第2024話 化け物の巣窟
始まってしまった世紀の一戦。
☆亜美視点☆
東京クリムフェニックスとの試合が遂に始まった。 最初のクリムフェニックスのサーブで始まる攻撃を私が決めて0-1でスタート。 まだまだ試合は始まったばかりだしどうなるかはわからないけど、まずは良いスタートだ。
「かぁーっ! さすがや! さすがやで亜美ちゃん! これやこれや! たまらんな!」
「きゃはは。 弥生の奴、テンションブチアガッてるじゃん!」
「ハイになり過ぎでしょ……」
「やかましわい!」
「まあまあ。 ほらほら遥、サーブサーブ」
「おう」
ローテーションしてサーブはアルテミスの遥ちゃん。 本来ならセンターフロントスタートの遥ちゃんだが、今日は前田さんの作戦で私のスターティングポジションと入れ替えになっているよ。 このタイミングでMBが前衛に居ないというパターンになるんだけど、そこをオールラウンダーの私がカバーするよ。
「いくぞ! はっ!」
パァンッ!
「ナイサー!」
遥ちゃんのサーブは威力のあるドライブサーブ。 並みの相手なら十分サービスエースを取れるレベルのサーブだけど……。
「拾います!」
パァンッ!
「やっぱ無理だよなぁ!」
「新田さん相手じゃねぇ」
日本No.2Lの新田さんからサービスエースを取るのは至難の業である。 そして、新田さんからボールを安定供給されたボールは、Sの浜中さんがトスする事になる。
「弥生ちゃんだね! 紗希ちゃん!」
「りょ! 月ノ木のWタワー!」
「ダサいわね……」
紗希ちゃんと2人で世界一高いブロックを形成。 簡単には抜かせないよ!
「おらぁっ!」
パァンッ!
「くっ?!」
「うわわ?!」
高さで勝る私達のブロックをパワースパイクで打ち抜いてくる弥生ちゃんのスパイク。
ピッ!
「は、はぅ……凄い」
「まさか打ち抜かれるとはだよ」
「きゃはは。 さすがねー、弥生」
希望ちゃんの守備も届かないとはだよ。 さすが世界レベル!
「ふん。 どないや」
「まだまだ始まったばかりだし」
「そやな。 ここからバンバンいくで」
「私達もいるんだからね?」
「ワハハ!」
私と弥生ちゃんの勝負もだけど、他の皆もこの試合を楽しみにしていたわけだし、皆にもチャンスを上げないとねぇ。
「キャミィ、強烈なサーブ頼むで」
「サービスエース取っちゃえ」
「やってみるケド、まあムリやろナ」
次はキャミィさんのサーブのようだ。 このタイミングでクリムフェニックスの布陣は前衛に弥生ちゃんと宮下さんが揃う。 MBの白鳥さんもいて、まだ新田さんもコートに残る守備力の中々に高い布陣だ。
「イクデー!」
パァンッ!
うわわ……やっぱり凄い威力だ。 とはいえ、ワールドカップで散々見たサーブだし希望ちゃんなら。
パァンッ!
「拾ったよぅー!」
「やっぱり世界一!」
あのキャミィさんのサーブを軽く拾ってしまうんだから、希望ちゃんはやはり凄い。
「やっぱりムリやナ」
「ブロックしたらええねん!」
「月島さん、こっちよ!」
「おっしゃ!」
「奈々美! 世界一のパワー見せて差し上げなさい!」
「任せなさい!」
「次は藍沢姉かいな!」
「はぁっ!」
パァンッ!
「っ?!」
「あかんかっ?!」
ピッ!
「な、何なのよこの威力……鉄球でもぶつけられたみたいなんだけど」
「これが藍沢奈々美や」
「いやいや、あんなの止められる人いる?!」
「頑張って止めるんや。 千沙が」
「えぇ……月島先輩も頑張って下さいよ」
「もちろんや。 さ、次亜美ちゃんのサーブ来るで」
さて、次は私のサーブだよ。 まあ、私のサーブはパワーが無いから簡単に拾われるだろう。
「てやっ!」
パァンッ!
「亜美ちゃんの武器はピンポイントサーブや。 必ず何かを狙って来よるで」
「むふふ」
私の狙いはSだ。 これが結構嫌がらせになったりするんだよ。
「はいっ!」
「S狙いかいな。 しゃあないな」
そう言ってセットポジションに着いたのは弥生ちゃん。 ビンゴだよ。 あのメンバーならセカンドセッターは弥生ちゃんだと思った。 弥生ちゃんがトスを上げる事になれば攻撃力ダウンに……。
「美智香!」
「あいよ!」
パァンッ!
「きゃはは、無理だけど!」
ピッ!
うーん。 攻撃力ダウンには繋がらないかぁ。 そうだよねぇ。 宮下さんやキャミィさんがいるんだもんねぇ。
「ウチらの攻撃力は簡単には削げへんで」
「そうみたいだね」
2-2と、序盤は思った通りの展開となっている。 このレベルのチームを相手にするのだから当然ではある。 穴になりそうなのは、MBの白鳥さんとSの浜中さんぐらいだろうけど、それもレベルはかなり高い。 穴と言っても小さな小さなピンホールだ。
「強いですわね」
「だね。 次は白鳥さんのサーブか」
白鳥さんのサーブは、前田さんのデータによるとフローターサーブ。 希望ちゃんがコートから抜けている今、その対処をするのは大体私になる。
パァンッ!
来たねぇ。 フラフラと軌道の読めないサーブ。 正直言って苦手なサーブだよ。
「ここ!」
軌道を読み切りオーバーハンドでボールを迎える。
トンッ……
「上手いわよ、さすが亜美ちゃんね」
「緊張したよ」
何とか拾う事に成功して一安心だ。 奈央ちゃんにボールを送って助走の準備に入る。
「時間差!」
「らじゃだよ!」
「よし!」
「いくわよん!」
今度は時間差高速連携だ。 クリムフェニックスもこの連携には対応出来ないだろう。
「そう言うたらそないなもんあったな!」
「いやいや、無理無理!」
パァンッ!
紗希ちゃんに合わされたトスをきっちり真下打ちに決めて降りてくる。
「よしよし! どうよ!」
「やるやないか紗希!」
「きゃはは! 私だって日本代表エースを経験したのよん」
「そやな。 侮ったりはしとらへんよ」
「ローテーションよ。 次は、私ね」
「来よったで……。 皆、気ぃ付けや。 藍沢奈々美……あれは男子並みのサーブ打ちよるで」
「いやいや、やば過ぎるでしょうが。 日本代表って化け物の巣窟なわけ?」
「そうでもないと、世界一になんてなれないわよー」
「ち、違いないか……」
向こうは何か喋ってるみたいだねぇ。 奈々ちゃんのサーブは間違いなく世界最強だからね。 パワーと球速はだけど。
「いくわよ! はぁっ!」
パァンッ!
ギュイン!
「いやいやいやいや! ムリッ!」
パァンッ!
ピッ!
「何避けとるん……」
「あんなの受けたら身体吹き飛ぶわよ?!」
「吹き飛ぶわけあるかい!」
奈々ちゃんの弾丸サーブを怖がって避けたMBの白鳥さん。 まあ、初見はそうなるだろうね。 とにかくサービスエースでリードを奪えた。 まあ問題は、弥生ちゃんもビッグサーバーだという事だけどね。
化け物だらけのコート内なのであった。
「希望です。 やっぱり奈々宮下ちゃんのあれは無理だよね……」
「初見はビビって当然だよ」




