表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
205/2194

第202話 縁結び子宝

嵐山は竹林の小径へとやって来た夕也達。

まずは?

 ☆夕也視点☆


 現在、嵐山は竹林の小径という場所に向かって歩いている。


「ゆ、夕也くん」

「ん?」


 突然希望から声を掛けられる。

 手を差し出している事から、手を繋いで欲しいという事なんだろう。

 昨日はやたら恋愛成就を祈願していたようだし、ここいらで反撃に転じるつもりなのかもしれない。

 別にそれぐらいは構わないのだが、念の為亜美を窺う。


「何で私に確認するの? 私は別に何も言わないよ?」


 という事らしいので、希望とも手を繋ぐ。


「両手に華とはまさにこの事やなぁ」


 前を歩いていた弥生ちゃんが、そんな事を言った。

 まあ男冥利に尽きるのだが、亜美はどういうスタンスなんだろうか?

 希望には渡す気は無いが、別に俺と仲良くするのを邪魔したりするわけでもなく、むしろガードは甘い。

 これじゃあ、付き合う前と大差無いような気がする。

 まぁ、以前より甘えるようにはなったけど。

 その辺どうなのか今度訊いてみてもいいかもしれない。


「ここからが竹林の小径やで」

「これが……」


 細い道が1本通っており、周りにはこれでもかという本数の竹が並んでいて壮観だ。


「竹! 竹! 竹!」

「この竹何本あるんだ?」

「さぁ? ウチもそこまでは知らんな」


 その辺はネットで調べればある程度分かりそうではあるが。

 俺達は、竹林に囲まれた道を歩き続ける。


「凄いね」

「そうだな」

「これだけ竹あったら、かぐや姫の入った竹もあるかな?」


 また、希望は変な事を言い出した。

 たまにメルヘンな発想をするから困る。

 亜美は、そんな希望に対して呆れたように言う。


「希望ちゃん、さすがにそれは無いと思うよ……」

「ええ、やっぱり珍しいのかな?」

「希望、そう言う問題じゃないわよ……」

「雪村大丈夫か?」


 奈々美はまあいいが、宏太にまで心配されるのは可哀想だな。

 希望は「良く分からない」というような顔で、終始首を傾げていた。


「しかし見渡す限り竹林ねー」

「風情ねー」


 紗希ちゃん、奈央ちゃんはこの風景を楽しんでいる。

 遥ちゃんも、写真を撮りながら歩いているようだ。

 あの子、こういう風景とか興味あるんだなー。


「こっち行ったら野宮神社(ののみやじんじゃ)があるで。 行くんやろ?」


 と、弥生ちゃんは振り返りながら訊いてくる。

 それに対して亜美は「うん」と頷く。


「縁結びと子宝だっけ?」

「縁結び!」


 希望の目がキラキラとし始める。

 紗希ちゃんも「子宝かぁ」と、呟く。

 この子の場合、すぐに子供作りそうでちょっと不安だな。


「ほな行こか」


 という事で、俺達は野宮神社という所へ向かう。

 亜美の奴も意気込んでいるから、こいつも子宝祈願とかするのかもしれない。


「野宮神社は、あの源氏物語にも出てくるんだよ」

「お、亜美ちゃんよう知っとるな」

「亜美ちゃんなら何を知ってても驚かないよ」


 希望の言う通り。

 何せ知りたがりな性格だから、知らない事をすぐに調べて自分の知識欲を満たす。

 そうこうしている内に、何でも知ってる奴みたいになってしまった。

 もちろん、まだまだ知らない事はたくさんあるのだろうが。


「着いたで」


 目の前に、件の神社が姿を現した。


「で、ここにはお亀石ってのがあるんやけど、祈願した後に触ると1年以内に願いが叶う言われとるんよ」

「ほう」

「つまり、1年以内に子供ができちゃうかもしれないって事?」


 紗希ちゃんがそんなことを口走る。

 でも、そうなってしまうな。


「さ、さすがに高校生で母親にはなりたく無いわね」

「そうね」


 言ってはみたものの、紗希ちゃんもそれは嫌らしい。

 比較的しっかり考えているのかもしれない。

 縁結びや子宝安産の他にも、色々とご利益があるらしい。

 それぞれ、自分の成就させたい願いをかける。

 俺は無難に交通安全。

 宏太、弥生ちゃん、遥ちゃんも同じようだ。

 遥ちゃんは縁結びじゃなくていいのか?


