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第2040話 冷静に

キャミィのサーブが回ってくる。 希望に任せたいところだが。

 ☆奈央視点☆


 アルテミス対クリムフェニックスの3セット目。 中盤の14ー13の場面でサーバーはクリムフェニックスのキャミィさん。 アルテミスは後衛に希望ちゃん、私、遥の布陣。 希望ちゃんは言わずもがな、アルテミス最強のレシーバーで、私と遥もレシーブに関して十分なレベルだ。 何とかこのキャミィさんのサーブを凌ぎ、攻撃に繋ぎたいですわね。


 ピッ!


「さ、来ますわよ! ここ集中!」

「ぅん!」

「おう!」


 後衛3人は気合いを入れ直し、キャミィさんのサーブを迎え打つ。 キャミィさんは先程、ナックルサーブを見せたりもしてきたので油断出来ませんわよ。


「ほな、いくデ!」


 パァンッ!


 ナックルを警戒していた私達だけど、キャミィさんが打ってきたのは普通のドライブサーブ。 月島さんがさっき耳打ちしていたし、これは月島さんの指示だろう。 ここに来てまだナックルサーブの連発を避けて来るとは、中々に慎重ですわね。


「拾うよぅ!」


 ただのドライブサーブだけど、キャミィさんのそれは並の選手のサーブとは威力が違う。 出来る事ならレシーブのスペシャリストである、希望ちゃんに対処してほしいところ。


 パァンッ!


「やっぱり希望ちゃんが一番ですわねー!」

「はぅ……」


 希望ちゃんの安定したレシーブには惚れ惚れするわ。 私も楽で良いし。


「さて……クリムフェニックス前衛には月島さんに白鳥さん……後衛に新田さんもいる堅固な布陣……やはりここは……同時!」

「おー!」


 高速連携に限る。 これで亜美ちゃんを使えば、まず間違いなく決めてくれるでしょう。 どうやらクリムフェニックスの守備の範囲を完全に見切っちゃったみたいだし。


「亜美ちゃん!」

「らじゃだよ!」


 パァンッ!


 亜美ちゃんが打ったスパイクは、当然のように決まった。 新田さんやキャミィさんが必死に取りに行っても、あともう少し届かないという絶妙なポイント。 こんな芸当が出来るのは亜美ちゃんぐらいね。


「さ、触れない……」

「ワハハ。 アミはバケモンやデ」

「人間だよ!」


 私から見ても化け物ですわよー。 それはさておき14ー14。 何とか離されずについて行ってるわ。 出来れば逆転してテクニカルタイムアウトに入りたいんだけど……。


「亜美ちゃん、何か良いサーブは無いんですの?」


 次のサーバーである亜美ちゃんに訊ねてみる。


「え? 無いけど」

「本当に? 実は隠してる必殺サーブがあったりしませんの?」

「無いけど……」

「はぁ……」

「どうして溜め息つくかなぁ……まあ、効くかはわからないけど、天井サーブをやってみるよ……」

「お、良いですわね。 やっちゃえやっちゃえ」


 亜美ちゃんは威力のあるサーブを打つのは苦手だけど、コントロール抜群のサーブを打つ事は出来る。 天井サーブであっても、狙った場所にピンポイントで落とすわよ。


「とりあえず宮下さんの頭上を狙ってみるよ」


 との事。 たしかに宮下さんならレシーブをミスしてくれるかもしれないわ。


「いくよ! てやや!」


 パァンッ!


