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2018/2225

第2014話 開幕戦

Vリーグのシーズンが始まった。

 ☆亜美視点☆


 10月21日の金曜日。 私達西條アルテミスのV1の試合の開幕戦である。 相手は京都ハンナリズ。 試合会場は私達のホーム、アルテミスドームで行われるよ。


「京都ハンナリズてっ言えば、眞鍋さんの古巣だね」

「そやねー。 去年から若手のエース神園はんが入って、攻撃力の方はかなり上がっとりますなぁ」

「そっか。 神園さんがいるんだねぇ。 という事は、いきなりV1で天神対決が見られるんだね?」

「恥ずかしいのでやめてください……」


 あ、やっぱりそういうのは恥ずかしいんだ。 うんうん、わかるよわかるよ。 私も弥生ちゃんも恥ずかしかったからね。


「お前達ぃ。 ベンチでゆっくり観戦気分じゃ困るぞぉ」

「わかってますわよ」

「一応、いつでも出られるようには作っておくわよ」

「うんうん。 さて、そんな京都ハンナリズの戦力分析データを前田さんから預かってきているよ」

「あれ? ワシには来てないぞ?」

「……信用されてないのでは?」

「ま、前田君……」

「あ、あはは……こほん。 では! まず何と言っても神園さん。 デビュー2年目にしてハンナリズのエースに抜擢。 つい先日のワールドカップでも活躍したね」

「神園さんは、高いテクニックが武器のアタッカーです。 宮下先輩に近いタイプではあるんですが、あそこまで超絶技巧というわけではないので、付け入る隙はあると思います」

「さすがライバルの天堂さん。 よく知ってるねぇ。 マリエルさんも星野さんも、一応対戦経験はあるよね」

「ハイ」

「私が対戦したのは高校のインハイが最後ですので、もう別物かと」

「たしかにそうですわね」

「他にも立石さん、近藤さんっていうOH(アウトサイドヒッター)も注意だね」

「その2人の事やったら、ウチはよう知っとる。 立石はんは去年はハンナリズのエースやったサウスポー。 近藤はんはパワータイプのアタッカーや」

「うんうん。 攻撃はこの3人が中心だよ」

MB(ミドルブロッカー)の綾野はんも長身のブロッカーや」


 あれ? 眞鍋先輩さんに任せておけば全部説明してくれるのでは。 ま、まあ私も前田さんにお願いされたしちゃんとやるよ。


(セッター)は花田さん。 (セッター)ながらオールラウンダーな働きを見せる珍しい選手だよ。 最後は(リベロ)の黒澤さん。 特筆すべき点は特に無し。 ただ、レシーブはかなり上手いみたい」

「どの人も一部リーグで戦っている選手達だ。 気を抜くなぁ」

「はい!」


 うんうん。 試合が始まるよ。 スタメンは佐伯和香さん、天堂さん、高嶺さん、姫神さん、マリエルさん、クロエさんで、星野さんがクロエさんの交替要員だ。


「行ってこい!」

「はい!」



 ◆◇◆◇◆◇



 さて、試合開始。 と言っても私や奈々ちゃん、奈央ちゃんはベンチスタートだ。 一応いつでも試合に出られるように身体は温めておくよ。


「お、何や何や。 亜美ちゃんらはベンチかいな」


 ベンチに座っていると、頭上から聞き慣れた声が聞こえてきた。 眞鍋先輩はその声を聞いて目を怪しく光らせる。


「弥生はん、それにキャミィはんもおるみたいやねぇ?」

「げっ、眞鍋キャプテン……」

「ワハハ……」


 上の観客席には弥生ちゃんとキャミィさんが来ていた。 話によると、わざわざ東京から偵察に来たらしい。


「地元の京都チームを応援しなくていいんですの?」

「ウチは東京クリムフェニックスの選手やで。 自分のチーム以外は皆敵や」

「ワハハ」

「ま、好きに見ていけば良いわよ。 私達も試合に出るかもだし」

「あんさんらのプレーなんか今更見んでもええわ。 ワールドカップでチームメイトやったんやからな。 ウチらが見に来たんわ、ワールドカップにおらんかったメンバーや。 ちょうどおるやん、姫神と高嶺。 あの2人は特に要チェックなんや」

「11月1日の試合には出さんぞー」


 会話に入って来たのは小林監督である。


「そないな情報、敵チームに流してええの?」

「構わん。 1日のクリムフェニックス戦には、最強の6人を出す予定だ」

「最強の6人……だはは! さよか!」


 それだけで全てを察したようだ。 凄く嬉しそうな顔をしているよ。 そう。 1日のクリムフェニックス戦には、私達月ノ木OGの6人がスタメンで決まっているのだ。 弥生ちゃんは私達との対戦をずっと待っていたからね。 そりゃあ喜びもするだろう。


「まあ、それはそれとして、今日の偵察の目的は果たすで」

「ソヤ」

「しっかり偵察していきなはれや。 あの子らかて相当レベル高いからなぁ」

「そうさせてもらうで」


 弥生ちゃんとキャミィさんはそう言うと、観客席に着席して観戦を始めた。


「試合の方は……1-1になってるね」

「早速、天神の2人が1点ずつ取りましたねー」

「さすがね」

「世界を経験してますもの」


 力の天堂さん、技の神園さんは高校時代からずっとライバルとしてお互いに切磋琢磨してきた2人である。 私も2人の対戦には注目していた程である。


「お、和香はんもしっかりエースの仕事してはる」

「1-2だねぇ。 マリエルさんも中々ブロックに苦労してるかな?」

「マリエルはんはまだまだこないなもんやあらしまへんよ」

「お、マリエルさんのブロックが決まったよ! 1-3!」


 やはり世界レベルのブロッカーなだけある。 しっかりと修正してきたね。 その後、神園さんにまたまた決められて2-3、ブレイクされて3-3と振り出しに戻る。


「さすが一部リーグですわね。 二部リーグのように楽に勝たせてくれないですわ」

「とは言っても、戦力だけ見ればアルテミスの方が上でしょ」

「だと思うよ」


 試合が進めばジリジリと差が開き始めるとは思うけれど、神園さんはかなり頑張って食らいつくねぇ。


「立石さんに近藤さんも動きは悪くないよね」

「十分に代表クラスですわ」

「あまり気を抜いてると、あのメンバーでも危ういわね」

「うん」


 神園さんだけじゃないね、京都ハンナリズ。 毎年4位に来るだけあるチームだよ。 ここに勝てないようではリーグ優勝争いは難しいだろう。 これは良い試金石だよ。


 パァンッ!


「おお、高嶺さんも良いねぇ!」

「天堂さんと同じでパワーのあるタイプだわ」

「奈々美と同じよね」

「まあそうね」

「アルテミスはパワータイプばかりだね」

「紗希もパワーあるものね」


 わ、私がテクニックで頑張らないとダメみたいだよ。


 試合はそこから少し進み、6-8とアルテミスリードでテクニカルタイムアウトに入った。


「どうだぁ、一部リーグの試合は?」

「思ってたより大変です」

「私や眞鍋キャプテンは2年前までこの舞台で試合してたから何とも思わないけど、去年アルテミスでデビューした新人はこれが初の一部リーグだしね」

「まあ、直になれるやろ」

「うおー! 私も試合したいですー!」


 (リベロ)の牧田さんはやる気のようだけど、この先出番はあるのだろうか?

亜美達はベンチからコートメンバーを応援。


「亜美だよ。 いよいよ始まったねぇ。 弥生ちゃんや黛姉妹との対戦が楽しみだよ」

「はぅ。 その辺は本当に強いから大変そう……」

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