 皆が祈願を終えるのを待ち、お亀石の方へ向かう。

 名前の通り、亀っぽい形をした石だ。

 それを順番に触っていく。


「皆触った?」


 亜美の確認に、全員が頷いた。


「よし、じゃあ先に進もう」

「よっしゃ。 まだ少しだけ竹林の小径は続くで。 そこを抜けたら天龍寺や」

「またお寺?」


 と、紗希ちゃん。

 それに亜美が応える。


「うん。 世界遺産にも登録されてるんだよ。 庭園が凄く良い所なんだって」

「なんか凄そうだね」


 遥ちゃんと紗希ちゃんが「楽しみだ」と、先々行ってしまう。

 2人は普段社寺に興味も無さそうだが、今回の修学旅行を経て見方が変わったかもしれない。

 かく言う俺もその1人である。

 先程の神社からほど近い場所にそれはあった。


「ここが天龍寺北門やで」

「よし、行こー」

「あはは、紗希ちゃんテンション高いね」

「まーねー」


 まあ、普段から明るくてテンション高めではあるが。

 何というか昨日から無理矢理テンションを上げているような、そんな気がしないでもない。

 何があるのだろうか?

 弥生ちゃんと紗希ちゃんに続いて、天龍寺の北門を潜る。

 拝観料を払い、天龍寺を見学開始。

 

「ほれ、これが天龍寺が誇る庭園、曹源池庭園(そうげんちていえん)や」


 弥生ちゃんが、大きく腕を広げてそう紹介してくれる。

 周りには緑の山々が連なり、池にはその風景が綺麗に写り込んでいる。

 地面には、綺麗な波模様のような白砂が目の前に広がりこれもまた綺麗である。


「綺麗……写真撮ろ」


 亜美が見惚れてしまう程の風景。

 弥生ちゃんは、自慢するかのように胸を反らして偉そうにしている。


「今の季節やとちと遅いかもしれんけど、それでも新緑の山々は綺麗なもんやろ」

「そうね。 ちょっとナメてたわ」


 奈々美と同じで、俺もこれほどとは思わなかった。

 なるほど、世界遺産やるな。

 弥生ちゃんによると、最も見応えのある季節は秋の紅葉の季節らしい。

 スマホで撮影した秋の風景を、俺達に見せてくれた。


「秋にも来てみたいね」

「いつか来ましょうよ。 皆で」


 奈央ちゃんのその言葉に、皆が笑顔で頷く。

 

「なるほどなぁ……これが月学バレー部の強さの秘密やねんな。 この絆の力は中々厄介やで」


 と、小さな声で弥生ちゃんが呟いたのが、聞こえてきた。

 亜美はそれに対して「私達は強いよ」と、偉そうに返すのだった。


 ◆◇◆◇◆◇


 天龍寺を一通り堪能した俺達は、またまた竹林の小径へと戻り、更に進む。

 天龍寺を抜けてからは、道幅が少し広くなっているようだ。


「このまま小径を進んだ先に、大河内山荘っていう場所があるの」

「山荘?」


 希望が訊ねると、奈央ちゃんが説明をしてくれる。


「山荘庭園ってのがあって、そこをぐるっと周遊出来るのよ」

「おー! また庭園! さっきみたいに綺麗かな?」

「期待には応えられると思うでぇ」

「京都ってすげー」


 宏太が小学生の様に興奮すると、奈々美がクスクスと可愛らしく笑う。

 それにしても良い所だな。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇



 俺達は竹林の小径を抜けて、山荘庭園を周遊。

 先程の天龍寺に負けず劣らずの絶景を拝む。

 やはりと言うか、見頃は秋の紅葉らしい。

 修学旅行が秋なら良かったのだが。


 山荘庭園を出ると、次はトロッコ列車に乗るとの事。

 ここから保津峡とやらに向かう。

 

「車窓からの景色も綺麗だよ、亜美ちゃん!」

「本当だねぇ」


 亜美と希望が、外の景色を写真に撮っているのを横目に見ながら、弥生ちゃんに話しかける。


「保津峡とやらでは何するんだ?」

「ちょっと散歩やな」

「さ、散歩……」

「本番は、もう一度トロッコに乗って亀岡駅に着いてからだよ」

「本番って何よ……」

「なんか知らないけど、楽しみね!」


 まあ、亜美達が考えてくれた観光プランだ。

 ここまでも、文句無しの内容だったし、期待しても良いだろう。

本番とは一体?

「奈央ですわよー。 トロッコ列車からの景色も綺麗でしたわね。 実は、列車に乗ってる間に、この後私達もやる事になる何かが見えていましたのよ。 あ、読者さんには分からない事だったわ……」

「奈央ちゃん……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