第200話 金閣銀閣
金閣寺観光を続ける一行。
☆亜美視点☆
今日は修学旅行2日目。
京都駅で弥生ちゃんと合流した後は、金閣寺へやって来ている。
弥生ちゃんが色々案内してくれて、とても楽だよ。
今は、金閣寺の本堂である、方丈という場所を見に来ている。
ただ、今日は中には入れないらしい。
私達は、方丈をさっと見学して次の場所へ向かう。
「次は舎利殿の周りの池を回れる、庭園行こや。 ゆっくり金ピカ拝みながら歩こ」
そう言って、弥生ちゃんはズンズン先へ進んでいく。
元気だなぁ。
私達は庭園と呼ばれる場所をゆっくりと歩く。
夕ちゃんの隣を陣取り、さりげなく手を繋ぐ。
どうやら、鏡湖池をぐるりと回るコースになっているようである。
色んな角度から、金閣さんを見ることが出来そうだ。
歩いていると、弥生ちゃんが足を止めて。
「写真撮るんやったら、ここが一番やと思うで」
と言うので、私達は集合写真を撮る事にした。
近くの観光客さんにお願いして、舎利殿をバックに並ぶ。
「弥生ちゃん、何してるの? 一緒に写ろうよ」
「いやいや、ウチ他校の生徒やで?」
「関係無いわよ。 ほら」
奈々ちゃんが弥生ちゃんの手を引っ張り、私達の輪の中に入れる。
「お願いしまーす!」
◆◇◆◇◆◇
撮影を終えて、更に歩く。
「ほんまにウチが入って良かったんか?」
「もう撮ったんだから気にしないの」
「そーそー」
奈央ちゃんと紗希ちゃんに言われて、苦笑いしながら「せやな」と言う弥生ちゃん。
「写真出来たら、送るね」
「待っとるわ。 っと、ここからやったらよーみえるわ」
そう言って、舎利殿の方を指差す弥生ちゃん。
その方向を見てみると、湖面には舎利殿が逆さまに写っていた。
「逆さ金閣や」
「逆さ富士の金閣バージョンか」
夕ちゃんも、多少テンションが上がっているらしい。
皆はデジカメで、その風景を撮影している。
私もデジカメで撮影だよ。
途中、陸舟の松や夕佳亭に立ち寄り、のんびりと回った。
「まだ足を伸ばせば色々あるんやけど、時間考えたらこんなもんにしといた方がええか?」
「そうだね。 金閣寺はこの辺にして、銀閣寺に移動しよっか」
「はーい」
金ピカの金閣寺を後にして、私達は入口前でタクシーを捕まえる。
「銀閣寺までお願いします」
「今日は多いねー。 修学旅行かい?」
「はい、千葉から」
「千葉……あれ、お嬢さん何処かで……」
と、考えながらタクシーを走らせるドライバーさん。
このタクシーには、私、希望ちゃん、弥生ちゃんが乗っている。
残念ながら夕ちゃんは、別のタクシーである。
「あー! バレーボールの!」
「ははは、バレたな亜美ちゃん」
「別に隠してないけど……」
私は京都でも知られているらしい。
京都なら、弥生ちゃんの方が有名人だと思うんだけどなぁ。
「銀閣さんの後はどないするん?」
「嵐山の予定だよ?」
「嵐山かー。 あそこもええとこやからな」
と、弥生ちゃん。
今日は、どちらかというと嵐山近辺を観光するのがメイン。
昼からは嵐山観光に集中する予定である。
「野宮神社は、縁結びと子宝安産のご利益があるさかいな。 亜美ちゃんも拝んどきや」
「わ、私も拝む」
希望ちゃんてば、まだ願掛けし足りないのかな?
