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第198話 疑い

一方、卓球大会中の亜美達は?

 ☆亜美視点☆


 私達B組の女子は卓球大会で盛り上がり、希望ちゃんとペアを組んで優勝した。

 そして、優勝した私と希望ちゃんでシングルス勝負をして真の優勝決定戦をする事になった。

 せっかく残り時間は、夕ちゃんと過ごそうと思ったのに。


「希望ちゃん、去年の夏休みは負けたけど、今回は勝たせてもらうよ」

「去年は、亜美ちゃんわざと負けたんでしょ?」

「ま、そうなんだけど」

「清水さん、雪村さん。 準備良い?」

「「良いよ」」

「じゃあ、清水さんのサーブから。 スタート!」


 開始の合図とともに、私はピン球をトスしてカットサーブを打つ。


「えぃっ」


 回転のかかった球を、上手く返球してくる希望ちゃん。

 しばらくラリーが続く。


「2人共、卓球部でもやってけるんじゃない?」

「2人は上げないよー。 バレー部の宝だもんねー」


 紗希ちゃんがクラスメイトと会話している。

 それを尻目にラリーを続け。


「チャンスボール!」


 ショート気味に返した球を、希望ちゃんが手を伸ばして拾ったが、少々高く浮いてしまう。

 そこを見逃さずにスマッシュ。


「むっ!」


 それを、自慢の反射神経で拾ってくる希望ちゃん。

 さすがうちのスーパーリベロ。

 卓球でも鉄壁だ。


「これならどうかなぁ!」


 もう一度スマッシュを打つ。

 希望ちゃんは相変わらずの反応速度で、ラケットに当てるも──。


「はぅ?」


 コン…コン…


 球はあらぬ方向へ飛んでいく。

 今度のスマッシュは、回転をかけたスマッシュを打った。

 だから、真っ直ぐにスマッシュをカットしても、あらぬ方向へと飛んでいったのだ。


「あ、亜美ちゃん何でも出来過ぎだよぅ」


 さすがの希望ちゃんも、半泣き状態。


「サクッと勝たせてもらうよ」

「はぅ」


 私は、様々な回転を加えて希望ちゃんを翻弄し、得点を重ねていく。

 途中から、希望ちゃんも対応してきたが点差が縮まる事は無く。


「清水さんが真のチャンピオンに決定!」

「いぇい!」

「つ、強いよぅ……」


 スコアは11ー4。 圧勝である。


「容赦無いねぇ、亜美ちゃん。 去年とは大違いじゃーん」

「あ、あはは」


 そういえば、去年私と希望ちゃんが卓球勝負した時は、紗希ちゃんも観戦してたね。

 皆で少し話をした後で、解散となった。

 時計を見ると20時40分。

 ちょっとだけなら夕ちゃんと過ごせるかも。

 そう思って、夕ちゃんのスマホに連絡を入れるも繋がらず。

 部屋に置きっ放しかな。

 うーん、探してみよう。


 旅館の中を探し回る事数分。

 有力な情報を入手した。

 どうやら奈々ちゃんと、庭に出ていくのを見かけたらしい。


「奈々ちゃんと夕ちゃんが……」


 別段不思議な事では無い。

 2人だって、産まれてから今日までをずっと一緒に過ごしてきた幼馴染だから。

 でも、宏ちゃんを置いて2人だけでとなると、少し珍しい。

 いや、全く無いというわけじゃないけど。

 などと、考えながら旅館の庭に出てみると──。


「えっ……」


 奈々ちゃんが、夕ちゃんの胸に飛び込むのが見えた。


「うわわわ……」


 どど、どうしよう。 彼女としては、やっぱり割って入るべきだよね。

 と、2人の下へ行こうとしたその時。


「えぇっ?!」


 奈々ちゃんから夕ちゃんへのキスを目撃してしまい、それ以上は近付けなくなってしまった。

 このままじゃ、戻ってくる2人と鉢合わせて気まずいので、近くの木の陰に隠れる。

 お、落ち着くのよ私。


「スー……ハー……」


 深呼吸をして冷静になる。

 そうこうしている間に、奈々ちゃんは旅館へと戻って行ってしまった。


「ど、どうしよう。 今すぐ奈々ちゃんを追いかけて……いやいや、自由行動時間がもうあまり残ってないよ。 電話……も、部屋の人に聞かれるし……」


 悩んだ結果、明日それとなく訊いてみるという事で落ち着いた。

 

