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2020/2228

第2016話 反則

2セット目は(リベロ)を変えてスタート。 が、どうも牧田のレシーブは安定感が無いようだ。

 ☆亜美視点☆


 西條アルテミスと京都ハンナリズの試合は2セット目に入った。 (リベロ)をクロエさんから牧田さんに替えての2セット目最初のプレーは姫神さんのサーブから始まり、神園さんのスパイクを牧田さんがレシーブ。 Cパスとなったが上手く和香さんがフォローしてトスを上げ、高嶺さんがブレイクを決めた。

 和香さんも色々なプレーが出来る万能タイプだねぇ。


「のわはは。 下手くそですいません」

「拾っただけよし!」

「あざすっ」


 どうやら牧田さんは自分のレシーブミスを謝っているようだ。 まあ、あれは伸び代だと思う。

 試合は姫神さんのサーブで再開。


「ふうむ。 希望ちゃん、どれぐらいの頻度で練習に参加出来るだろう?」

「基本的には週末にしか来れないでしょ?」

「うん、そうだね。 何とか牧田さんにレシーブの技術を伝授してほしいんだけど」

「亜美ちゃんが教えれば良いんじゃないですの?」

「いやいや。 (リベロ)のイロハならやっぱり希望ちゃんだよ」

「亜美ちゃんも十分技術あると思うけど……」


 専門的な事は専門家にお任せするよ。 その方が確実だからね。


「ちょえーい!」


 パァンッ!


 ピッ!


「惜しい。 神園さんに上手く守備範囲外に打たれたねぇ」

「さすが神園さんってとこかしら」


 即座に牧田さんの先読みを含めた守備範囲の限界を見極め、そこにしっかりと打ち込める技術。 彼女ももうトップ層だねぇ。 それに負けじと天堂さんもパワーのあるスパイクで応戦。 やっぱりライバルが居るっていうのは素晴らしい。 負けたくないという気持ちが成長に繋がるからね。


「天堂さんも頑張れー!」

「私も居るんだけど?!」

「わ、和香さんも頑張れー!」


 和香さんにもライバルって居たりするんだろうか? プロになってから目覚ましい成長をしているから、競う相手が居たりするのかもしれない。


「マリエルはんは安定しとるな」

「うん。 MB(ミドルブロッカー)だけど、レシーブも出来るしトスも上げられる。 彼女も優秀だねぇ」


 (リベロ)をクロエさんから牧田さんに替えた事で、レシーブの精度が少し下がりはしたが、そこを和香さんやマリエルさんが上手くカバーしている。 良いチームワークだ。


「牧田はんがレシーブミスするんはもう織り込み済みなんどすわ」

「えぇ……」


 割と以前からあんな感じらしい。 きっと何か基本的なとこを間違えているのではないだろうか?


「どわぁっ!」

「ちょやさー!」

「キエェーイ!」

「何か麻美よりうるさくない?」

「そ、そうだねぇ」


 奇声を上げながらプレーする牧田さんであった。



 ◆◇◆◇◆◇



 2セット目もセットポイントまでやってきた。 まあ、セットポイントなのはハンナリズの方なんだけど。


 パァンッ!


