第2009話 マリアを呼ぼう
「皆の家」へ来た亜美だが?
☆亜美視点☆
東京組が東京へ帰って静かになった16日のお昼。 日曜日なのだけど、「皆の家」はとても静かである。 珍しく誰も居ないのだ。
「名札、全部赤い……」
ここに住んでいる前田さんは今日もお仕事。 マリアちゃんは冴木さんとお出かけしているらしい。
「みゃー……」
「なー……」
「当然誰なっと居るだろうと思って来たのだけど、まさか誰も居ないとはだよ」
いつもは大体いる奈央ちゃんや遥ちゃんも、今日は来ていない。 何とも寂しい光景である。
「奈々ちゃんと麻美ちゃんも月1の実家で団欒の日らしいし、渚ちゃんもそこにお呼ばれしてるみたいだしねぇ」
夕ちゃんはバスケチームの練習、希望ちゃんは遠足の下見と、見事に皆用事でいないのである。
「どうしようねぇ……とりあえずお家帰る?」
「みゃ」
「なー」
また明日来るとしようねぇ。 今日は家に帰ってゆっくりしようかな。 むー、こんな日もあるんだねぇ。
◆◇◆◇◆◇
帰ってきた私は、軽く掃除を済ませてゲームを始めることに。 ワールドカップ中はログイン出来なかったからね。
「あ、宮下さんいる!」
「みゃ」
「なー」
さすがである。 いやいや、主婦がこんな時間にゲームしてて大丈夫なんだろうか? しかも今朝東京に戻ったばかりなのに。
「やほほ」
「あ、亜美っちじゃんー。 こんちゃー」
「家事とか大丈夫なの?」
「帰ってきてすぐやったわ。 夕方までフリータイム。 まあ、可憐の事は見ておかないとだけど」
「まーまー」
イヤホンから可憐ちゃんの声が聞こえてくる。 はぁ、癒されるよ。
「麻美っちとか希望っちは?」
「何だか皆それぞれ用事があっていないんだよ。 あの『皆の家』が今日は無人だよ」
「そりゃ珍しいわね」
「うん。 いやいや。 宮下さんがゲームにログインしてて良かったよ」
「うわはは。 夕食の支度時間まで付き合ってさしあげよう」
「あはは。 無理せずにね」
「あーみー」
「おお! 可憐ちゃん私の声がわかるんだねぇ! あれ? イヤホンは?」
「イヤホンはしてないのよ。 可憐が怖がるから。 でも声で判別も出来るのね……やっぱり可憐頭良いかも」
「今から知育頑張った方が良いかもねぇ」
「ですな。 色々やらせてみる」
可憐ちゃんの事になると母親モードになる宮下さんなのであった。
◆◇◆◇◆◇
そのまま、夕方近くまで宮下さんと雑談しながらゲームを続けた私。 宮下さんが夕食の支度をするとの事なので私もゲームをやめて夕食の支度へ。
「ただいまだよぅ」
「あ、おかえり希望ちゃん」
「亜美ちゃんは家にいたんだね。 『皆の家』に行ってるかと思ってたよぅ」
「いやいや。 お昼に行った時は誰もいなくてねぇ……すぐ帰ってきちゃったよ」
「帰ってくるときチラッと見たら、リビングに灯りが点いてたよぅ」
「マリアちゃんかな?」
「どぅだろ?」
普段はマリアちゃんや前田さん以外の人もそれなりにやって来て賑やかお屋敷なんだけど、今日は本当に人が居なかった。 マリアちゃん1人だったら寂しがってないかなぁ?
「よし! グループチャットで点呼を取るよ」
「はぅ」
という事でグループチャットで「皆の家」に居る人の点呼を取ってみると。
「やはりマリアちゃんだけだよ!」
「前田さんも今日は同僚の人とご飯食べて帰るから遅くなるって言ってるよぅ」
「他の皆も、今から『皆の家』に行く予定の人は居ないと」
「マリアちゃん、もう夕飯の支度した? っと」
一応確認してみると「今日は1人のようなので外へ出て食べようかと」と返信が来た。 ならば!
