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2019/2226

第2015話 パワータイプが多い

1セット目後半に入る試合。

 ☆亜美視点☆


 千葉西條アルテミスと京都ミヤコ製薬ハンナリズのVリーグの試合は1セット目前半から後半に入るところ。 9-12と少しのリードでアルテミスが逃げる。


「思ったより引き離せませんわね」

「やっぱりハンナリズも強いねぇ」

「まあ、アルテミスのメンバーはまだワールドカップ疲れが残っとる奴もいるからなぁ」

「なるほどねぇ」


 2週間程前まではワールドカップの舞台で戦ってい他選手が、アルテミスには結構いるのである。 特に、今コートに入っている佐伯和香さん、天堂さん、マリエルさん、クロエさんなんかがそうだ。 疲れが残っている可能性はあるね。


「あ、神園さん上手くマリエルさんからブロックアウトを取ったよ」

「さすが技の神園ね」

「ゴリラの奈々ちゃんには出来ない芸当ぉぉぉ゛ぉ゛」


 余計な事を口走るとすぐに制裁されるよ。 気を付けよう。


「でも実際中々のテクニックよ。 宮下さんと比べるとまだ足りないけど」

「だねぇ。 今後の成長に期待だよ」

「ふむ。 良い試合だ。 次のセットは牧田も使いたいが」

「前田さんからそのような指示は出てないですねぇ」

「出とらんか」

「はい」

「まあ良いだろ。 監督権限で2セット目は牧田を使う」

「よぉー! やりますよぉー!」


 と、牧田さんはやる気になっているようだ。 うーん。 前田さんから1セット目のスタメン以外の指示は特に無いから、好きにして良いって事なんだろうか?


「で、3セット目は清水、藍沢、西條を投入する!」

「3セット目からね」

「まあ、それぐらいが良いですわねー」

「うんうん」


 私達は3セット目に出る予定となった。 それを聞いていた眞鍋さんは「あんさんらが出るとか、反則みたいなもんどすな」と、笑う。 そんなにかなぁ?



 ◆◇◆◇◆◇



 試合は2回目のテクニカルタイムアウトに入った。 スコアは14-16と相変わらずほぼ互角の展開。 ちょっとした流れの変化で逆転される可能性もある。


「ここまで戦ってみてどうだぁ?」

「強いです。 神園さんも、他の選手も」


 天堂さんは汗を拭いながらそう答えた。 たしかに強いねぇ。 アルテミスには日本代表メンバー2人にフランス代表メンバー2人という強力な布陣ながら、ここまで予想以上に苦戦しているようだ。


「まあ気楽に行こうよ。 リーグ戦はトーナメントと違って、負けたら終わりってわけじゃないんだし」

「そうや。 もうちょっと伸び伸びやったらええんどす」

「はい!」

「ま、こっからよこっから。 アルテミスのエース、佐伯和香の実力はこんなもんじゃないわ」

「さっさとその実力出した方が良いわよ? でないと、私が代わりコートに入るわよ?」

「藍沢さんの出番あるの?」

「3セット目に私達が出るよ」

OH(アウトサイドヒッター)は高嶺と清水、天堂と藍沢を入れ替える予定だ」

「和香さんはフル出場になるね」

「エースだし」


 和香さんは胸を反らして威張る。 実力的にはエースで間違い無いけど、さすがに奈々ちゃんと比べると1枚落ちるイメージなんだよねぇ。 奈々ちゃんは自身満々な和香さんを見ても、そんな事を言って和香さんを煽るような事はしない。


「とりあえずこのセットは何とか取ってくれぃ」

「言われなくても」

「ですね。 3セット目で下がるとわかっているならスタミナ温存はしなくて良さそうですし。 ここからはギアを上げていきますよ」

「ですな」


 テクニカルタイムアウトが終わりコートに戻っていくコートメンバー。


「天堂さんと高嶺さん、わざとペースを抑えてたんだねぇ」

「まあ、フルセット戦う可能性もあるし、スタミナ配分を考えて試合をするのはおかしな話ではないですわ」

「私はいつも大体は全力よ」

「奈々ちゃんは脳筋だからね」

「うっさい」


 さて。 テクニカルタイムアウトが明けてからは、宣言通りギアを上げた天堂さんと高嶺さん。


 パァンッ!


