゃんのスターティング位置変える? 弥生ちゃんも変えてきそうじゃない?」

「いえ、大丈夫です」

「だ、大丈夫?」

「はい。 月島さんのポジションは変えてきません」


 ど、何故か自信満々にそう言う前田さん。 希望ちゃんや遥ちゃんも不思議そうに前田さんを見つめている。


「月島さんの性格を考えてみてください。 自分の必殺サーブを完封されたまま黙って引き下がるような人でしょうか?」

「逃げるタイプじゃないな」

「ですわね」

「弥生は『勝負』には拘るもんね」

「バカなのよ」

「あ、あはは」


 前田さんが言うには、トーナメントではないプロの試合なら負けても終わりというわけではない為、尚更「勝負」に拘るだろうとの事。 前田さんがそう言うなら納得するよ。


「作戦は?」

「変わりません。 全力あるのみです」



 ◆◇◆◇◆◇



 セット間のインターバルを終えてコートに戻った私達は、弥生ちゃんのスタート位置を確認した。 前田さんが言った通り、弥生ちゃんの立ち位置はさっきと変わらず5番の位置である。


「本当に変わってないよ」

「前田さんのデータは凄いですわね」

「はぅ」


 とりあえずこれでやる事はわかりやすい。 さっきのセットのように戦い、流れを持ってこれば良い。 まずは浜中さんのサーブ。 ここをきっちり一本で終わらせて奈央ちゃんにサーブを回し、ネオドライブサーブでセットの主導権を握る。


「よっしゃよっしゃ。 雪村さんのスターティングはさっきと同じやな。 ウチは逃げへんで」

「私も負けないよぅ」


 弥生ちゃんは私との勝負に希望ちゃんとの勝負と忙しい人である。 ちなみにこの試合、私と弥生ちゃんの勝負に関しては互角である。 


 ピッ!


 笛が鳴り最終セットが始まる。 最終セットは15点マッチの短期戦。 早い段階で流れを掴んだ方が断然有利だ。 まずは浜中さんのサーブを拾って一本で切る。


 パァンッ!


 浜中さんはやはりフローターサーブを打ってきた。 ドライブサーブではまず希望ちゃんを攻略出来ないだろうからね。 フローターサーブなら……。


「はぅはぅっと」


 パァンッ!


 うん! 無理だね! ナックルサーブすら見切ってしまう希望ちゃんの目を持ってすれば、並のフローターサーブぐらいは訳ない。 余裕の表情でレシーブを上げ、奈央ちゃんのセットポジションに返している。

 奈央ちゃんからは新連携の合図が出ているのでどんどん使っていく。 この新連携、中々に使えるようである。 同時時間差混合型であり、どちらのタイミングの攻撃も無視できない為、ブロックの振り分けがとても難しいようである。 奈央ちゃんもトスを出すタイミングが変わり大変そうだが、それはすぐに慣れてしまうだろう。


「うぅーっ! 頭が混乱するー!」


 クリムフェニックスの白鳥さんもやはりブロックをどうすれば良いかわからない様子。 一応スプレッドシフトを敷いて1人に1人ずつブロックを付けてはくるけど、それで止まるほど私達の攻撃は甘くはない。 時間差で紗希ちゃんが真下打ちを決めて、まずは0ー1。 ローテーションして私のサーブが回ってくる。 希望ちゃんは一旦コートから出てマリエルさんが入る。 弥生ちゃんのサーブにタイミングを合わせる為、このラインナップになっている。


「さーて、どうしようかな。 天井サーブは宮下さんには返されたし、他の選手も宮下さんから攻略を聞いたみたいだし……まあ、出来るかどうかは知らないけど」


 ふむ。 浜中さんに対して天井サーブ打ってみよっと。 わかってはいても、ボールの影を見てレシーブするというのは難度が高いはず。 上手くいけばサービスエースを取れたりするかもしれない。


 ピッ!


「いくよ! てや!」


 パァンッ!


 私はアンダーサーブを高々と打ち上げる。 高さも会場の照明に当たらないギリギリな高さを狙い、最大の威力を出せるようにする。 この時点ではクリムフェニックス側も誰の頭上に落ちてくるかまだわからない為、しばらくは動きが見られない。 少ししてボールの軌道を見た浜中さんが、自分だと気付いて床を見つめ出した。


「いやいや。 本当これきつい」

「影に集中ー!」

「落ちてくる前に合図したる!」

「頼むわよ!」


 クリムフェニックスはどうやらチームプレーでこのサーブを攻略するつもりのようだ。


「怖ー」

「来るで!」

「影見て!」

「影ー……ここか!」


 手を出してレシーブの構えを作った浜中さん。 直後にボールが落ちてきて、浜中さんの腕にジャストミートした。


「むむー。 そんな攻略法があるとはだよ」

「チームワークですわね」


 とはいえレシーブ自体は乱せており、クリムフェニックスの攻撃力は落ちているはずである。 乱れたボールを追いかけているのは弥生ちゃんだが、あれをオーバーハンドトスにするのは大変だろうからアンダーハンドで前線に返すだけになりそうだ。


「ブレイクチャンスですわよ!」


 あの返しでは強力な攻撃は返って来ないと思われる。 一応宮下さんが走ってはいるけど、明らかに打ちづらそうなボールだ。


「おらー!」

「止めてやるぜ!」

「ハイ!」


 遥ちゃんとマリエルさんの2人が宮下さんのブロックへ。 宮下さんのジャンプはボールとのタイミングが合っていない感じであり、やはりスパイクしづらそうだ。


「にゃろー!」


 ぽぉん……


 これは苦し紛れのフェイントだ。 私はいち早く反応してボールに飛び込んでいき、辛うじて伸ばした腕で拾う。


「ナイスカバーですわよー! 同時でいきますわ!」


 ダイビングレシーブで私が寝転がっているため、新連携よりも同時の方が良いと判断したらしい。 マリエルさん、遥ちゃん、紗希ちゃん、奈々ちゃんが同時に走り攻撃に移る。 私は起き上がり、一応ブロックケアに入るよ。 大体は奈央ちゃんがフリーの選手にトスを出すから意味は無いんだけど。


「マリエルさん!」


 パァンッ!


 ピッ!


「よしよし! ナイスブレイク!」

「くっそー! やられてもうた!」


 最序盤でブレイクを取り0ー2とした私達。 短期戦になる5セット目としては最高に近い出だしと言える。 その後のサーブは普通のドライブサーブを浜中さんに打ってみたが、こちらはあっさり返されて1ー2でサーブがクリムフェニックスに移る。 勝負が決する最終セット。 流れを手にして勝ち切りたいところである。

最終セットも出だし好調なアルテミス。


「希望です。 月島さんのサーブは私が拾うよぅ」

「頼むよ希望ちゃん!」

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