「うちにおいでよ っと」
「呼ぶのぅ?」
「うんうん」
という事で、マリアちゃんを今井家に呼ぶ事に。 食事は賑やかな方が良いからねぇ。 お隣の藍沢家も、今日は実家で一家団欒してて遊びには来ないし。
「それではお言葉に甘えさせていただきます」
と、返信があったよ。 マリアちゃんは今から支度をして出るとの事。 夕ちゃんがちょうど駅に着いたらしいので、一緒に帰ってくるらしいよ。
「よし。 マリアちゃんの分の夕飯も支度だよ」
「やるよぅー」
マリアちゃんを招待しての夕食は楽しみである。 今日は一杯お話し出来ると良いなぁ。
◆◇◆◇◆◇
ガチャ……
「ただいま」
「おじゃまします」
「なーご」
「おお、いらっしゃいマリアちゃんにダイヤちゃん。 さすがにリク君は連れて来れなかったんだね。あ、 夕ちゃんもおかえりなさいだよ」
「リクにはしっかりエサを上げてきましたから大丈夫です。 それと今日は夕食の席に呼んでいただき、ありがとうございます」
「いやいや。 堅いよ。 もっと気楽にしていいよ」
「はい」
まあ、これがマリアちゃんの素なんだろうけど。 これでも高校時代に比べると、私への態度は随分軟化した方である。
「夕飯、もう少しだからリビングでゆっくりしててね」
「はい」
マリアちゃんは素直にリビングへ入ってソファーに座る。 あまり遠慮はしないんだね。
「じゃあ私は支度してくるよ」
「はい」
という事で、希望ちゃんを連れて台所へ。
「今日の夕飯はー♪ 肉じゃがだよー♪」
「亜美ちゃんの肉じゃがは絶品だよぅ」
もう既に調理準備は出来ている。 後はもうお鍋に具材を入れていくだけである。
「マリアちゃんともっと仲良くなりたいねぇ」
「マリアちゃん、中々デレを見せないもんね」
「うんうん」
何せ表情に出ないし、基本的には物静かであまり喋ったりもしないしねぇ。 「皆の家」で前田さんと居る時や、冴木さんと出かけたりしてる時はどうなんだろう?
◆◇◆◇◆◇
「お待たせー。 今日は肉じゃがだよ」
「お、亜美の肉じゃがか」
「清水先輩の肉じゃが、美味しいですよね」
「むふー。 私の一番の得意料理なんだよ」
「清水先輩はなんでも作れますよね」
「レシピとかは今やインターネットでいくらでも出てくるからね。 何でも作れるよ」
「マリアちゃんも料理はするんだろ?」
「はい。 前田さんがお仕事をしてらっしゃるので、基本的には私がやります。 とはいえ、大体いつもは皆さんがいらっしゃるので、私が台所に立つ頻度はそんなに高くはないですが」
おお、口数が多いよ。 マリアちゃんってこんなに喋れるんだねぇ!
「マリアちゃんも良い奥さんになれそうだが、お相手が中々見つからないか」
「そうですね」
「大学とかにも居ないのぅ?」
「今のところは居ないですね」
「マリアちゃんが好きなタイプって、春くんみたいな人?」
「北上先輩ですか? そうですね。 落ち着いた感じの人が良いですね」
「なるほどなぁ。 中々ああいう奴はいないからな」
「そだねぇ」
あんな大人びて落ち着いた人、最近では中々見られないと思われるよ。 マリアちゃんが理想の男性に出逢えるのはまだ先になりそうである。
ピロリン……
「前田さんからですね。 今日はこのまま同僚さんの家にお泊まりするそうです」
「それじゃ、今日は帰っても1人?」
「ですね」
「それじゃあ、今日はマリアちゃんも泊まりなよ」
どうせ帰っても1人だしねぇ。
「寝支度は持って来ていないのですが」
「貸すよ」
「……それではお言葉に甘えます」
やったよ! 今日はマリアちゃんが泊まりだよ。
マリアが今井家にお泊まり。
「希望です。 亜美ちゃんは強引だからなぁ」
「賑やかなのが良いよ」