「おお! ナイス天堂さん!」

「良いパワーしてるわ」

「もうちょっとテクニック磨いて欲しいんだがなぁ」

「パワーで粉砕すればテクニックなんて要らないわよ」

「そんなの奈々ちゃんだけだよ……」

「ふふっ。 早くプレーしたいわ」

「もうちょっと待とうねぇ」


 奈々ちゃんのスパイクを受ける相手選手が今から可哀想だよ……。



 ◆◇◆◇◆◇



 ピーッ!


 1セット目終了。 21ー25でアルテミスが1セット目を先取。 前田さんの分析を見たところ、まあ大体こんなものだろう。 前田さん、凄いねぇ。


「ふぅ……」

「よーし、よくやったぁ。 2セット目はクロエ君に替えて牧田君を出すぞ」

「ハイ」

「やるぞぉー!」

「このテンション……麻美を見てるみたいでなんか疲れるわ……。 何とかならない?」

「あきまへんで。 牧田はんはこれが平常運転。 ウチがなんぼ言うても治りまへんのや」

「のわはは!」

「頭痛い……」


 さすがは麻美ちゃんの一番弟子。 騒がしいのもそっくりだ。 奈々ちゃんは頭を抱えているよ。


「ほれ。 2セット目始まるぞ」

「おーっす! 行ってきまっす!」

「はいはい。 ちょっとテンション落として……」

「ははは……」


 コートメンバーは牧田さんのハイテンションについていけない感じである。 とりあえずコートに戻ったコートメンバー。 (リベロ)の牧田さんはコートに入っても「やるぞぉー!」と、声を上げている。


「牧田さんは未だ未知数ですわね」

「前田さんもまだ掴み切れてない感じだよ」

「あの子の育成は麻美に任せておけば良いんですのよー」

「そだねぇ」


 牧田さんの師匠である麻美ちゃん。 麻美ちゃんの話を理解出来る牧田さん。 やはり麻美ちゃんに任せるのが最良だ。


 さて、2セット目開始だね。 牧田さんのプレーに注目だよ。


「サーブは姫神さんからだね」

「姫神さんもパワータイプよね」

「力のあるサーブを打ちますわよね」


 パァンッ!


「おお、強烈ね」


 でもやっぱり奈々ちゃんの反則級のサーブに比べると見劣りするね。


「拾われてるけど」

「やりますわね、京都ハンナリズ」

「神園さんにトスが上がって……」


 パァンッ!


「ちょいさーっす!」

「うわわ」


 動き出しがとんでもなく早い。 やはり「匂い」を感じ取り、先読みをしているのだろう。


「やっぱり麻美じゃない……」

「2人がコートに揃うと騒々しそうですわね」

「だねぇ……」


 来年にはそれが実現してしまうのか。 相手チームに迷惑かけなきゃ良いけど。


「にしても、いきなり神園さんのスパイクを完璧に上げるとは」

「ううむ。 ただなぁ」

「下手ですわね……レシーブ」

「何であれでCパスになんのよ……」


 守備はたしかに広いが、肝心のレシーブの技術がちょっと低いね。 そっちは麻美ちゃんより希望ちゃんに任せた方が良いだろう。 麻美ちゃんは(リベロ)の事は良く知らないだろうからね。

 何とかいきなりブレイクから始まった2セット目。 果たしてこの後どうなるかな?

パワータイプばかりのチーム?


「希望です。 パワータイプは奈々ちゃんがいれば良いよぅ」

「力で捻じ伏せるわよ」

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