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2004/2225

第2000話 終幕

ゾーンを完璧に使いこなし始めた亜美。

 ☆亜美視点☆


 ゾーン状態に入ってからそれなりに時間も経つ。 途中で天堂さんと神園さんがコートに入ってきて活躍しているようだよ。 ゾーン中にある程度集中力をコントロール出来るようになり、周りの状況を少しぐらいは把握する事が出来るようになってきた。 もちろんパフォーマンスは落としていない。 更に自分の残体力もしっかり把握出来ている。 あともう少しなら十分に足りるよ。

 現在スコアは21ー11。 優勝はほぼ決まりと言って良い。 そういえばこの試合、マリアちゃんはまだ出番が無いねぇ。 前田さんの作戦の中には入っていなかったんだろうか?


 さて試合の方はまだ遥ちゃんのサーブが続いている。 日本代表のブレイクが続いているからね。

 そろそろ集中力を高めるよ。 スイッチオォン!


 パァンッ!


 遥ちゃんが放ったサーブの音を聞きながら、視界に入るフランスサイドのメンバーの動きでサーブの軌道を予測する。 クロエさんが少し腰を下ろしたので、サーブはクロエさんが拾うのだろう。 アリスさんが早くもライト側へ移動を開始している。 遅れてジャンヌさんがレフト側へ。 2人が両サイドに分かれ、更に中央からはマリエルさんがクイックに跳ぶ。 そこには天堂さんがコミットブロックについているので任せて良いだろう。 私は……。 と、思考を巡らせていると、視界の端で麻美ちゃんが動くのが見えた。 ジャンヌさんを止めに行くようだ。 ならば私も麻美ちゃんに追従してジャンヌさんを止めに行く。

 麻美ちゃんの読みは正しく、トスはジャンヌさんに上がった。 私は麻美ちゃんとタイミングを合わせてブロックに跳ぶ。 先程、ジャンヌさんは私との勝負を諦めるような逃げのスパイクを見せたが今回は……。


 パァンッ!


 今回も私のブロックを躱して打ってきた。 意外と冷静な判断をする。 神園さんがレシーブに構えていたが、残念ながら拾えず。 ここでブレイクが途切れてしまった。 とはいえ21ー12なので慌てる事は無い。 スタミナもまだ何とか保ちそうだし。


「なははー。 亜美姉強すぎて避けられてるー」

「……」


 まあ、多分そうだろうねぇ。 



 ◆◇◆◇◆◇



 さて、あれからお互いに点を取り合いつつ、23ー14となった。 サーブはフランス代表のジャンヌさん。 試合ももう最終局面だ。 私のスタミナの方はまだ何とか残っている。 このまま最後までいけそうだ。 


「亜美ちゃん、大丈夫なのかしら?」


 と、私のスタミナが心配なのか、奈央ちゃんが1人呟く。 多分、私には聞こえてないと思っているのだろう。 省エネモード中はちゃんと聞こえているんだよ。 私は奈央ちゃんに向かって、親指と人差し指で円を作り大丈夫アピールしておく。


「き、聞こえてますのね……」


 とりあえずコクリと頷いておく。 さて、そろそろジャンヌさんのサーブが飛んで来そうなのでスイッチオォン!


 パァンッ!


 後衛には希望ちゃんと私がいる鉄壁の布陣。 アリさん1匹たりとも通さないよ。

 ジャンヌさんのサーブには希望ちゃんが反応している。 わざわざ私が拾わなくても良さそうだ。 


 パァンッ!