 亜美ちゃんのアンダーサーブから放たれたボールは、弧を描くように高々と上がり、会場の照明と重なる。 見上げてボールを見ようとすると、照明の明かりに目が眩み逆にボールを見失う。


「うきゃー! 眩しいー!」

「効いてるっぽいわよ」


 宮下さんには効果覿面みたいね。 眩しくてボールを見失っているみたいだわ。 これなら期待出来るかも。


「ぶわへっ!?」


 宮下さんは落ちて来たボールを顔面レシーブ。 そのまま屈み込んで悶えている。 あれはかなり痛いわよ……。 ちなみにボールも地面に転がっているので、亜美ちゃんのサービスエースになった。


「美智香、大丈夫かー?」

「うぅ。 は、鼻血出てない?」

「あぁ、出てへんな。 大丈夫そうか?」

「う、うむ。 大丈夫」


 宮下さんは「うう、鼻痛い」と、涙目になりながらも立ち上がる。 ついでにサーブを拾えなかった事を謝っているみたい。


「気にしない気にしない。 多分あれは私達も拾えるか怪しかったし」

「そう言うたら亜美ちゃんにはあんなサーブもあったんやった」

「あんな完璧な天井サーブ見た事ないわよ」

「アミはなんでもアリなんヤ」


 本当それですわよ。 まさか本当にサービスエース取っちゃうとは思わなかったですわよ……。 亜美ちゃんは亜美ちゃんで「あれれ? もしかして私の天井サーブ凄いのかな?」と、首を捻っている。 まあ一発ネタに近いサーブだから連発はしにくいでしょうけど。 とにかく14ー15で逆転。 このままテクニカルタイムアウトに入りたいところね。


 続く亜美ちゃんのサーブ。 ここは普通のドライブサーブを選択した亜美ちゃん。 新田さんにしっかりレシーブされた後は宮下さんに決められる。 鼻が痛いと言いながらもパフォーマンスは落ちない。 そういうところは素直に尊敬出来る。

 15ー15でサーブは白鳥さんに回る。 ここまで特に警戒するようなサーブを見せてはいない白鳥さん。 ここは落ち着いていきたいわね。 とにかくリードどテクニカルタイムアウトに入りたい。


「いきます!」


 パァンッ!


「フローターだよ」

「遥! 行ったわよ!」

「うげ。 私、フローターは苦手なんだよなぁ!」


 遥はレシーブやトスも結構上手い筈だけど、どうやらフローターサーブの対処は苦手らしいわ。


「うがぁ!」


 ピッ!


「ええっ?!」


 まさかの空振りでサービスエースを取り返されてしまった挙句、再逆転を許してしまい更にリードされてテクニカルタイムアウトに入ってしまったわ。 あー悪い流れですわよー!


「奈央ちゃん、ベンチ戻るよ」

「あ、ええ。 わかりましたわ」


 落ち着いて落ち着いて。 まだセットを取られたわけじゃなし。 冷静にならないと勝てるものも勝てなくなるわ。 司令塔たる私がシッカリしないと。

 ベンチに戻って頭を冷やしますわよ。



 ◆◇◆◇◆◇



「皆さんお疲れ様です。 リードされてのテクニカルタイムアウトは中々厳しいですね。 流れを持っていかれかねません」

「う、すまねぇ。 私が白鳥さんのサーブを拾えていれば」

「まあ、フローターサーブに関しては仕方ないよ」

「ですね。 このままズルズルと悪い流れに引っ張られないよう注意しましょう」


 前田さんはやはり冷静ですわね。 さすがですわ。


「まだ1ブレイク差です。 西條さんや藍沢さんがサービスエースを取るだけで追いつけます。 このままそこまで粘りましょう」

「そうね」

「ええ」


 とりあえずそれでいきましょう。 何とか頭も冷やせたし大丈夫だわ。 考えておかないといけないのは、あと何発ネオドライブサーブが通用するか。 連発していればさすがに対応されてくるだろうし、その辺りの見極めが重要ですわ。 シックルサーブとかの派生サーブもあるにはあるけど、それは最後の切り札で取っておきたい。 ネオドライブと奈々美のサーブで何とか逆転しないと。

悪い流れを切りたいところ。 まずは冷静に。


「遥だ。 フローターは苦手なんだよな。 だが次は拾うぜ」

「頼むよ遥ちゃん!」

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