「あちゃー。 セット落としちゃったねぇ」

「やはり牧田はまだ安定しないかぁ。 次セットはどうするか」

「次は私達が出るし、牧田さん続行でも大丈夫ですわよ」

「あぁ、そうかぁ」

「皆さんすいません! レシーブミス多過ぎてぇ!」

「今に始まったことなあらしまへん。 ただもう少し何とかなりまへんか?」

「精進します!」


 元気とやる気は凄いんだよね。 守備範囲の広さも結構なものだし、もう少しで凄い(リベロ)になれると思うけど。


「次のセットは気にせずにプレーしてちょうだい。 私と亜美ちゃんがフォローしますわ」

「オーナー! 任せてください! やりますぞー!」

「はぁ……」

「や、やる気満々だねぇ」

「天堂さん、高嶺さんはとりあえずベンチで休んでなさい。 チョチョイとセット取ってくるわ」

「あはは。 じゃあちょっと行ってくるよ」

「おう。 最強月ノ木OGの力を見せてやれぃ」

「はーい」


 緩く返事をしてコートへ入る。 コートに入ると、ハンナリズサイドの神園さんが顔を引き攣らせながら……。


「み、皆さんが出てくるのは反則なのでは……?」


 と、少し困ったように言った。


「反則と言われても、私達も西條アルテミスのメンバーだもの。 そりゃ出てくるわよ」

「そ、そんなぁ」

「おほほ」


 奈々ちゃんの言う通り、反則と言われてもアルテミスの選手であるからには、出ろと言われたら出なければならないのである。


「ねぇ藍沢さん」

「ん?」

「何で藍沢さんがオポジットなの?」


 監督が出したラインナップシートには奈々ちゃんがオポジットの位置になるように書かれていた。 その理由は……。


「奈々ちゃんはレシーブもブロックもイマイチだからね。 攻撃に専念出来るオポジットの方が良いって事だね」

「ふふん。 ま、そゆことよ」

「何で威張ってんのよ……」


 という事で


 藍沢 マリエル 私

 佐伯  牧田 西條


 の布陣で3セット目をスタート。 ハンナリズサーブで開始だ。


 パァンッ!


「拾うっすー!」


 牧田さんがいち早く反応して動き出している。 やはり動き出しが早い。 麻美ちゃんの「嗅覚」と似たような物を持っていそうである。


 パァンッ!


「うへーっ! すいませんー!」

「大丈夫ですわよーっ!」


 牧田さんのレシーブは何故か大きくズレて飛んでいく。 さっきチラッと見えたけど、かなり腕の先の方でレシーブしていたように見える。 もしかしたらそれがレシーブの安定しない原因かも?

 さて、奈央ちゃんお得意のロケットスタートでボールを追いかけていく。


「凄っ!?」

「奈々美行くわよ!」

「はいはい!」


 奈央ちゃんがボールに追いつき、奈々ちゃんに向かってトスを上げる。 さすがに二段トスとなり奈々ちゃんには3人のブロックがついてくるが。


「はぁっ!」


 パァンッ!


「くっ?!」

「化け物っ!?」


 奈々ちゃんのスパイクは、3枚のブロックをあっさりと貫いた。


「や、やっぱり反則だ……」

「ふぅ、気持ちいいわ」


 奈々ちゃんのパワースパイクを目の当たりにしたハンナリズの皆は、あまりの威力に身を震わせている。 まあ、奈々ちゃんのスパイクってば、男子レベルになりつつあるからねぇ。 おっと、私のサーブだよ。


「よぉし。 いくよぉ! てやや!」


 パァンッ!


 私は特に何も変わった事はせずに、普通にサーブを打ったよ。


 パァンッ!


「おお、さすがに拾うよね」

「ブロックこっちデス!」


 マリエルさんに呼ばれて和香さんがブロックへ。 奈々ちゃんも一応コミットブロックに跳んでいるよ。 

 パァンッ!


 立石さんがブロックを躱してクロスにスパイクを打ってくる。 これは私の守備範囲!


「てやっ!」


 パァンッ!


「おお! すげーっす!」

「完璧なレシーブですわね。 さすが亜美ちゃん。 和香さん、いきますわよ!」

「あいよ!」


 今度は和香さんにトスが上がる。 奈々ちゃんに比べると少し劣るが、それでもアルテミスのエース。 


「はっ!」


 パァンッ!


 しっかりと決めていく。 ワールドカップでも活躍した和香さんなら、これくらいは余裕だね。


 0-2スタートだね。 神園さんは「反則……」と、虚な目で呟いていた。

亜美達がコート日本出ると、「反則だー」と文句を言われるのだった。


「遥だ。 ははは! まあ、亜美ちゃん達は日本代表の中でも最強クラスだからな」

「そ、そんなことないよ」

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