表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2003/2234

第1999話 天神コンビ

終盤の場面で天堂さんと神園さんをコートに送り出す前田さん。



 ☆奈央視点☆


 亜美ちゃんがゾーンに入ってからは、フランス代表を圧倒している私達。 だけど、亜美ちゃんにばかり頼ってても面白くないので、たまには亜美ちゃん以外の人にもトスを上げますわよ。


 パァンッ!


 ピッ!


 あら、アリスさんは完全に亜美ちゃんとの勝負を捨てて遥からブロックアウトを取ったわね。 これで18ー11。 優位なのは変わらないわ。

 と、ここでまさかの選手交替。 しかも2枚替え。 奈々美を神園さんに、佐伯さんを天堂さんに替える事に。 亜美ちゃんがいれば大丈夫だとは思うけど、思い切った事するわね、前田さん。


「よ、よ、よ、よろしくお願いします!」

「落ち着きなよ天堂さん……」


 緊張している天堂さんと、思いの外落ち着きのある神園さん。 世界一決定戦の終盤にいきなりコートに入れなんて言われたら、天堂さんみたいになりそうなもんだけど。


「神園さんは肝が座ってるわね」

「京都立華では精神を鍛える時間もあったので」


 知らなかったわ。 月島さん、そんな話一回もしなかったものね。 まあ、別に知ってたからって何もないけど。


「まあ、せっかく出てきたわけだし頑張ってもらいますわよ」

「はい!」

「頑張ります!」


 神園さんはバックライトのポジションに、天堂さんはバックセンターの位置に入る。 フランスサーブはライラさんから。 天堂さん、神園さん共にレシーブは結構上手い方で頼もしい。 むしろ、麻美が狙われる方が嫌まであるけど。


 パァンッ!


「私が取ります!」


 天堂さんの真っ正面へのサーブ。 これはラッキーですわね。 私は迷わずセットポジションへ移動を開始。 天堂さんは私の期待に応えてしっかりとAパスを返してくる。 さて。 亜美ちゃんに上げればまず決めてくれるでしょう。 でも、それじゃ面白くないしここは。


「神園さん!」


 神園さんへトス。 ブロックが亜美ちゃんに集中している為、神園さんには1枚だけ。 マリエルさんじゃないし何とかなるでしょ。 ジャンヌさんが神園さんのスパイクをブロックに来ているけど。 あの身長にあのジャンプ力……かなりの圧を感じているはず。


「はっ!」


 パァンッ!


 しかし神園さんは、ベテラン顔負けの冷静さで狭いストレートを打ち抜きポイントゲット。 スコアがリードしていて、余裕があるから思い切ったプレーも出来るってものよね。


「ナイス神園さん!」

「ふふ。 まあこんなものです。 天堂さんには負けません」

「言ってくれるわね。 高校時代の大会成績じゃ私の方が勝ってるけど」

「それは月ノ木学園と京都立華の対戦成績の話でしょう? 個人の成績なら私の方が上でした」


 と、チーム内でバチバチとやり始める2人。 私達が引退した後の月ノ木学園と京都立華を引っ張っていたエース同士。 天神対決なんて呼ばれる程白熱していた2人の対戦だけど、何も今張り合わなくても良いのに。 ライバル同士ってのは顔を合わせるとどちらが上かハッキリさせたくなるものなのねー。 月島さんも今の亜美ちゃんをどう倒そうかとか考えてるみたいだし。


「はいはい。 仲良く仲良く。 2人の決着はVリーグで着けて頂戴な」

「あ、すいません」

「はい……」

「ほれほれ。 ローテだぞ」


 遥に背中を押されながら移動する神園さんと天堂さん。 次は遥のサーブね。 スコアも19ー11だしあとちょっと。 亜美ちゃんは相変わらずゾーンに没入しており、ずっと黙り込んでいる。


「よし、いくぜ!」


 パァンッ!


