第2006話 活動再開
麻美はパソコンで何がしているようだが?
☆麻美視点☆
カタカタカタ……ターンッ!
「なはは。 活動再開のお知らせと動画投稿完了ー」
「おお」
「これで『ミルフィーユ』の活動も再開やな」
「ギターの腕、鈍ってないか確認しとかないといけないわね」
「うむー」
私、亜美姉、お姉ちゃん、渚の4人はギター四十奏「ミルフィーユ」を結成している。 イベントにも参加したし、SNSや動画でも結構人気があるのだ。 再開報告にも沢山の反応があり、演奏曲のリクエストなんかも送られてくる。
「リクエストも多いね」
「そうね。 でも亜美はオリジナルソング考えてるんでしょ?」
「もう出来てるよ」
「は?」
「もう出来てる」
と言って、亜美姉は「んしょ」とカバンから紙の束を出してきた。 多分、亜美姉が作ったというオリジナルソングの歌詞と楽譜だろう。
「はいこれ。 それぞれのパート毎の楽譜だよ」
と、私達に楽譜を配って満足そうな亜美姉。 パッと見たところ、難易度は抑えめにしてあるように見えるー。
「いつの間にこんな物を作ったのよ?」
「秘密だよ」
「清水先輩、ほんま謎過ぎる……」
「なはは。 ちょっと弾いてみるー」
マイギターを出してきて、早速楽譜を見ながら演奏してみる。 久しぶりに演奏するけど、指がしっかりとコードを覚えている。
ジャーン……
「弾けそうー! 早速練習するー」
という事で、私は座り込んで楽譜と睨めっこしながら演奏練習を再開ー。 渚も負けじと練習を始める。 うおー! どっちが先にマスター出来るか勝負ー!
「はあ。 麻美は歌の方もしっかり練習しなさいよ」
「わかってるー」
私は歌が苦手だからねー。 そっちもしっかり練習するぞー!
「ちなみにこの曲のタイトルは?」
「もちろん『ミルフィーユ』だよ」
「オリソンっぽいわね」
「早速SNSでお知らせするぞー」
カタカタカタ……ターンッ!
「投稿完了ー」
「麻美ちゃんが居て助かるよ。 私はこういうのよくわからないからねぇ」
「なははー! 宣伝広報は任せろー」
「その辺は麻美に任せといたらええな」
私は「ミルフィーユ」の宣伝部長なのだ。 動画編集や投稿もやっているのだ。 なはは!
◆◇◆◇◆◇
夕方ー。 今日は宴会は無いので、集まっている人はそんなに多くはないー。 西條先輩に北上先輩、東京組にマリアと前田さん。 後は私達だけー。 夕也兄ぃと希望姉はもうすぐ来るみたいだー。 むぅ? あれ、結構いるのでは?
「今まで人数が多すぎて、それが普通になってるからか、この人数でも少なく感じるねぇ」
「感覚が狂っとるな……」
「ワハハ」
「賑やかでス」
「東京組の私達はまだ慣れてないしね」
「可憐も楽しそうよ」
「あーい! まーまー!」
「おー、よちよち」
可憐ちゃんは、美智香姉の膝の上で抱っこされながら、楽しそうに笑っている。 いやいや、可愛いですなー。
「ほんで? オリジナルソングやっけ? 亜美ちゃん、ほんま多才やな」
「いやいや。 そんな事は無いよ、むふふ」
「亜美って、即興歌はセンス無い癖に、こういうちゃんとした曲は作れるのよね」
「にしても、いつの間にそんなものを作ったんですの?」
「それよね。 隠さず話しなさいよ」
「まあ、隠すような事でもないからねぇ。 夏の間にちょちょいって」
「ちょちょいって作ってこのレベルかいな。 ソングライターもやれるんちゃうんか?」
「まあ、やれてもやらないけどねぇ。 やるにしても『ミルフィーユ』専属だよ」
「なはは! 亜美姉が居ればオリジナルソング作り放題ー!」
「そ、そんなには作れないよ」
まあ、いくら亜美姉でもそんなにポンポンと作曲出来るわけないかー。
「うへっ。 SNSの反響凄い事になってんで麻美」
「なは? のわわ、本当だー!?」
渚に言われてSNSを開いてみると、先程投稿したオリジナルソング練習中の書き込みに対して、凄い数の反応が来ているー!
「うわわっ! うわわっ! 私の曲大丈夫かな?! こんな曲で皆の期待に応えられるかな?!」
「大丈夫やろ。 歌詞見た感じ問題あらへん。 曲は……まあ、ウチはギターコードは読まれへんから聴いてみなわからんけど」
「待っててね。 今からメロディーラインを弾いて聴かせるよ!」
亜美姉は凄い速さでギターを取りに行く。 そういえば亜美姉、古いギターを下取りして新しいギターを買ったんだっけ?
すぐに戻って来た亜美姉は、普段からは想像出来ない低音イケボで歌いながら、新しい曲の主旋律の演奏を始める。
私達はその亜美姉の美声と音色に聞き惚れる。 このバラード調のゆっくりした曲も中々良いー。
「どうかな?」
「ええやん。 ウチは好きやで」
「なはは。 私も好きな曲だー。 早く合わせられるようになりたいー」
「そうね」
「練習頑張らんとなー」
この曲を発表出来る日が楽しみだぞー。
◆◇◆◇◆◇
翌日ー。 今日は大学ー。 大会中休学していたからねー。 単位は足りてるから問題無いけどねー。 なはっ!
「渚も単位は問題無いかー?」
「大丈夫や。 まあ、ギリギリやけどな……」
「なはは。 早く卒業してVリーグに合流したいー」
「ほんまそれやな。 私もお姉ちゃんと試合したいし」
「そっかー。 月島先輩は敵チームだったー」
最近は同じチームで戦ってたから忘れてたー。 そういえばVリーグももう始まるんだねー。
「直近でアルテミスがクリムフェニックスと対戦するのはー……」
スマホを操作して試合日程を確認するとー。
「11月1日ー!」
「結構すぐやな……」
「その日には亜美姉と月島先輩の試合が見られるかもー」
「ほんまやな……何やめっちゃ見たいな!」
「うむー! この日試合見に行くぞー!」
「そやな!」
亜美姉と月島先輩は、中学時代から「月姫激突!」と銘打たれる程の注目度を誇る。 高校卒業後、プロになった月島先輩と進学した亜美姉は、長らく公式戦での対決が無かったが、遂にその日がやって来るかもしれないー! 帰ったら亜美姉に聞いてみよー!
◆◇◆◇◆◇
「11月1日だよね? 私は出る予定だよ」
「やったー!」
「遂に……遂にやな。 亜美ちゃんとの直接対決!」
「あはは。 お待たせしたねぇ」
「うわはは! 私だって負けないわよ!」
「ワハハ!」
「雪村先輩はどうなんでしょう?」
「まだ聞いてないけど……」
「そうですか」
アルテミス側のメンバーはどうなるのか、今のところまだわかっていないー。 皆が揃ったら凄い試合になるだろうなー。 早く私も混ざりたいぞー!
「大会終わった後も何だかんだ忙しいわね」
「お、何や。 奈々美っちも試合出るんか?」
「私は出来る限り試合には出るわよ。 専業主婦だし」
「おうおう。 楽しみになってきよったなぁー」
「うわはは! Vリーグの試合も楽しみね」
こうなるとバレーボール界隈は盛り上がりそうー。 ワールドカップも優勝したし、また注目されそうだぞー。 「ミルフィーユ」も波に乗りたいところだ。
オリジナルソングを引っ提げで「ミルフィーユ」活動再開。