 希望ちゃんが完璧にレシーブを上げたのを確認し、奈央ちゃんの合図を待つ。


「時間差!」


 合図が出たので、予め決められた順番で助走に入っていく。 私はライトのバックアタックで、順番は最後だ。 ボールを目で追いつつ足は踏み切る。


「亜美ちゃん!」


 と、私の名前を呼びながらトスを送ってくる奈央ちゃん。 「制限解除」状態の私にも寸分の狂いも無くドンピシャトスを合わせてくる辺り、奈央ちゃんはやっぱり凄い。

 フランスブロックは2枚ついてきている。 やはり私が最大の脅威だと認識しているらしく、マリエルさんとエミリーさんで止めようと試みているようだ。 しかし残念な事に、2人の手の平は、私の手の平とボールから30cmは下にある。 それではブロックの意味は無いのだ。


 パァンッ!


 ピッ!


「Incroyable……(信じられない……)」


 エミリーさんのそんな声が聞こえてきた。 更に、ジャンヌさんも両手を上げて「やれやれ」と言ったようなジェスチャーを見せている。 この試合、ここで勝負ありのようである。 続く麻美ちゃんのサーブからのプレーではフランスに決められてしまったが、その次のプレー……。 マリエルさんのサーブを私が拾い奈央ちゃんへ。


 そして……


「亜美ちゃん! ウイニングショット頼みますわよ!」


 奈央ちゃんからトスが返ってくる。 私のブロックにライラさんやエミリーさんが来るが、もはや私を止めるのは不可能である。


「不可能であるっ!」


 パァンッ!


 私のスパイクがフランスコートに着弾し、25点目を取ると同時に、長かったワールドカップバレーボールの最後の試合が幕を下ろしたのだった。


「ワアアアア!」


 日本代表の応援団席から大きな歓声が上がり、日本代表ベンチからは選手達がコートへと走って来て私達を囲む。


「やったでー!」

「世界一や!」

「世界一よん!」


 それぞれが喜びを爆発させている。 天堂さん、神園さん、冴木さんなんかは泣いているようだ。


「ぐすっ! や、やりましたー」

「うわーん」

「な、泣かないのっ!」


 ワールドカップバレーボール初出場で初優勝だし、ここは泣いても良いと思う。


「亜美ちゃん。 大丈夫ですの?」

「うん。 まだ立ってられるよ」


 ゾーンを解いた私は、まだ何とか自力で立っていられるぐらいのスタミナを残している。


「とりあえず整列があるから、ベンチメンバーは戻って下さいー」


 冷静な前田さんが皆を宥めてベンチへと引き返していく。 私達コートメンバーは、ネット前に整列して、フランス代表と挨拶を交わす。


「アミ」

「ジャンヌさん?」

「ワタシのカンパイだ。 だが! ワタシはまだアキラメナイ。 ワタシはカナラズ、ニホンへいく。 またショウブしてくれるカ?」


 と、フランス語で話しかけてきた。 私は笑顔で「もちろん! 待ってるよ!」と返事をした。 ジャンヌさんは満足そうに微笑み、コートを後にするのだった。


「初めて会った時はひどい人だと思ってだけど、案外良い人みたいですわね」

「幼少期の経験の所為でスレてただけなんだよ」


 ジャンヌさんは間違いなく強くなる。 次に会った時はもっと強敵になるだろう。


 私達は応援してくれた応援団の方々にも頭を下げてお礼をして回り、手を振ってコートを出て行くのだった。



 ◆◇◆◇◆◇



 その後は各種表彰式と閉会式が行われた。 ベストアタッカー賞は宮下さん。 得点王は紗希ちゃん。 ベストサーバー賞とベストセッターには奈央ちゃん。 ベストブロッカーにはアメリカのオリヴィアさん。 ベストリベロには希望ちゃんがそれぞれ選ばれた。

 そして、今大会から作られた「世界の十傑」という部門には、私、弥生ちゃん、宮下さん、ミアさん、アンジェラさん、アリスさん、オリヴィアさん、麻美ちゃん、奈央ちゃん、希望ちゃんが選ばれた。


 こうして、ワールドカップバレーボールシドニー大会が終了したのであった。

長かったワールドカップも終了!


「希望です。 終わってみればフランス代表には3-0だよぅ」

「日本代表が反則過ぎたねぇ……」


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