 私は自分の班の部屋に戻り、布団に寝転がる。

 もやもやする。 一体どういうことなんだろう……。

 2人して浮気? いやいや、2人を信じるんだよ私。


「亜美ちゃん、難しい顔してどったの?」


 隣の布団に、大の字に寝転ぶ紗希ちゃんがそう訊いてきた。

 顔に出ていたようだ。


「何でも無いよ」

「そう? 彼氏の浮気現場でも目撃したような顔してたけど」

「どうしてそれを?!」


 あ……。


「亜美ちゃん、それ本当!? 夕也くんが浮気してたの!? 私と亜美ちゃん以外の女子にまで……」

「今井君ってそんな奴だったの?!」

「サイテー!」


 部屋内の他の女子までそんな事を言い出す。

 や、やってしまった。


「亜美ちゃん、今すぐ今井君に電話して問い詰めるのよ!」


 紗希ちゃんは、鼻息を荒くしている。

 紗希ちゃんと希望ちゃんが私に迫る。


「で、でも、浮気じゃないかもしれないし……相手は奈々ちゃんだし……」

「奈々美? じゃあ違うか」

「そだね」


 奈々ちゃんの名前を出した途端に沈静化する2人。

 何なのよ一体……。


「ちなみに、どうして浮気だなんて思ったの?」


 紗希ちゃんに訊かれて、正直に答える。


「キスしてたぁ?」

「はぅー!?」

「これは審議ですな」

「有罪!」


 また部屋の中が騒がしくなる。

 困ったなぁ……3人の中だけで話し合って終わりにするつもりだったのに、ややこしい事になってきたよ。


「よし、明日2人に問い詰めよー!」

「そーだそーだ!」


 紗希ちゃんと希望ちゃんはヒートアップしてしまって止まりそうにない。


「あ、あの、私達だけで話し合いするから、2人は──」

「よーし! 明日どうやって追い詰めていくか会議よ!」

「おー!」


 全く話を聞いてはくれなかった。

 大変な事になってしまったよー。



 ◆◇◆◇◆◇



 そして翌朝──。

 朝食の前の自由行動時間である。


「ふんすっ」

「さー、吐きなさい!」

「吐けと言われてもねぇ……何を吐けば良いのよ?」

「証拠は上がってるんだよ」


 紗希ちゃんと希望ちゃんが、奈々ちゃんと夕ちゃんに尋問を開始した。

 わ、私が夕ちゃんの彼女なんだけどぉ。


「昨夜の自由行動時間、2人が庭で浮気している現場を、亜美ちゃんが目撃してるのよ」

「……あー、あれ、見られてたのね」

「認めたよ! 今、浮気を認めました!」


 希望ちゃんが更にヒートアップして詰め寄るも、奈々ちゃんは至って冷静に対応する。


「あれを浮気だと思うなら、別にそれで良いわよ?」

「な、奈々ちゃん……」

「まあ、あの時の状況だけはちゃんと説明しとくけど」


 そう言って、自由行動開始から夕ちゃんと別れるまでの、全ての行動を私達に話してくれた。


「た、立ちくらみ? だ、大丈夫なの?」

「起立性の貧血よ。 心配無いわ」

「そ、そっか」


 まあ、その程度のお礼でキスをするかどうかは置いておいて、奈々ちゃんにも夕ちゃんにも、浮気をするつもりが無かったという事がわかって一安心。


「良かったね、亜美ちゃん」

「やっぱり聞いてみるもんねー」


 騒ぎにしたのは、紗希ちゃんと希望ちゃんの2人なのに、しれっと普段通りに戻っている。

 

「私は夕也のことは好きだけど、宏太も亜美も裏切る気はないから安心しなさい」

「う、うん」


 黙って聞いていた奈央ちゃんと遥ちゃんは「つまらん!」とか言っていたけど、私は安心した。

 それと、奈々ちゃんと夕ちゃんに謝らないといけない。


「奈々ちゃん、夕ちゃん。 ちょっとでも疑っちゃってごめんなさい」

「亜美……私も疑われるような事してごめん」

「悪かったな、亜美」

「夕也は被害者だから、謝らなくても良いのよ?」


 そんなやりとりをしていると、お寝坊さんな宏ちゃんがやって来て、不思議そうな顔で──。


「何の話してんだ?」


 それを聞いた皆は、シラを切り「別に何にも無いけど」と、口を揃えるのだった。


 さあ、スッキリした事だし、修学旅行2日目も楽しんでいこう。

夕也と奈々美の密会を目撃した亜美。

しかしそれは浮気などでは無かったらしい。


「遥だよ。 なんだいなんだいつまんないねぇ。 この際もうナニまですりゃ良かったのに」

「それはもう許すまじだよ!!」

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