でも子宝かぁ。
私は男女1人ずつ産まれてくれれば良いかなぁ。
◆◇◆◇◆◇
タクシーは、銀閣寺前で停車。
痛い出費をしたが、時間には変えられない。
他のタクシー組と合流して、銀閣寺観光を開始だよ。
「銀閣寺の見所は、金閣寺でも回った庭園やな」
「また庭を歩くのか?」
宏ちゃんが訊くと、弥生ちゃんは「そやで」と軽く返事をした。
「まあまあ、百聞はなんとやらやで」
私達は、弥生ちゃんの後についていく事にする。
「月島さんって、京都の名所に詳しいけど、地元民でもやっぱり来たりするの?」
奈央ちゃんが、質問すると──。
「そやなぁ。 何回か来てるで? 京都の名所なんかウチの庭みたいなもんや」
「言ってみたいわねぇ」
「そうかー?」
ぺちゃくちゃと会話しながら歩いて行く。
「ここからやよ」
弥生ちゃんがそう言って振り向く。
「ここは西芳寺を模して作られた庭なんよ。 苔寺として有名やね」
「へぇ……え? 苔?」
奈々ちゃんが、苔と聞いて聞き返す。
「苔やで。 まあ、見たらわかるで。 あんさんら絶対感動するわ」
自信満々にそう言って、弥生ちゃんは先を歩いていく。
まず目に飛び込んで来るのは、緑一杯の木々に囲まれた周遊道。
とても綺麗な景色だ。
「綺麗だなぁ」
「うん」
夕ちゃんも同じ様に思ったらしい。
皆も、周りの風景を写真に撮っているようだ。
「これが苔か?」
「あんたはバカなの? どう見ても木と草でしょうが」
奈々ちゃんと宏ちゃんのやりとりを見て、弥生ちゃんは「仲ええなぁ」と、口走る。
「2人は熟年夫婦のみたいなものよね?」
と、紗希ちゃんがニヤニヤしながら2人をイジるも、奈々ちゃんは冷静に返す。
「まあね。 そこら辺の半端な夫婦よりは年季入ってるでしょ」
「夫婦ではないだろ?」
「はぁ……あんたは黙ってて」
「はは、ほんまに年季入っとるな」
弥生ちゃんはそう言って笑い飛ばすのだった。
そして矛先は私に向く。
「亜美ちゃんと夕ちゃんはどないなん? ん?」
「えぇ……私達は付き合い始めてまだ1ヶ月ちょっとだし」
「そうだなー。 でも、そこらの夫婦よりは仲良いんじゃね?」
「あぅ……」
「なははは! あんさんらほんまに仲ええな」
バシバシと背中を叩かれる。 痛いよ。
この子は本当に容赦ないなぁ。
などとやりながら歩いてると、幻想的な光景が目に飛び込んでくる。
「おおー」
「これが……」
庭園一面が緑の絨毯が敷き詰められたようになっている。
これらは全て苔のようだ。
「これが苔の庭園やで」
「本当に苔の絨毯じゃんー」
「こんなのは見たことないな」
「だよなー。 苔なんて、その辺の湿気の高い場所にある岩に生えてるのしか見た事ねーもんな」
夕ちゃんと宏ちゃんも、そんな風にテンションが上がっている。
この庭園は、足利義政が母親に見せるために作らせた庭園なのだそうだ。
凄い物だー。
歴史ある古都京都。 凄い所だよ。
「これは貴重な物見させていただきました」
「せやろせやろ」
私達の反応を見て、弥生ちゃんも満足そうにしている。
私達はさらに歩いて、池の周りをぐるりと回る。
途中で写真なんかも撮影して、銀閣寺をぐるりと周遊した。
観音堂周りの銀沙羅、向月台、錦鏡地なんかも一通り見れて満足満足だよ。
皆も想像以上だったのか、凄く興奮している。
「さて、どないする? 銀閣寺はこんなもんにして嵐山向かうか?」
「ちょっと待ってね」
時計を見ると時間は11時。
結構いい時間だね。 ここから嵐山までバスと電車を利用して40分から50分。
お昼ご飯は嵐山で食べれるね。
「うん。 嵐山行こう」
「嵐山ってあの大きい橋で有名なとこだよね?」
希望ちゃんがそういうと、弥生ちゃんが頷く。
「嵐山言うたら、テレビとかでもまず映るんが渡月橋やね。 でもそれだけやないんよ?」
「楽しみだな」
「そうね」
今日のメインに据えている嵐山。 楽しんでいくよぉ。
金閣寺から銀閣寺を観光して、次は嵐山。
京都を堪能しているようである。
「希望です。 京都の観光名所をあちこち走り回るね。 2日じゃ回りきれないよぅ。 嵐山では何が見れるんだろう? 楽しみだね」
「希望ちゃん覚悟しといてねー」