 遥のジャンプドライブサーブ。 たしかに強烈なサーブではあるけど、私のネオドライブや奈々美のパワーサーブの様にサービスエースを狙っていけるレベルではない。 もちろん世界レベルではの話よ。

 遥のサーブは、コートに戻って来たクロエさんに拾われている。 敵に回すと中々崩せなくてやりにくい(リベロ)だけど、大会が終われば西條アルテミスの(リベロ)としてこれ程頼もしいものがあるわ。


「なはは! 亜美姉ー、ジャンヌさんだぞー」

「……」


 まあ、多分聞こえてないけど。 放っておいても自分で勝手にジャンヌさんのブロックに向かうでしょう。 麻美の先読みも効くようになってきましたわね。


「……」


 亜美ちゃん、いつの間にか麻美の隣に移動しているわ。 本当、目にも止まらない速さね……。 私もゾーンに入れれば良いんだけど、(セッター)の私がゾーンに入ってもやれる事ってあんまないし。


「ちょいさー!」


 パァンッ!


 あ、今回は亜美ちゃんとの勝負を避けて来ましたわね。 ジャンヌさんもさすがに分が悪いとわかったみたい。 麻美も何とかワンタッチしているけど、あまり威力が減衰している感じではないわね。


「っ!」


 パァンッ!


 しかし、そんな強烈なスパイクをしっかり真っ正面で受けているの天堂さん。 ちゃんとコースを読んで位置取りしていたみたいね。


「上げました!」

「凄いじゃないですの!」


 やりますわね! さすがに決まったんじゃないかと思ったぐらいなのに。 天堂さんの事、少し侮っていたかもしれませんわ。 しかもBパスの範囲に収まってるし。


「天堂さんもかなりハイスペックですわね」


 さて、そんな天堂さんは助走の準備も出来ているみたいだし、今度は天堂さんにトスを上げちゃいましょうかね。 相変わらずブロックは亜美ちゃんに集中してる事だし。


「はい、天堂さん!」


 予定通り早いトスを天堂さんに送る。 セミ攻撃の天堂さんには、(セッター)のセリアさんがブロックに来ている。 (セッター)で天堂さんを止めようとするのは無茶じゃないかしら?


「はっ!」


 パァンッ!


 神園さんがテクニックなら天堂さんはパワータイプのアタッカー。 奈々美に師事し、かなりパワーアップしている天堂さんのスパイクは、セリアさんのブロックを容易く貫きフランスコートに突き刺さる。


「ナイスだぞ天堂さんー! なはは!」

「さすがにやりますねー。 それでこそ我がライバル」

「ふふ。 日本で再戦するのが楽しみだね」


 これで20ー11。 終わりが見えてきたわね。 残りは亜美ちゃんに任せても大丈夫そうだけど、まだこの天神コンビを使ってみたいのも事実。 あー、こんなにトスを上げるのが楽しみなチーム、他にありませんわね!


「よし! もう一本いくぞ!」

「遥ナイサー!」


 パァンッ!


 遥のサーブ。 今度はクロエさんの居ない方向を狙ったサーブ。 その位置に居るはエミリーさんかしら。 エミリーさんはジャンヌさんに比べればレシーブは上手い方。 この遥のサーブも問題無く拾っている。 エミリーさんがレシーブをすると、麻美の嗅覚が効かなくなるらしい。 マリエルさん、クロエさん、セリアさんが同時にトスを上げようとするらしく、その所為で匂いがごちゃごちゃになるらしい。 麻美は仕方なくスプレッドブロックの指示を出し、3枚のブロックは左右に大きく広がる。 結局トスはセリアさんが上げる事になったが、トスが上がったのは私の正面のアリスさん。 いや、無理。


「……」


 と、思った瞬間には隣に亜美ちゃんがやって来てブロックに跳んでいた。


「どんなスピードしてますのよ……」


 そしてそのままアリスさんをシャットアウトしてしまう始末。 今の亜美ちゃんに勝てる選手なんて、この世に存在するのかしら?


 これでスコアめ21ー11となり、ほぼ勝ちを決めたと言える。 優勝までもう一息ですわよ!

天神コンビも大活躍。


「亜美だよ。 あの2人も凄い選手なんだよ」

「私達と同期だったら面白かったのに」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